【三章までのあらすじと登場人物】

 白の王宮及び元老院に追われることになったブレイヴとレオナは、アストレアの隣国にあるオリシス公国に身を寄せる。


 オリシス公爵アルウェンはブレイヴの尊敬する騎士であるとともに、歳の離れた兄のような存在でもあった。

 またアルウェンはイレスダート国王アナクレオンとは旧知の仲であるものの、過去に起こった内乱により戦えない身体となり、オリシス騎士団から一線を退くとともに王都マイアから遠い存在となっていた。


 騎士として戦う意味、主君に捧げる剣の意味を悩むブレイヴに、アルウェンはやさしくも厳しく諭す。同時に王も自分たちとおなじ人間であり過ちを犯すこともある。そのとき、友として臣下としてアナクレオンを止められるのは自分たちである、と。


 一方のレオナは、アルウェンの妻テレーゼと友誼ゆうぎを結ぶ。

 アルウェンとテレーゼには妹のロアと養女シャルロットがいる。ロアはオリシス公女でありながら、兄から騎士団を受け継いでいた。大人しい気質のシャルロットだが、レオナが拾った瑪瑙オパールの首飾りをきっかけに、少女とも仲良くなる。


 ブレイヴが独断で離れた城塞都市ガレリアには、ランツェス公子ホルストが聖騎士の後任を務めていた。

 ホルストはブレイヴとレオナの幼なじみであるディアスの異母兄だが、その正確にはやや難のある騎士だった。


 ランツェスでは残されたふたりの兄妹が別れの日を迎えていた。

 ディアスの妹ウルスラは、王命に従いガレリアに行った兄ホルストを案じ、また次兄であるディアスも心配していた。ディアスはアナクレオンに呼ばれて王都マイアに向かう。それが兄妹の長い別れとなることを知らずに。


 初夏にオリシスにたどり着いたブレイヴたちだが、季節は本格的に夏へと向かっていた。アルウェンはアナクレオンに手紙を送っていたが、何の返事もままだった。

 アナクレオンの真意をたしかめるべく、王都マイアへ向かうと決めたアルウェン。妹のロアはもとより、ブレイヴらとともにオリシスに留まっていた異国の剣士クライドもアルウェンを案じる。


 ところが、出立の前夜アルウェンは暗殺されてしまう。

 アルウェンを手に掛けたのは強大な魔力を宿した白の少年。人間とは異なる存在の前に、ブレイヴらは何も手出しすることもできず、アルウェンの死を見届けないままオリシス脱出を余儀なくされる。


 オリシス公国をさらに南下したその先は自由都市サリタ。

 イレスダートの国外まで逃亡したブレイヴたちは一時的に身を潜めることにする。アルウェンの暗殺を目撃した中に、彼の養女であるシャルロットも含まれていた。


 養父の死にショックを受けたシャルロットは熱を出してしまう。

 自由都市を謳うサリタだが余所者には厳しく真面な医者も望めないため、修道院を頼ることにする。その道中、レオナは孤児の少年ルロイと赤髪の青年デューイと出会う。


 デューイを真似て掏摸すりを繰り返すルロイには弟のキリルがいた。

 キリルは病気で弱視が進み、弟の病を治すためにルロイは盗みをしていたことを知ったレオナは子どもたちのために母の指環を売ろうとする。


 ところが、薬屋で偶然出会った魔道士の少年に薬を分けてもらうことになる。

 彼の名はアステア。アストレアの魔道士で、出奔した兄を探している途中であった。


 サリタで身動きの取れないブレイヴに悲報がつづく。

 城塞都市ガレリアで上官だったランドルフが左遷され、このサリタに来ているというのだ。


 オリシス公爵暗殺の虚偽まで掛けられたブレイヴは、マイアの騎士団に追い詰められる。

 しんがりを努めていた麾下きかジークが囮となり、ブレイヴたちはサリタの貧困窟まで逃げる。しかしお尋ね者になった聖騎士の首を狙って、ここでは住民たちがブレイヴに襲い掛かる。絶体絶命の危機に駆けつけたのは、もうひとりの幼なじみであるディアスだった。


