幕間①
▽
どうしてこんなことをしてしまったのだろうと思っている。
意味なんてほとんどない。あの予告状を置くのに、密室である必要なんてなかった。ここまでする必要もなかったのだ。そしてあの人は、そのことに既に気付いているはずだ。
でも不思議と後悔はなかった。私の中で実に三年間、
あの時、あの人は何を考えていたのか。そして今、あの人は何を考えているのか。私が投げかけた謎に対してどのようなアプローチを見せるかで、明らかになることが少しでもあるかもしれない。
そして、あの事件をきっかけに何が変わって、何が変わらなかったのか。それももしかしたら見えてくるのかもしれない。
あの事件の見方は人によって様々だ。それでもあの事件が、あの事件に関わった人達に対して何らかの強い影響を与えていったことは疑いようのない事実だ。
私もその一員だ。当時の自分はまだ年齢的にも幼かったが、その時何を考え、何を思ったのかを覚えている。
少なくとも、あの人がやったことは間違ってなんかない。私はそのように思っている。結果としてもたらしてしまったことは残念なことだけれど、あの人が起こした行動自体が間違っていたとは思わない。
あの人は優しすぎるんだ、周りに。
だけど、それをあの人の本質だと捉えない人もいる。
その優しさは偽物だと言う人もいる。
でも、私は思う。偽物の優しさでもいいじゃないか、と。それでちゃんと救われている人がいるなら、ちゃんと何かの役に立っているなら。偽物でも、……嘘でも構わないんじゃないかと。
だからこそ、証明するしかないと思った。
これをきっかけに。たった一枚の予告状をきっかけに。
それが何をもたらしてしまうのかは分からないけど……、でもそれを全て背負っていくつもりはある。
だから……、答えてほしい。私の問いに。私が三年間問い続けたことに。
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