暁桜編〈七枝刀〉


 給湯器のお湯をコンロで沸かし直しながら、今後の事を考えてみる。


(インストールが終って雛菊の案内(ホスト)でさくらに会う。……それでどうする? なんて言う?)


 会いたいし、連れ戻したい気持は強くある。だが、進むほど想像以上に危険な香りが強くなるこの行動に、彼女達を巻き込んでしまっている事に気持ちが折れかけていた。

 そうして改めてリスクを脳内で反芻する。

 ――億超えの金の放置。

 悪人であれば、容易に殺人を決意させるに足りる金額。大企業とはいえ、営利団体である以上、資金が潤沢なのが望ましいはずで、それを高校生に預けて放置できる状況と言うのが、すでに自分の理解の外にあった。

 ――先ほどの感情パラメーターの意味深な内容。

 雨糸が最初に言った通り、“いったいどこの組織が許可を出しているのか?”という疑問。

 それはつまり、“DOLLによる異常行動”に対し、何らかの介入が可能であり、もみ消したり闇に葬るなど、表沙汰にさせない事が可能な事を示しているのではないか。

 もし彼女達に危害が及びそうになったら、はたして一高校生の自分に守る事は出来るか?


 答えは“否”だ。


  その考えに背筋がゾクリとする。小さい頃のケンカや、学校で起こる学生同士のケンカと訳が違う。

 組織的、大人数でもってフローラ達を害されたら守る術などない。


(今からでも遅くない。雨糸達に手を引かせて諦めようか)


 そう思うが、同時に昨夜のさくらの言葉も思い出す。


(おやすみゆーき、あいしてるよ~)


 今考えれば、あれはさくらの別れ言葉だったのだ。開発者の思惑は不明だが、少なくともさくらからはこれまで悪意を感じた事は一度とてなく、そればかりか愛情と思いやりに満ちていた。

 その結果の消失(ロスト)で、その方が俺の為だとさくらは考えたのだ。

 想い破れ、後悔と失意のまま去ったさくらを思うと胸が痛む。

(だがどうする? このまま俺の行動に二人を巻き込み続けるか?)

 記憶の中のさくらの笑顔の裏に、煌めく刃がチラついているような、そんな奇妙な感覚に激しく戸惑う。


 ピッ。

 ぎゅうっ。

 「おっ!?」

 気付くとお湯が沸き、激しく蒸気を上げてグラグラと沸騰していた。それを後ろから伸びてきた手がコンロのスイッチを切って、そのまま誰かに後ろから抱きすくめられた。

「雨糸か。スマン、考え事をしてた。今お茶淹れるな」

 そういって回された手をほどこうとすると、さらに強く抱きすくめられた。

「何を悩んでるか当てようか」

「判っているなら話は早い」

「そうね。裕貴は私が裕貴の考えを判っているのは理解してるのね」

「なぞかけなら付き合わないぞ。――じゃあ率直に言おう。もう止めよう」

「ふう……。裕貴は本当に変わらないのね」

 ため息混じりだが、少し嬉し気に話す雨糸。

「……」

「自分が傷ついたり汚れたりするのは躊躇(ちゅうちょ)しないくせに、私やフローラに害が及ぶのは許せないのね」

「そうだ」

「ふふ、ならなおさら頑張らなくちゃね」

「オイそれは「――さくらちゃんの目的って、裕貴は何だと思う?」……いや、わからない」

 反論しかけるが、遮られて質問で返される。

「私も判らない。でもね、一つだけはっきりしている事があるわ。」

「なんだ?」

 さくらの目的。それは俺も知りたい事なので聞き返す。

「さくらちゃんは裕貴に恋してたのよ」

「それは判るが、でもそれが為にあらゆるリミッターを解除して、俺に尽くしてそばに居たはいいけど、結果フローラの事故で俺の前から姿を消したんだろう? そんな事――じゃない。俺に恋して一体何をしたかったって言うんだ?」

「……本当裕貴ってバカね。ねえ、フローラはどう思う?」

「何?」

 すると、後ろの背中に当てられた雨糸の胸のあたりから、軽い振動とともにフローラの声がした。

『馬鹿だな』

 通信してたのかよ……。

「……バカにするのは一向にかまわない、ヘタレとでもなんとでも言えばいい。だが、これ以上俺の為に二人を危険な領域に踏み込ませる訳にいかない。判ってくれないか?」

「ねえフローラ、この唐変木の口を塞ぎたいんだけど通信を切ってもいいかしら?」

『ダメだ。殴って黙らせろ』


 ……昨日愛を語った口でそんな事を言うんですか? つか、雨糸はどうやって塞ぐつもりなんだ?


