6日目:図書館観想(奈由と葵/ボツ会話)

 どうにもはぐらかされた感が否めなかったが、しかしこれ以上言及しても無駄だと思い、葵は追求を諦めた。


「……まさか他の人間にもばれてるとかじゃねぇよな……」

「あ、認めるんですか?」

「…………」


 自分が無頓着なのか奈由が鋭いのか。いずれにせよ、つくづく自分の迂闊さに辟易した葵である。

 黙り込んだ葵をやはり楽しそうに眺めながら、奈由は彼の懸念を払拭するように軽い調子で言った。


「気付いてるのは私だけだと思うよ。他のメンバーを考えてみなよ。

 つっきーは雨森氏をいかにコケにするかで精一杯だし、あっきーは男子と同じ空間にいるのに耐えるのが精一杯だし、こっちゃんは智謀策略を巡らすので精一杯だし。

 それにはったんは自分のことで精一杯だからね」


 女性陣の面々を思い返し、なるほど、と納得しかけたところで、最後の部分に引っかかり葵は奈由の方を向いた。


「……自分のこと?」

「はっはっは」

「どういうことなんだよ」

「どういうことだろうねぇ」

「てんめぇ……」


 余裕気に笑ってみせる奈由を睨んでから、しかし聞きだせそうにないと思ったのか葵は諦めて残ったファンタの残りを飲み干した。

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