ラウンド33

 ついに、この時がやってきた。

 内山アンジェリーヌとの、対戦の日が。

 ゆみは、この日の為にたくさんの人たちから力を貰った。

 遥之。

 華澄。

 愛衣。

 nao/。

 ゲーセンで対戦してくれた、たくさんのプレイヤーたち。

 今こそ、受け取った力を全力でぶつける時。

 ゆみはそう考えていた。

「まもなくDブロック三回戦、大将戦を開始します。選手の方は準備をお願いします」

 大会スタッフのアナウンスが、ゆみの耳に音として入っていく。

 覚悟は、できている。ゆみは筐体に向かう為、歩み始めようと足を踏み出したその時だった。 誰かが、ゆみの手を強く握ってきた。驚いたゆみは、手を握ってきた人物の顔を見る。

 遥之だった。両手で強く、遥之はゆみの手を握っていた。

「ゆみ、あたしの残ってるパワー全部あげる! だから、絶対に勝てるよ!」

「遥之ちゃん……」

「私からも、元気とパワーを分けてやる! 髙野、やれるだけのことはすべてやった。後は、おまえ自身の心だ!」

 遥之同様、華澄もゆみの手を両手で強く握ってきた。

「南城さん……。二人とも、ありがとう。私、行ってきます!」

 仲間から力を貰ったゆみは、力強く筐体へ歩んでいった。筐体には、既にアンジェが待ち構えていた。

「逃げずに来たわね♪」

「今の私には、仲間がいる。あの時とは違う」

「そう。がっかりさせないでね♪」

 ゆみとアンジェは、お互いに睨み合うとそれぞれの筐体の席へ座った。

 ゆみは席に座ると、ゆっくり深呼吸をした。自分でも不思議なくらい、落ち着いていた。

 アナウンスがされるまで、レバーとボタンを適当にいじる。レバーにもボタンにも、異常はないようだ。

 ゆみは目を閉じ、精神を落ち着かせる。

(神様、もう一度、もう一度私に格ゲーをやらせて下さい)

 ゆみは心の中で神様にお願いした。

 長く、短い時間が経過する。

 大会スタッフが、マイクを手に取った。

「皆さん、お待たせいたしました! Dブロック三回戦先鋒戦を開始します。レディー、ファイ!」

 ゆみとアンジェが、ほぼ同時にスタートボタンを押し、使用キャラを選ぶ。

 ゆみは、ヴァルミリア。

 アンジェは、ゆいか。

 あの時と、インターミドルの時と同じだった。

 ゆみは心の中で誓う。あの時のようには、負けないと。

『The die is cast……Duel!』

 賽は投げられた。

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