 俺の言う事をハナから無視して、二人から穏やかじゃない言葉が漏れ、残念な気分になる。

「ちぇー。まあいいわ」

 雨糸はそう言うと、腕をほどいて俺を振り向かせると、真っ直ぐに見つめる。

「あのね裕貴、開発者がこれまで、さくらちゃんに何か干渉した事はあった?」

「いや、無いと思う。少なくとも表面上は」

『さくらに“自由恋愛をさせる”のが目的の為の手段だったことは判るか?』

  雨糸の胸の間に入れられたツインからフローラが聞いてきた。 

「ああ、その可能性は前にもフローラと話したよね」

「裕貴はそれじゃあこう考えてみた事はない? “殺人すら許されるほどの権限を与えられたA・Iが、“裕貴の心を射止められなくて身を引いた”のはなぜかしら?」

「そっ、それは……」

『それほどのA・Iなら、――ましてや芸能プロダクションていう、感情サンプルの豊富な会社の作ったA・Iなら、催眠や心理誘導(マインドコントロール)にでもかけて裕貴の気を引くことは可能だったんじゃないのか?』

「!!」

「そうよ。そしてそうしなかった理由こそが、開発者がさくらちゃんをコントロールしなかった最大の状況証拠じゃない?」

「確かに……」

『こういう言い方はしたくないが……。だからこそ、あの人間臭いA・Iのさくらが“裕貴の側”にいる限り、開発者は私達に危害を加える事は無いんじゃないのか?』

「それは……そうかも」

 フローラと雨糸。先ほどまで二人から言われていた感情論より、男の俺にはよっぽど腑に落ちる理由に思えた。

「でもね裕貴、私達は裕貴がこの事で一生後悔を引きずってしまうのがイヤなのよ」

『それに裕貴はさくらが好きなんだろう?』

 その返事には少し躊躇したが正直に答える事にした。

「……ああ、好きだ」

「なら追っかけなさいよ。女わね、人を好きになったら神にも悪魔にもなるの。相手が高校生だろうが、どこかの国の王子様だろうが関係ないわ。世界を敵に回しても相手を一番に思うのが女なのよ」

