ラウンド35

 アンジェは、満足していなかった。

 確かに、ゆみはインターミドルの時よりも、アリーナで対戦した時よりも強くなっている。強くはなっているが、自分に勝てる程強くは、ない。現に一ラウンド目は、アンジェが圧勝に近い形で勝利した。

(結局、この程度なの?)

 アンジェは、唇を噛んだ。

 憧れの、目標にしている髙野あきの娘が、この程度の実力ということを認めたくない。自分と、互角に戦える存在であってほしかった。

 第二ラウンドが始まると、アンジェはダッシュC攻撃で一気に勝負を仕掛けようとした。

 ダッシュを入力しようとした瞬間、手が止まった。

 何か、嫌な予感がした。ダッシュCを使ってはいけないと、思った。アンジェは直感に従い、まずはバックステップで距離をとる。

 予感は、的中した。

 ヴァルミリアが、低空ダッシュレバー前Cで攻めてきた。

 今まで対応型の立ち回りをしていたゆみが、攻撃的な立ち回りにシフトし、アンジェに襲いかかってくる。

 ヴァルミリアの空中レバー前C攻撃は、リーチが長い。だが、バックステップしたゆいかにはギリギリ攻撃が当たらなかった。

 両者、ほぼ互角の状況になる。

 先に動いたのは、ゆみのヴァルミリアだった。微ダッシュ立ちB、しゃがみCと繋いでいき、リベレイションを発動させる。

 リベレイションの効果で行動速度が上昇したヴァルミリアは、次々と攻撃を繰り出し、ゆいかを固めていく。

 立ちC。

 アンタレス設置。

 シリウスからアンタレスへ接続。

 スピカで低軌道に移動、移動中にゆみはBボタンを押す。スピカで移動中に攻撃をするとジャンプ攻撃扱いになり、強力な崩しの手段となる。

 アンジェはスピカ中のB攻撃を喰らってしまい、ヴァルミリアから手痛いコンボを貰ってしまった。

 コンボを喰らい、ダウンしたゆいかに、ヴァルミリアは起き攻めを仕掛けていく。

 攻める。

 攻める。

 攻める。

 とにかく、攻める。

 ゆみは、まるで人が変わったようにガンガン攻めてくる。

 アンジェが、徐々に追い詰められていく。

(面白い……面白いじゃないの、ゆみ!)

 追い詰められているにも関わらず、アンジェは歓喜の笑みを浮かべていた。

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