4日目:虚偽の海に沈む佳日(京也とビー/一部改変※)
「貴重な
携帯電話の画面に映っていたのはこのビルの風景である。何事かと目を凝らし、数秒遅れて気付いたヴィオは、無意識に短く息を吸い込んだ。
(あの馬鹿やろう――!)
「ディーこと『月谷潤』を地下室に閉じ込めました。彼女はもう袋の鼠です」
写真に写っていたのは地下室の扉。半透明なガラスの扉の向こう側に、微かに人影が見える。向こう側に閉じ込められた潤の姿だった。
「さて。本題はこれからですよヴィオ」
ビーは片手で携帯を閉じ、淡々とした口調で告げた。
「今からヴィオには、ベリーと二人で白原杏季の捕獲に行ってもらいます。ベリーに要領は話してあるので詳細は彼女に聞いてください。既に彼女は会議室にて待機しています。
白原杏季は現在、寮から外出しているようです。彼女が戻る前に滞りなく任務を遂行してください。貴方のスピードなら可能ですね」
携帯電話をポケットに仕舞い込んでから、更にビーは続けた。
「交換条件ですよ、ヴィオ。何、簡単な話です。
貴方が白原杏季を連れて来られたのなら、月谷潤は無事に解放して差し上げましょう」
焦りを隠し、余裕のある素振りを演じながら京也は尋ねた。
「もし、失敗したら?」
「人間に失敗はつきものです。普段の僕は、失敗に対し多少のペナルティを加えこそすれそこまで責めません。
ですが、仮にも今から派遣するのは貴方とベリーです。それに問題分子たる佐竹琴美はワイトに足止めに行っています。いくら彼女でも、音属性のワイト相手には若干の苦戦を強いられるでしょう。彼が失敗しない限りは、貴方が失敗する可能性はほぼ皆無といっていいと思いますよ」
ビーは人差し指を立て、冗談めかした口調で言ってのける。
「さて問題です。貴方が今回の任務に失敗する可能性は、何%でしょう?」
「……予測不能の事態を5%加味するとして、5%、だな」
「おそらく正解ですね」
ビーは両手を広げ、余裕たっぷりの表情で京也を送り出した。
「さあ、行ってらっしゃいヴィオ。貴方の帰りをお待ちしていますよ」
(――ちくしょう!)
京也はビーの姿を睨みつける余裕すらなしに部屋を飛び出した。
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