『そうだ裕貴。だから私達をさくらの敵にさせるな』

 にこやかに言う二人のその言葉に、心にかけられていた枷(かせ)が外れる音がした。


「ああ、全力で追いかけてみる」


 „~  ,~ „~„~  ,~


「……あっありがっ、とっとう。圭ちゃん」

 たどたどしく遠慮がちにお礼を言うが、涼香はそれでもしっかりと圭一にしがみついている。

 フローラの世話の為、送迎のできなくなった裕貴に代わり、圭一が涼香を自転車の後ろに乗せていた。

「いいさ、気にすんな」

「でっでも、けっ圭ちゃんちとはいっ、家がはは反対方こっ向だし」

「いいって。俺も高校になって柔道辞めたせいか運動不足でな。見た目じゃまだ判らんけど、体重が増えてきてヤバイって思ってたところだ」

「ああっありがと……う」

「でもいいのか?」

「なっななにが?」

「フローラと裕貴の事だ」

「!!」

 体に回された涼香の手が一瞬震えるが、圭一は構わず聞く。

「あいつらがくっつくのをだまっ、ってイテテテ!! 一葉やめろ!」

 涼香の頭に乗り、圭一の首に弱くライトスタンをかませる。

「ひっっ一葉!」

 涼香が叫び、一葉をいさめる。

「圭一は余計な心配しなくていいの! 涼香の事はアタシが考えてる! アンタは自分の事をやりなさい!」

「わーったよ! じゃあ後ろのVIPには、今度からイス付きのママチャリにでも乗って貰おうかな」

「イス付き? 母親が幼児を乗せているタイプの自転車の事?」

 一葉の質問に圭一の意図を涼香が気付いて怒りだす。

「~~~~っもう! いっいくら、わっわたたしででっも、そそんなち、小さくないもんっ!!」

 圭一の大きな背中に頭をぶつけて涼香が抗議する。

「はっーはっはっは。ワリィ」

 人見知りの激しい涼香が見せる珍しい……と言うより、裕貴以外では見る事がなかったリアクションに、圭一は涼香と初めて出会ってから3年目にして経験して満足げに笑う。


 家に着いて圭一にお礼を言い、見えなくなるまで見送ってから玄関の扉を開ける。

「ただいま……」

 返事のない家で靴を脱いで上がり、居間に行く。扉を開けるとキツイアルコール臭とともに母親が派手な服のままソファで横になっていた。

 自分と同じ髪質で腰まであるウェーブの髪を床まで垂らし、年相応の小じわが浮いた目元を、近頃ますます厚くなってきた化粧で隠し、少し眉間にしわを寄せて困った様に眠る。

 この母親には、物心ついた頃より様々な辛酸をなめさせられたが、人を愛する事を覚えてからは少し理解が及ぶようになり、最近は憐れみすら感じるようになっていた。

 その母親に薄手のタオルケットを掛けてエアコンを回し、部屋着に着替えてエプロンをかけ、夕飯の支度をする。

 手際よく二人前のスパゲティとサラダを作り、1人前のスパゲティをラップで包んで電子レンジに入れ、濃い目のコーヒーを落としておく。

 自分の食事を済ませて部屋に戻ると、DOLL服用のナイロンや布切れなどが乱雑に散らばっていた。

「片付けなきゃ……」

 のろのろと散らばった布切れを拾い上げると一葉が怒る。

「そんなのいいから、今日はもう休みなさい」

「ん……はい」

 そう素直に呟くと、小さい頃に流行った戦隊モノがプリントされた、小学生時代から愛用している布団の上にぽふんと身を投げ出す。

「……ねえ一葉」

 テーブルの上、ミシンと並んで置かれた専用クレードルピットに座り、充電を始める一葉に涼香が声をかける。

「なあに?」

「お兄ちゃん今苦しんでいるよね?」

「そうね」

 一葉が淡々と答える。

「“ういちゃん”はちゃんとやってくれるかな?」

「今の所は順調よ」

「お兄ちゃんの所に行きたい」

 その言葉に、一葉がピットを降りて、ベッドにうつぶせで横になっている涼香にそっと近づく。

「人間の禁忌がそれを許さないとしても、あんたたちは法律上は結婚できるし、涼香がそれを望むならアタシがあらゆる手段でその協力もする。だから涼香は“涼香が望む幸せ”を考えなさい」

 子供をあやす母親のように、涼香の頬を優しく撫でながら一葉が諭す。

「んっ……ふっ……うっ…………」

 涼香は枕元に置いてあった、ヨレた男物のTシャツを引き寄せると、それで顔を覆い静かに嗚咽を上げ始めた。


 „~  ,~ „~„~  ,~


 涼香が淹れたような紅茶にならず、フローラに出したのと同じ少々茶葉の混じった紅茶を、二人ですすって部屋に帰ると、ちょうどインストールの残り時間が十数秒だった。

 雨糸がパソコンデスクに座り、俺が後ろに立つ。

 ピロリン。

 終了を告げる効果音とともに、別ウィンドウが表示されて問いかけてきた。


〈Please choose the plug-in applied to this program.〉


「……わからん」

 2秒で白旗を上げた。

「ぷっ……えっとね『このプログラムに適用するプラグインを選択してください』だって、えーと……ひっ!!」

 続く文字を読んだとたん、雨糸が短い悲鳴を上げる。

「どうした?」

「うっ、うん、ちょっとフローラにヘルプコールする」

 そうしてコールすると、フローラも画面を見てくぐもった悲鳴を上げた。

『Really?』(マジ?)

