【六章前半までのあらすじと登場人物】

 *ここまでのストーリーのネタバレが多く含まれています。直前話までご高覧いただいたのちに、閲覧することをおすすめいたします。



 ルダの公女アイリスの要請を受け、ブレイヴはついにイレスダートへと帰還する。

 イレスダート最北西に位置するルダは、一年でもっとも冬の長い厳しい気候の国であり魔道士たちが国を守っていた。

 病弱な公爵に代わりアイリスの弟アロイスが軍を率いる立場にあるものの、戦況は極めて不利な状況にあった。ルダにはイレスダート王妃マリアベルと生まれてまもないバルト王子が身を寄せていたが、白の王宮はふたりを引き渡すようルダに勧告したことがはじまりという。つまりルダはブレイヴの祖国アストレア同様に、元老院に猜疑を掛けられているのだ。


 マイアの騎士団を率いているのはオルグレム将軍。老将軍として名の馳せた騎士は王妃マリアベルの伯父である。話の通じる相手だとしても、忠義に厚い騎士に王命に背くという選択はない。ルダとともに戦うブレイヴは戦場でオルグレムと相対するものの、やはり言葉は届かなかった。そのはず、ブレイヴは聖騎士でありながらも王家に刃を向ける叛逆者と見做されているからだ。


 オルグレムとの最後の戦いがはじまるまさにそのとき、とある要人が駆けつける。ルダの公子に守られながら現れたマリアベルは、両者に戦闘を辞めるように訴えたのだった。

 かくして剣を収めたブレイヴとオルグレムは、この一件がやはり王命であったことを確認し合う。国王アナクレオンの真意がわからずに苦悩するブレイヴを、オルグレムは騎士らしい言葉で諫める。それでもブレイヴは北の敵国ルドラスと戦うための戦力として、アストレアやルダを欲したアナクレオンを信じられずにいた。


 オルグレム将軍の騎士団を味方に付けたブレイヴは、軍師セルジュとこれからを考えていた。当面の問題は軍事資金と物資の確保だが、これからの戦いに備えるためにはとても足りない。そんなブレイヴたちに王妃マリアベルは自らの耳飾りを差し出す。紫水晶アメジストの耳飾りは国宝とも呼べる王家の装飾品であり、これを受け取ることが何を意味するかブレイヴはわかっていた。

 マリアベルの覚悟とともに受け取ったブレイヴは、王都マイアへの道を進めようとする。しかしこれはまだ、イレスダートの内乱のはじまりのひとつに過ぎなかった。


 ルダより南東に位置するムスタール公国では、公爵ヘルムートのもとにオルグレム将軍の裏切りの報が届けられていた。

 王命に従い、ルダと聖騎士討伐へと着々と準備を進めるヘルムートに女騎士ルーファスが接触する。かつて王女レオナの傍付きだったルーファスは、アナクレオンの真意や聖騎士の真実を訴えるものの、ヘルムートは耳を貸さない。教会に軟禁されたあと、公爵の妻コンスタンツに保護されていたルーファスだったが、これを裏切りと見做され捕らえられてしまう。


 ブレイヴはムスタールとの戦いに備えて仲間たちと話し合う。

 ムスタールを南下すれば祖国アストレアは目と鼻の先、しかしブレイヴはアストレア奪還を二の次とし、とある奇策を講じる。ルダの魔道士たち、オルグレム将軍と軍師セルジュ、そして援軍として駆けつけたグランの竜騎士セシリア。それぞれの力を借りて応戦しつつも混戦となり、敵味方ともにバラバラになってしまう。


 バルト王子の傍付きとして後衛部隊を守っていたアロイスは山毛欅ブナの森である要人と接触する。

 ほとんど瀕死の状態のその騎士こそ、ムスタール公爵ヘルムートであった。危険を残さずに騎士を殺そうとするフレイアをアロイスは止め、騎士を助けるために姉であるアイリオーネを頼る。善意と道義心から騎士を救ったアロイスだったが、その騎士の正体を知らないままであった。


 麾下きかや仲間たちと合流すべく森を進んでいたブレイヴは、ふたたび敵襲に遭う。ブレイヴを捕縛したのは氷狼騎士団。率いているのはかつて士官生時代に学び合った友、ロベルト・ベルクだった。

 おなじ頃、胸騒ぎを覚えたレオナはブレイヴの騎士ノエルとともに軍を抜け出していた。ルダの公女を偽りベルク将軍と相対するものの、聖騎士を返すどころか反対に聖騎士の首があればこの戦いが終わると諫言かんげんする。


