第16話
「しまちゃんって街コンとか行ったことあるん?」アキ子はいつもにも増して目を見開き島中を問い詰めた。
島中は少したじろいた様子で「どうしたの?」と半笑で応えた。
「いや、だから街コン今まで行ったことあるかって聞いているんやん」アキ子は前のめりになった。
「うん、行ったことないよ。急にどうしたの?」
「いや、もし良かったらうちと一緒に街コン行ってみいひん?しまちゃんまだ彼氏とかおらんやろ?」
「あはは、あっちゃん面白いね。彼氏になりそうな人はいるけど、まだ付き合っているわけじゃないから行ってもいいかも」島中はアキ子を馬鹿にしたように笑いながら応えた。
アキ子はこの島中のいけ好かない態度に若干の怒りを感じながらも気持ちを抑え、島中を説得しにかかった。島中はこのような場合、大抵焦らしてくるはずである。アキ子の統計上、これは紛れもない事実であった。
「じゃあ、二人で行ってみようや。もっといい男いるかもしれんで」
「うーん、どうしようかなあ。今いい感じの人にばれたらめんどくさいかもしれない」
アキ子はめんどくさいのはお前だと言いたい気持ちを堪え、「大丈夫やって。しまちゃん。行ってみようや」と優しく言った。
「でもね。前にね。その人と話したときにね。なんか価値観とか似ているなあって感じたからね。その人に決めちゃうかもしれない」島中は薄気味悪い笑みを浮かべた。
アキ子はこんなやつに頼らないといけない自分に対して苛立ちを感じながらも、「まあ、その人はその人で進めればいいやん。一回街コン行ったくらいでしまちゃんのこと悪く思わへんで。その人きっとしまちゃんに惚れているもん」アキ子は最後の念押しをした。
「うん、そうだね。じゃあ仕方ないから一回行ってみようか」と自己愛が満たされたのか島中は満足そうに応えた。
「ありがとう。ほんま助かるわ」アキ子は何とか感謝の言葉を述べた。
「ほんまこいつだけはめんどくさいやつやな」おじさんがアキ子の隣でぼやくと、アキ子はすぐさまおじさんの顔をみて深くうなずいた。
「じゃあ、今週の金曜日しまちゃん予定空いている?」アキ子は気持ちを切り替えて訊いた。
「うん、今のところ特に用事はないかなぁ」
「それやったら、うち予約とかしとくから行こう」アキ子は目を大きく見開き、島中の手を取った。
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