16

「今度は私が鬼だーーっ!」

 蜘蛛の子を散らすようにわーっと逃げていく子どもを蒼空が追いかけ始める。

 アザレアの広場から暴力団の連中がいなくなり、遊び場を取り戻した子どもたちは楽しげに広場を走り回っていた。

 カレンはこれまで能力を使ってきた人をまとめるために少し時間をということだったので、その間誠護たちは広場の方に出て待っている

 外から来る人間が珍しいのか、子どもたちはこぞって誠護たちの方に駆け寄ってきた。男の子たちは暴力団の連中を追い払ってくれた誠護のところにやってきて、女の子たちは綺麗な容姿の汐織に興味津々だった。

 そして、蒼空は高一であるにも関わらず低い身長と幼げな表情が親近感を覚えられたのか、少年少女問わず囲まれていた。

 気づけば子どもたちを先導して遊びに遊んでいる。

「蒼空ちゃん、子ども好きなんだねー」

「そうみたいだな。すっごい懐かれてる」

 両手を振り上げながら子どもたちを追いかけ回す蒼空を、誠護と汐織は脇にあったベンチに並んで腰を下ろし微笑ましく眺めていた。 

「ねぇ、誠護君」

「なに?」

 汐織は何といおうか言葉を探すように視線を泳がせる。

「さっき、さ……」

 一度は口にした言葉も夜の帳が降り始めている空に消えていった。

「わかってるよ。それに関しても大体わかってる」

「……気づいていたの?」

「確証があったわけではないけれど、ある程度は」

「なぁーんだ。悩んで損した」

 汐織はがっかりしたようなすっきりとしたような様子で足を投げ出した。

「それにしても困った。これからどうする?」

「とりあえずは意識不明の人間巡りかなー。放置しとくわけにもいかないから、私たちが見ていくしかないでしょ」

「そうだよな。じゃあ今度は蒼空も連れて……」

 不意にズボンのポケットに入れていたスマホが電子音を鳴らした。

 立ち上がりながら取り出し、表示されている名前を見た誠護は、深々と嘆息を漏らした。

 横からのぞき込んできた汐織があーと苦笑している。

「こんなときに面倒だけど、丁度良いといえば丁度良い、な」

 通話のマークをタッチしながら誠護はスマホを耳に当てた。

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