 ディアスとアステアと合流したブレイヴだが、修道院にレオナの姿はなかった。

 聖騎士捜索のため、修道院に押しかけた騎士たちから子どもたちを守ってレオナは自ら王女を名乗り、ランドルフの元へと出向いたのだった。


 レオナ救出に動き出すディアスとデューイ。

 無事にブレイヴとレオナが再会できたのも束の間、マイアの騎士団らに皆は取り押さえられてしまう。


 正式な軍法会議を待たずとして聖騎士を処刑しようとするランドルフ。

 そのとき、サリタの住民たちが動き出した。もともと余所者を快く思わないサリタの住民はイレスダートにサリタが支配されるのを許さずに、蜂起ほうきしたのだ。


 その混乱に乗じてレオナを救おうとしたルロイだったが、ランドルフに殺されてしまう。


 そして、降り注ぐのは白い光。

 レオナの竜の力が覚醒したことにより、危機を脱したブレイヴだったがこれでますますイレスダートには戻れなくなった。


 活路を切り開くため、ひいてはイレスダートに帰還し祖国アストレアを取り戻すために、ブレイヴは山岳地帯にあるグラン王国を目指す。

 グラン王国にはかつて父の友人だった賢王がおり、彼の知恵を頼ることにしたのだ。


 案内役のデューイ、ディアスやアステアを迎えて、西のラ・ガーディアを目指すブレイヴ。

 オリシス公女のシャルロットをサリタに残そうとしたレオナだったが、強いショックにより声を失った少女を置いてはいけなかった。


 その頃、イレスダートではムスタール公爵ヘルムートの元にも訃報が届けられていた。

 アルウェンの死に衝撃を受けるとともに、それに聖騎士が関わっていることを訝しむヘルムート。イレスダートでは王女レオナの失踪に加えて、聖騎士ブレイヴに関する衆口しゅうこうが広まっていた。


 国王アナクレオンに会って話をすることを望むヘルムートは、王都マイアに向かう。ヘルムートの妻コンスタンツは大聖堂にて、かつてレオナの傍付きだった騎士ルーファスを保護していたが、ヘルムートはアナクレオンの意思を知るルーファスと擦れちがってしまう。


 そして、王都マイアでは談話室サロンで密談をつづけていた元老院らは、アナクレオンの怒りを目の当たりにするのだった。








【登場人物紹介】


ブレイヴ

 ブレイヴ・ロイ・アストレア。主人公。イレスダートの聖騎士。ルドラスの騎士ランスロットとの密会後、元老院に猜疑を掛けられてアストレアを追われる。


レオナ

 レオナ・エル・マイア。ヒロイン。ブレイヴの幼なじみ。イレスダートの王女。上の兄妹二人とは母親がちがう側室の子。マイア王家の子は竜の血と力を受け継いでいる。


ディアス

 ディアス・ブラッド・ランツェス。ブレイヴとレオナの幼なじみ。赤い悪魔の異名は士官生時代に付けられた渾名。


アナクレオン

 アナクレオン・ギル・マイア。イレスダートの王。レオナの異母兄。


ソニア

 ソニア・リル・マイア。イレスダートの王女。レオナの異母姉。八年前にガレリアとルドラスのあいだにて消息を絶っている。




ジーク

 アストレアの騎士。ブレイヴの麾下きかでアストレアのカラスの異名を持つ。


レナード

 アストレアの騎士。


ノエル

 アストレアの弓騎士。


ルテキア

 アストレアの騎士。レオナの傍付き。


アステア

 アストレアの魔道士。出奔した兄を探している。



アルウェン

 オリシス公爵。過去に戦場で負った傷が元で戦えなくなってしまった騎士。アストレアを追われたブレイヴとレオナを保護する。


テレーゼ

 アルウェンの妻。夫婦は政略結婚だが仲が良い。


ロア

 アルウェンの妹。成人後はオリシス騎士団をアルウェンから引き継ぐことになっている。


シャルロット

 アルウェンの養女。





ヘルムート

 ムスタール公爵。黒騎士ヘルムートの異名を持つ。


ルーファス

 レオナの傍付きとして付き従っていたが、王命に寄りムスタールに残ることに。


シスター

 ヴァルハルワ教会の修道女。ルーファスに近付く。



ランドルフ

 城塞都市ガレリアにてブレイヴの上官だった騎士。王命により、自由都市サリタの攻略を任される。ブレイヴとの確執はつづいている。


ホルスト

 ランツェスの公子。ディアスの異母兄。


ウルスラ

 ランツェスの公女。ディアスの妹。




クライド

 異国の剣士。しばらくオリシスに身を寄せていたが、その後はブレイヴたちと行動を共にする。


デューイ

 サリタの孤児院に出入りしている青年。



ルロイ

 サリタの孤児院の子ども。弟のために盗みを繰り返している。


キリル

 ルロイの弟。病気でよく熱を出したり、目を患っている。




 

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