幕間②


   ▽


 情報というのは時に便利で、物事を動かすために重要な手がかりとなってくるものだ。だけど、それは時に扱い辛く、むしろ足枷あしかせとなってしまうものでもある。

 そして、手に入れた情報は時に「事実」であり、「真実」でないことが多い。誰かから得た情報は、その人の主観によって歪曲わいきょくされたものである。あの人の言葉を借りるのなら、「偽物」なのだ。


 人は「事実」を伝える。だけど、それは誇張こちょうされたり表現を変えることによって、「真実」ではなくなる。

 時に事実すらじ曲げられてしまうこの世界で、私は何を伝えようとしているのか。結局のところ、「事実」は存在しても、「真実」なんてものは存在しなくて、それを伝えることはできないのだろうか。

 そして……、私の知っている三年前の事件は、「真実」ではないのだろうか。


 三年前のあの事件について、私は多くを知らない。当事者ではなかったからだ。

 だから、調べた。自分のできる範囲内で、この情報収集欲が満たされるまで。

 それでも分からなかった。何が「事実」で、何が「真実」なのか。そしてそれを伝えようとしても、自身の解釈によってねじれてしまう。


 だから、私は全てを確かめるために行動を起こした。

 もう一度、あの人へと接触をはかった。それは無意味なようで、全く意味がないことではない。これも、「真実」を知るための一つの手がかりだ。

 私は、そこにある「真実」を知りたい。誰かの主観によってじ曲げられた「真実」らしきものなんていらない。


 だから私はできる限り、当事者へと近づく。当事者に近づくことで、できる限りまっさらな状態に近い「真実」を手に入れたい。

 それが私の考える「真実」の手に入れ方だ。そしてその「真実」は何をもたらし、何を変え得るのか。そこまではまだ分からない。だけど、何かが変わるきっかけにはなるはずだ。


 そして、何かが変わることで、物語の道筋は変わっていくのか。それを見届けたい。私は、誰かの物語を見届けたい。それが私の歩む道なのだと信じて。

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