ラウンド29
市民eスポーツ大会は、三人一チームで対戦するトーナメント形式の大会である。
先鋒、中堅、大将同士で対戦し、先に二勝したチームの勝ちとなる。昨今の大会で主流のダブルイリュミネーションではなく、シングルイリュミネーション形式で進行していく。一回負けたら終わりという厳しいルールだが毎年参加者は多く、老若男女問わず多くのプレイヤーが参加する歴史ある大会だ。
学校の部活で参加する学校も多く、県の格闘ゲームを行う中学、高校の部はほとんど参加していると言ってもいい。そんな多くの参加者がいるこの大会で、ゆみたち明陽高校e格闘技部とアンジェ率いるサンティエモン女学院eスポーツ部。
両校が激突するのに、時間は掛からなかった。
ゆみたち、明陽高校e格闘技部は、一回戦、二回戦と順調に勝ち進んでいった。
一方、アンジェ率いるサンティエモン女学院チームは、圧倒的な実力で勝利していった。高等部の新一年生のみで結成されたチームだが、流石は全国レベルの学校。全部で八チーム出場しているが、どのチームの生徒も高い実力を持っていた。
その中でも一番強いであろうアンジェたちと、ゆみたちは三回戦で当たることになった。
ゆみたちは対戦表を見ながら、早くも激突するアンジェたちのことを考えていた。
「ついに来たな」
「あたし、緊張してきた……」
華澄、遥之は少し固くなっていた。
一方、ゆみは、
「…………」
自分のもとにやって来るアンジェの姿に気付いた。
ゆみとアンジェは、お互い向かい合う。
「また失望、させないでね?」
「今の私は、前とは違うよ。今は、支えてくれる仲間がいるから」
「仲間、ね。ゆみ、わたしは大将で出るから。逃げないでよ?」
アンジェはそう言うと、チームメイトのもとへ戻っていった。その姿を、ゆみは静かに見送った。
「わざわざ自分の順番を教えていくとは……。よっぽど髙野に勝つ自信があるんだな」
「相変わらず嫌な感じ!」
ゆみとアンジェの様子を見ていた華澄と遥之が、ゆみの横にやってきた。遥之は、相変わらずアンジェの態度に憤慨していた。
「はいはーい、嫌な気持ちはゴミ箱に捨てて! 向こうから順番を教えてくれたんだから、逆にチャンスと思わなきゃ! ね?」
愛衣はむくれてる遥之の頬を、指でつついた。不思議なことに、さっきまで怒っていた遥之が愛衣の言葉と独特なテンションにより、心が落ち着いてきた。加賀愛衣、ただ者ではない。
「愛衣ちゃんの言う通りだ。向こうが大将で来ると解ってるんだから、何とかして髙野まで回せばいい。私たちの役目は重要だぞ、遥之」
「もう、華澄まで緊張させるようなこと言わないでよ!」
「ははは。それだけ元気なら心配ない! さて、対戦の順番だが……先鋒は遥之、中堅が私、大将は髙野だ。髙野、何としてでも私と遥之が髙野まで回す。大将戦で、内山アンジェリーヌをギャフンと言わせてやれ!」
「はい! 頑張ります!」
「よし、みんな集まってくれ」
華澄はゆみ、遥之、愛衣の肩に手を回すと、円陣を組んだ。
「髙野の為に、私たちの為にサンティエモン女学院と内山アンジェリーヌに勝つぞ! せーの……」
「「「「勝負は諦めないヤツが勝つ!」」」」
髙野ゆみ、因縁の対決が始まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます