第24話

 真っ白い壁に囲まれた部屋の中で、ゼロシキはキドに面会した。やたらに明るい照明に照らされ、何もかもが白く霞んでいる。明るすぎる部屋は、時に闇の中にいるような感覚を与える。最新技術を駆使して作られた線のように細い注射器の針が、その白い闇に沈んで、ちょっと距離を置くと見えなくなるくらいだった。その薬を投与するとき、キドは薄笑いを浮かべていた、何かをたくらんでいるような、不気味な雰囲気だったが、ゼロシキはそれをどうでもいいとすら思っていた。これから始まる戦いを、自分にとって最後の戦いにするつもりでいる、勝とうが負けようが、そこに自分の全てを投げ捨てるのだ、もう、後のことは考えない、キドが何を考えていようと、知った事ではない。薬が血管の中へと流し込まれ、全身をかけめぐる、どういうプロセスで作用するのかは分からない、だが、ゼロシキは、頭の奥に激しい火花が散り、この部屋よりもはるかに明るく強く、虚無は白い闇のように光り輝くのだと感じていた。指先が、かすかに震えていた。薬のせいではない、ああ、これが武者震いなのか、とゼロシキは思う。濃密な生と死を、肉体が予感している。すぐそこまで、それはやって来ようとしていた。最後の戦いが、もうすぐ始まる――。

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