「どうしたんだ? なんて訳すんだ?」

「うん、プラグインの名前は〈Seven《セブン》-Branched《バランシェッド》 Sword《ソード》 plug《プラグ》-in《イン》〉

で、多分七枝刀しちしとうの意味だと思う」

「七枝刀? 国宝のか?」

「うん、で、その七つのプラグインが――」

 雨糸に続き、先ほどのようにフローラが訳す。

『Penetration《ペネトレーション》 choice《チョイス》……透過選別。

 Information《インフォメーション》 analysis《アナライシス》……情報解析。

 Remote《リモート》 control《コントロール》 operation《オペレーション》……遠隔操作。

 Siding《サイディング》 chain《チェーン》)……同調連鎖。

 Infection《インフェクション》 mutation《ミューティレーション》……感染変異。

 Amplification《アンプリフィケーション》 expansion《イクスペイション》……増幅拡張。

 Assimilation《アッシミレーション》 absorption《アブソルプション》……同化吸収。

と和訳するのかな? 雨糸、どうだ?』

「ええ、いい……と、思うわ。でもこれって……」

『ああ、最初から意訳すると1番が〈フィルタリング〉、2番が〈暗号解読〉、で3番はそのまま、4番は多重シンクロか? 5番が浸食やウイルス系か? 6番と7番が言葉の意味は分かるが、具体的に何をする機能なのか判らないから何とも言えないな』

「とんでもなさそうな機能っぽいな」

 俺が呟く。

「そうね。でもたぶん“情報解析”のプラグインは“ハッキング”が含まれると思うの」

『オレも同感だ』


「『…………………………………………」』


 意味不明なプラグインに、さすがのフローラと雨糸もに二の足を踏んでいた。

「……うん、全部いれよう」

 俺が提案する。

「正気?」

『用途が判らないのにか?』

 すっかり息が合い始め、フローラと雨糸が同じ意味の質問を繰り返す。

「ああ、このプラグインはたぶん名前の通り、7つ揃っているべきものなんだと思う」

「根拠は?」

 雨糸が聞く。

「具体的に特にないけど、それぞれが際だった特徴がありそうじゃん? だからそれぞれ単独に使うんじゃなくて、例えばウイルスっぽい機能のプラグインがトラブった時、情報解析で処理をする……みたいにそれぞれの機能で補完しあうタイプだと思うんだ」

『ほほう、裕貴にしては説得力のある論理だな』

「そうね。根拠はないけど確かにプログラムのバランスとしては理にかなっているわね」

「……くくく、お褒めの言葉うれしうございます、つか、兵器じゃないし、何かに特化させる必要がないなら入れておいて後から削除すればいいんじゃない?」

『ふっ、その通りだな』

「いいわ。そうしましょう」

 雨糸がすべてにチェックマークを入れ、雛菊デイジーを再起動させる。

「「『……………………………」」』

 3人で固唾を呑んで見守る中、雛菊がゆっくりとカメラアイを開ける。

 そして雨糸を見て第一声を上げる。

「……にーはお」

 「「『は??」」』

 唇を尖らせ、不機嫌そうに挨拶をした雛菊に全員(フローラはイメージ)ポカンとする。

「あーあ、もっと部屋でゴロゴロしてたかたアル。めんどくさーアルよ」


(うわあ、カタコトエセ中国風なまりだよ)


「…………ごっごめん?」


(疑問系で謝っちゃってるし)

 と、キャラについて色々ツッコミたい事はあるが、雨糸は驚きのあまり半分ポカーン状態なので止めておく。

「えっとー、じゃっじゃあ、自己紹介から。ね?」


「いいアル。そんなのウイのツインと家のPCのメモリーを漁るからふよーアル」

「え? てっ、ちょっ、待って!!」


「ふんふん、へええ、そうアルか、あいやー、ウイは純アルねえ……ふんふん。うん? 何アルか? この“裕ちゃんひすとりー♡(ハート)”とか言うフォルダ。ロックかかってるアルね。ちょっと開けて「やーーめーーてーー!!」……うるさいアルね。えい!」

 バチッ!

