5日目:嘘吐姫と左腕(ベリ子登場/ボツ台詞)
「その通り、潤さんはみんなのアイドルだけど、いがみ合うのは止めて仲良くするんだよ! 大丈夫だみんなまとめて僕が可愛がってあげるから! ただし変態以外!」
ベリーはこの状況が楽しいのか、どことなく嬉しそうにはしゃぐ。一方の春は自分を意図的に外されて悔しかったのか、身構えながら吐き捨てるように言った。
「変態が除外された! 哀しい!!
そして私の眼の届かないところで女の子をたらしこみ利用してるというのねなんていやらしい! このタラシめ!」
「タラシ違う! 私は女の子を平等に愛でているだけですぅー!」
「それをタラシと言わずして何とする!」
「その台詞そっくりそのまま返すわこの展開にしたのは貴様だぞメガネ」
「助長したのは明らかに月谷さん御本人の筈ですが」
「月谷家にはデフォルトでタラシの遺伝子が組み込まれてるんだよ」
「とうとうタラシをDNAの仕業にしやがった!」
「タラシで何が悪い!」
「開き直った!?」
三人がぎゃいぎゃいと騒ぐ中、その輪から外れていた杏季がそっと潤に近づく。彼女の真横まで来ると、杏季はちょいちょいと潤の袖を引っ張った。なんだよ十歳児、と言いながら潤が振り向けば、杏季は無言で自分の後ろのほうを指し示している。杏季の指し示した方角を見遣ると、そこには実に冷ややかな眼差しを浮かべた奈由がいた。
潤はひくっと唇を引きつらせて、冷や汗混じりに弁解する。
「い、……いやなっちゃん、これには海より深ーいワケがございましてね」
奈由は微かに口角を吊り上げた。
「よかったねぇモテモテで」
「な、なっちゃん……なっちゃん冷たい……」
「べっつにー」
「なっちゃあああぁぁん!!」
情けない声を挙げて潤は腕を伸ばすが、数メートル離れた奈由に届くはずもない。ベリーがぱっと潤を拘束していた腕を放すと、潤はよろよろと奈由の方へ歩み寄った。奈由はいつもと変わらぬポーカーフェイスだが、彼女をよく知る者ならその違いが分かるはずである。
物凄く、冷たい。
「いやそのあの、つまりですね、なんというか」
「そうだよね分かってるよDNAの所為だもんね仕方ないよねー潤さん」
「そう! そうなんですよ全くDNAのやつめ仕様もないんだからいくら私が言っても聞かないし、ったくしょーがねーなー今度またきちんとDNAに言っておきますからね、あの、その、つまりそういう」
「黙れらんま二分の一」
「大層な言われよう!」
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