ラウンド2

 髙野ゆみは意識が戻ると、椅子に座っていた。周りには同じように椅子に座っている学生たちが、真剣な表情で誰かの話を聞いているようだった。

 そうだ。今日は、高校の入学式だった。体育館で今、入学式の真っ最中だった。

 ゆみは、その幼さの残る顔にあるぱっちりとした目に涙を浮かべながら赤面し、慌てて姿勢を正すと、何百人といる生徒に向かって喋っている校長の話に耳を傾けた。

 いつの間にか、ショートミディアムのゆるふわなナチュラルボブの髪に、少し寝癖がついていた。

「みなさん、三年間悔いのない高校生活を送ってください」

 何気なく放たれた校長の言葉が、ゆみの胸に突き刺さる。

 自分は高校生活を、悔いなく過ごせるだろうか。あのときのようなことは、起こらないだろうか。不安が波のように襲ってくる。

 ゆみは、不安が消え去ることを願いながら、制服のブレザーの上に着ている青いパーカーのフードを被った。

(大丈夫、大丈夫……)

 ゆみはきつく目を閉じ、大丈夫だと自分に言い聞かせた。

 気がつくと、いつの間にか校長の話が終わっていた。

『続きまして、在校生からの挨拶です――』


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