最終話 渚にて

駅を出ると、海が見えた。

5年ぶりの海はおだやかだった。

私は大学生になっていた。

松島が見えるところまで歩いた。

砂利じゃりを踏んだ。

私はポケットから、絵はがきを取り出した。

そこには笑顔のアンと赤ちゃんがいっしょに写っている。

絵はがきを折りたたんで、燃やして、海に投げる。

私はしゃがんだ。

はがきの灰が波間なみまに消えるのを見続ける。

カオルに届いただろう。

遺体はまだ見つかっていない。

カオルの葬儀は済ませた。

墓は青葉区の教会近くにある。

それでもなお、私は彼が背後から声をかけてくるのを心待ちにしている。

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ここで君を待つ 村上玄太郎 @dhrname

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