「きゃん!」 

 絶叫して近寄る雨糸の指先にライトスタンをにかましてけん制しつつ、雛菊はなにやら粛々と雨糸の秘密を暴こうとしているようだ。

「んん、このプロテクトちょっとてごわいアルね。このデジーを手こずらせるとは……おお、こんな家でそだたか。ウイは」

「うええ、やめてよう……」

 雨糸が餌を先輩猫にブン盗られた猫のように弱々しく抗議しているが、雛菊はお構いなしだ。

(すでにウイとか言ってなれなれしいし。……つかこんなやり取りどっかでみたなあ。元が“あのキャラ”だから、これがデフォなのか?)

  雨糸のプライベートフォルダーをハッキングしながら、同時に他の情報も電脳内で漁っているらしい雛菊に奇妙なデジャブを覚え、指を押さえて涙目でデイジーを睨んでいる雨糸に助け舟を出す。

 ちょいちょい。

 デイジーに背中を向け、俺のツインを指さして、操作する真似ごとをする。

「!!」

 それだけで通じたのか、自分のツインを手に取り、ごめんと言いながらフローラとの通信を切ると、速攻で何やら操作して、マイクに向かって奇声を上げ始める。

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”・・・・・・・」

 すると、雛菊が頭を抱え、悲鳴を上げて悶え始める。

「ぴぎゃーー!! くっくすぐったいアル。なにやするアル、いや止めろアル!」

「はあはあ……、じゃ、じゃあ今すぐわたしの……そっ、そのふぉっ、フォルダを開けるのやめなさい!」

 真っ赤になり息せき切らせて雛菊に命令する。

「むむう、このデジーをやり込めるなんてなかなかやるアルね」

 腕を組んで怒るように胸をそらせた雛菊が感心したように言う。

「おい、一体何やったんだ?」

「ちょっと待って……」

「あっっ! しまたアル!」

 雛菊の言葉にも耳を貸さないまま、続けざまにツインを操作する雨糸を見て、雛菊が声を上げる。

「やったわ!! 私の唇紋(しんもん)でロックをかけたから、これで雛菊がこのツインを書き換える事はもう出来ないわよ」

 雨糸は操作の最後にツインの画面にキスをすると、勝ち誇ったように歓声を上げた。

「おお!! さすが」

「ちっ、……いいある。負けたアルよ。さすがこのデジーを呼び出しただけの事はアル。お前をマスターと認めてやるアルね」

「ふう、じゃあこれからよろしくね」

「しょうがないアルね……」

 変なエセ中国なまりで喋る、格闘系中国娘タイプのDOLLにインストールされたA・I は、かくして無事に西園寺雨糸のDOLLになりました。……のか?


「……で、さっきの奇声は何だったんだ?」

「あれはね、音楽再生ソフトの編集機能を使って、プログラムがバグりやすい音に変換しながら雛菊のスピーカーで再生するよう送信したの」

「おお、そんな方法があったか」

「全くアル。小娘だとおもてて油断したアル」


「「…………」」


 口汚いキャラになってしまい、二人でショッパイ目で雛菊を見つめ、ふとこうなった理由を聞いてみる。

「どうしてこんな風になったんだ?」

「まあ、ある程度は予想してたけどね。……これから創造主にハッキングかけるわけだから、さっきの設定の時に“反抗”のパラメータを目いっぱい上げておいたのよ」

「納得。てか凄く扱いにくいキャラになったんじゃないか?」

「さあ、ここまで複雑なパラメーターを弄ったことは無いけど、少なくとも友達にはなってくれたみたい……よね?」

 そう言うと、雛菊が肩をすくめて応える。

「……いいアル。友達になってやるアル」

 そして、雨糸の肩にピョコンと軽快に飛び乗ると頬にキスをした。

(お。 やっぱりチューニングしてあるみたいだな)

「よろしくね♪」

 雨糸が雛菊の手を取り、嬉しそうにキスで返した。

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