第38話
属性カウンター攻撃が来る――!
思わず目をつむったのですが、
「……あ、あら?」
何も起きていないみたいですの……?
そーっと目を開けてみて、わたくしビックリしましたの。
だって、ラーニンググローリーの手の平中央部分が黄金色に光り輝いているんですもの。
何かを吸ってる……ようにも見えますが。氷の壁のせいでよく見えませんわ。
「ラーニング完了」
カウンターを喰らうどころか、ゼリーを抉り取ってそのまま後方へとバク転退避するれいらさん。
「イ、インストール……開始!」
苦しそうに呟いて、すぐさま左腕を押さえましたの。
心臓の鼓動音と共に腕に装備されているラニグロが光を纏い始め――あっ!
まずいですのっ、ゴスライムがぷるぷると体を震わせましたわ!
これは【バブルバースト】という強酸ゼリーを四方八方に飛ばすスキルの予兆……それを喰らうと大ダメージ必至、おまけに防御力大幅ダウンのデバフがついちゃいますのっ。
「バーストが来ますわ! れいらさん、避けてくださいましっ!」
「……大丈夫、です。歌雨様」
仁王立ちで俯いたまま腕を押さえていたれいらさんですが、顔をあげたその無表情にはどこか余裕が見えましたの。
「き、来ましたわっ!」
「うっ……ぐ」
バーストが発動し、たちまちゼリーを全身に浴びてしまうれいらさん。
ああ、なんてことでしょう。強酸ゼリーのせいでみるみるうちに制服が溶け出していきますわ!
肩やお腹だったりお尻だったり、穴が開いて丸見えになっちゃっていますの。
これでは肌にまで酸が侵食して防御ダウンデバフまでついて――あら?
「ダメージを受けていない……?」
デバフがつくどころか、HPゲージが一ミリも減っていませんわ。
あれは体力の7割を奪う凶悪スキルのはず……どういうことですの?
驚いてると、わたくしを包んでいた氷の壁がパリンっと割れて、
「ご主人ちゃまならへーきなの! ちょっとの間だけ無敵モードなのっ」
ひょっこりとティエチナさんが顔を覗かせてきましたわ。
「無敵モードって……それがラーニンググローリーのチカラですの?」
すっかり緊張感を無くしたその子に訊いてみますと、
「……否定。正確に言えば今の私は『物理無効』状態、です」
ふぅっ、と一息ついたれいらさんが代わりに答えて振り返りましたの。
彼女はそのまま続けて、
「この腕に触れたものはその『特性』を失い、それは私へと移る……でも、それは一定時間だけ。だから――ティエ!」
「はいなのーっ!」
バンザイしてれいらさんのもとまで四足走行で駆けていくティエチナさん。
おおっ!? 駆けながら白金色のワンちゃんへと姿を変えていきましたの!
もしかしてプラチナ色だから『ティエチナ』という名前をつけたのでしょうか。
そんなことをぼんやり考えたとき、ティエチナちゃんが大ジャンプしたかと思うと、パァッと光り輝きましたわ。
「ウェポンチェンジ、なの!」
グルグルと回転して叫んだ瞬間、彼女の姿が淡い白金色の弓へと変化しましたの。
弓の端っこにアクセサリーのようにぶら下がっているふわふわの尻尾。
こ、これ本当にティエチナさんの化けた姿みたいですわね……。
「……バーストなら、こっちもバースト返し。アクティブスキル発動――【バースト・アロー】ッ!」
弓を引くと、光の矢が突然現れましたの。
それを両手で目いっぱい引いて、何度もゴスライムへと撃つれいらさん。
おお、たちまち全体が溶けていきましたわ! 物理無効の特性を失ったゴスライムはただのスライム同然。
たくさん乱射されるバーストアローによって一瞬で弾けちゃいましたの。
「す、凄い……」
「――物理が効かないなら私のラーニンググローリーでそれを『奪う』まで……。終わりました、歌雨様。さぁ、帰りましょう……花火が始まっちゃいます」
飛び散るアイテムに目もくれずに光の弓を持ったまま私へと無表情を向けるれいらさん。
淡々としていますが……ま、まさかここまでれいらさんが強かったなんて。
わたくし、思わずゴクリと喉を鳴らしてしまいましたわ。
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