 ロベルトと対話を望むブレイヴ。そのとき氷狼騎士団の砦が何者かに攻撃される。魔力によって放たれた炎が建物を燃やし尽くそうとするなか、レオナはこれを止め、ブレイヴは逃げた者たちを追い掛ける。追いついたその先で、ブレイヴは信じられないものを目にする。竜人ドラグナーたちと行動していたのは魔女イシュタリカ。容貌は異なれどブレイヴはその人を知っていた。幼なじみの姉ソニアはやはり生きていたのだ。


 氷狼騎士団に到着していたオルグレムは、ロベルトにある提案をする。

 火災による被害の負担を引き受ける代わりにこの砦を使わせてほしい。これによって氷狼騎士団は同盟軍となり、ブレイヴの元に新たな戦力が集いつつあった。






【登場人物紹介】



ブレイヴ


 21歳。ブレイヴ・ロイ・アストレア。主人公。イレスダートの聖騎士。イレスダートを追われたあと、西の大国ラ・ガーディアや山岳地帯のグラン王国の要人たちと誼を結んだ後、イレスダートへと帰還。




レオナ


 19歳。レオナ・エル・マイア。ヒロイン。ブレイヴの幼なじみ。イレスダートの王女。上の兄妹二人とは母親がちがう側室の子だが、竜人ドラグナーの力を持つ。




ディアス


 22歳。ディアス・ブラッド・ランツェス。ブレイヴとレオナの幼なじみ。赤い悪魔の異名は士官生時代に付けられた渾名。




アナクレオン


 30歳。アナクレオン・ギル・マイア。イレスダートの王。レオナの異母兄。




ソニア


 22歳。ソニア・リル・マイア。イレスダートの王女。レオナの異母姉。八年前にガレリアとルドラスのあいだにて消息を絶っているが……?






セルジュ


 28歳。ブレイヴの軍師。




アステア


 16歳。魔道士の少年。セルジュの弟。




レナード


 18歳。アストレアの騎士。




ノエル


 18歳。アストレアの弓騎士。




ルテキア


 20歳。アストレアの騎士。レオナの傍付き。





シャルロット 


 14歳。オリシス公爵の養女。




デューイ


 22歳。自由都市サリタで出会った青年。旅の案内役を務めた。




クライド


 21歳。異国の剣士。砂漠の国ユングナハル出身だが、各地を放浪している途中でブレイヴと出会い、その後も同行を続ける。




フレイア


 18歳。フォルネの王女。同行する理由はブレイヴの借金の取り立て。




クリス


 23歳。白皙の聖職者。フレイアの従者。






フランツ


 27歳。白騎士団の団長。ブレイヴとおなじく聖騎士。王の盾として王都マイアから離れられない。




ロベルト


 21歳。氷狼騎士団を率いる将軍。ブレイヴとは士官学校で同室だった。






ヘルムート


 33歳。ムスタール公爵。黒騎士ヘルムートの異名を持つ。




コンスタンツ


 24歳。ムスタール公爵の妻。




ルーファス


 24歳。レオナの傍付きとして付き従っていたが、王命に寄りムスタールに残る。その後、教会に軟禁状態のところをコンスタンツに救われる。






アイリス


 19歳。ルダの公女。アイリオーネの妹。




アロイス


 15歳。ルダの公子。アイリオーネとアイリスの弟。




マリアベル


 24歳。イレスダートの王妃。身重の状態でイレスダートの北部ルダへと預けられる。




バルト


 アナクレオンとマリアベルの息子。イレスダートの王子。産まれて半年くらいのやや子。




オルグレム


 62歳。王命によりルダ侵攻を任された老将軍。マリアベルの伯父。



アイリオーネ


 22歳。レオンハルトの妻。ルダの公女。





セシリア


 21歳。グランルーザの王女でレオンハルトの妹。









ホルスト


 27歳。ランツェスの公子。ディアスの異母兄。




エセルバート


 年齢不詳。ガレリア侵攻の際にルドラスを指揮していた聖職者。ランツェスを監視している。


 


オスカー


 25歳。ディアスの麾下。ランツェスの名門パウエル家の跡取り。





テレーゼ


 20歳。アルウェンの妻。




ロア


 18歳。アルウェンの妹。オリシス騎士団を引き継いだ。







ユノ・ジュール


 白の司祭。竜人ドラグナー




イシュタリカ


 女神の名を持つ魔女。ユノ・ジュールと行動を共にしている。


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