22
「はぁ? しばらく部活が休み?」
ゴールデンウィーク四日目の火曜日。
図書部が活動休止のことを美波に蒼空が伝えると、完全に呆れられた。今日も美波と一緒に商店街まで遊びに出ていた蒼空は、クレープを口に頬張っていた。
「なにやってんのあんたたち」
「色々あるんだよー、そんなにいじめないでー」
もしゃもしゃとクレープを食べながら蒼空は頭を抱える。
「いじめてないから。ただ単純にバカじゃないのと思っただけ」
「それ十分ひどいよ」
毒舌家の親友に苦笑しながらも蒼空はおいしいクレープにご満悦だった。
美波も買ったばかりのクレープを一口食べる。
「ん、確かにおいしいわね。あんたの趣味にしては」
「でしょー? こないだ図書部の先輩たちに連れてきてもらったんだ。美波にも食べてもらいたくって」
「……最近あんた、ことあるごとに図書部図書部って、そんなに楽しいの?」
「楽しい!」
蒼空ははにかみながら答える。
「はい美波ここで一枚」
蒼空はポーチからカメラを取り出してシャッターを押す。
再び親友は呆れたように頭を抱える。
そして代わりに蒼空からカメラを受け取り、美波は逆に蒼空を撮り返した。
「まあ、あんたがいいならいいけどね。口にクリーム付いてるわよ。いいのいただきました」
「ええ!? うわべとべとする!」
ティッシュを取り出して顔を拭う蒼空を、また美波はカメラで撮る。
「はいかわいいかわいい。今あんた一番輝いてるわよー」
「すっごい棒読みだよ! このドS!」
嫌がる蒼空を、美波はいつまでもカメラで撮り続けていた。
「うぅ……私のカメラが私の変な写真で埋め尽くされてる……」
「いいじゃん。自分のカメラって自分が写らないから悲しいもんでしょ」
「だからってこんな写真で埋め尽くされるのは嫌だよぉ」
でも、蒼空は基本的に写真を消去しない。
一度撮ったその写真はそのときだけのものなのだ。
一瞬一瞬が、たとえピンがぼけた写真だろうが、何を撮っているかわからない写真だろうが、大切に保存すると決めている。
蒼空が写真を流して涙目になっている間に、美波は視線を雲行きが怪しくなってきた空を見上げた。
「こりゃあ今日は一雨来るわね」
美波の言葉に肯定するように、ぽつりと蒼空のカメラのモニターに一滴が落ちた。
ぽつぽつと雨が振り初め、徐々に強くなっていく。
「傘持ってきてる?」
「ないよー、雨降るなんて思わなかったもん」
元々この地域一帯は雨が少ないのだ。雨の予報でも平気で外れる。
「本降りになる前に私は帰るわ。蒼空はどうするの?」
美波が手で頭を庇いながら尋ねると、あっと蒼空が声を上げた。
「私は、ちょっと寄りたいところが」
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