第26話
「と、言うわけですの」
唯一のデバッファーがわたくしということ、何故シャノンが現実世界にいるのかについてだったり『選ばれし眼』の事など、色々とかいつまんで三人にお話ししましたわ。
「……ふうん。選ばれし眼ね。虹彩データを取られたときに何らかの理由で選ばれたのかしら」
「シャノンちゃんのことも不思議だよねー。BEO2も凄いって思ったけど、MROはもっともーっと最先端過ぎて、むいの頭じゃ全然理解出来ないや」
「わたくしもですわ。よくよく考えてみるとおかしいことが多くてちょっぴり怖いですの……」
「あ……。昨日ウルフに噛まれた時、少しだけ……痛かったかも、です」
「うげっ。そう言えば、あたし達はダメージ受けてなかったわね。ななよの言う、神経接続うんぬんって話からすると、ゲーム内の痛みが実際のあたし達にあっても不思議じゃないわね」
「でも……ログアウトしたとき、引っかき傷程度でしたから、そこまで反映されていないかもです」
「雑魚敵のウルフだからそれだけで済んだかもしれませんわよ?」
「…………」
しばらくみんなの間に沈黙が流れましたわ。
そんな空気を察したのでしょう、むいがパシッ! と両手を叩いて、
「きっと大丈夫だよ! だって、むいは昨日すっごく楽しかったもんっ! みんなはどうかな?」
「もっちろん、あたしも楽しかったわよ。それに少しくらい痛いほうが本当に冒険してるって気分になれていいし。あと……ななよの可愛らしいドレス姿も見れたしィ?」
「もう……バカにしましたわね!」
「あはっ、脇全開で涼しそうだったし~。おへそも結構いい形してるのね……つんつんっ」
「やんっ! や、やめてくださいましっ」
むー。みやかってば意地悪ですの!
すっごく恥ずかしい衣装でしたのよ。リトプリであの露出ですわ。第二段階目のキューティプリンセスになったらどうなっちゃうのでしょう……。
それはさておき、わたくしもみやかとむいに賛成ですわ。
「ま、なんとかなると思いますわ。むいは雷のロンソでしばらくは武器には困りませんし、防御面に関しましてもバニッシングがお上手ですし。みやかはなんと言ってもあの『第2位』で、しかも神器の火蜂がありますの。心配することない無敵パーティですわ! そうそう、れいらさんは何を引継ぎされたんですの?」
宜しければ教えて頂けません? と、続けてみるとそれまでピーチサイダーをストローで静かに吸っていたれいらさんが、
「歌雨様がそう仰るなら……。公式サイトで見せたほうが早いかも……です。あの、空宮さん」
「あ、ログインしてみるんだね。いいよー、むいのパソコン使って!」
「ありがとうございます」
ぱっぱとID入力してれいらさんのステータス画面と装備画面が開かれましたの。
タイピング早いですわねー。
なんて関心しておりましたが……ええっ!?
名前:トゥインクル
称号:無し
クラス:『フォレストハンター<狩人>』 LV.7
サブクラス:『アタッカープリンセス<攻撃>』
HP<ヒットポイント> 125/125
SP<スキルポイント> 30/30
MP<マジックポイント> 10/10
STR<腕力> 10
DEF<耐久> 8
AGI<俊敏> 43
MAG<魔力> 0
DEX<器用> 30
LUK<幸運> 0
『装備』
服:流山女学院中学校の制服
左手:+2ラーニンググローリー
右手:※装備されていません
腕:※装備されていません
体:※装備されていません
足:※装備されていません
アクセサリー:※装備されていません
指輪:へリオドールリング LV.1
総攻撃力:715 <限界9999>
総防御力:8 <限界9999>
総回避力:250 <限界999>
総致命力:285 <限界499>
所持マニラ:11万M
「あ、あんたラーグロ持ちだったの!?」
「……うっわ。本当に持ってる人初めて見たよぉ」
みやかとむいが驚くのも無理ありませんわ。
ラーニンググローリー……シーフやハンターが使える<暗器>で、神器には及ばない火力ながらも、あまりのレアさからとんでもない値段がついた代物。
入手方法だけを見ると至って簡単。全ての敵から盗めるという武器ですが、その確率なんと
『1000万分の1』という頭おかしい設定でしたの。全てのサーバー合わせても3つくらいしかないという噂ですわ。
一説では使いこなす人によっては下手な神器よりも強いみたいですが……。
「そっか、れらが何でMROやっているのか不思議だったけどそういうことだったのね」
「え。なんで不思議なの?」
そう訊ねるむいに、
「だってMROの職業じゃあシーフ……つまり盗賊クラスが削除されていたのよ。一応フォレストハンターにそれっぽい盗むスキルとかついてるけどね。シーフ以外興味無いって言ってたから、れらに招待状が来たところでやらないだろうなって思ってたの」
「……そう。第2位様の言うとおりかも、です。本当はMROをするつもりなかったです……。でも、サービス終了する直前にたまたまラ二グロが手に入って……。それがMROでも使えるみたいってあとから知って」
そりゃ当然引継ぎますわよね。しかも、手に入ったはいいけどすぐにサービス終了という事態ですもの。
シーフが無くなったのは痛いですが、一応ハンターでも装備出来るみたいですからそれを選んで試しにプレイしてみたようですわ。
「ふえぇ~。そんな強い武器なんだ。レアなのは知ってるけど、どんな性能かはあんまり調べてなかったなぁ……」
「そうですわねぇ。調べたところでよほどの運が無ければ絶対に手に入らない武器ですもの。XRのボスカードの方がまだゲット出来るチャンスがありますわ」
「あたしも詳しくは知らないわねぇ。そうだ、どうせなら実際にあたし達に見せてよ! れらも今日帰ったら20時くらいにMROで一緒に遊ばない?」
みやかの提案にむいはすぐに賛成のバンザイをしましたの。
「わーいっ、れらちゃんもMROやってるんなんて、これも運命だよっ! みんなで一緒に遊ぼ遊ぼっ!!」
「え、えっと……」
あら?
一緒に遊ぶのは嫌なのでしょうか。れいらさんが眠そうな目で――でも、奥底に熱意がこもった目でわたくしをジッと見つめてきましたの。
こりゃ、あともう一押しですわね!
「うふふっ。もし宜しければでいいのですが、わたくしもれいらさんと一緒にMROで遊びたいですのっ……ダメ、でしょうか?」
にっこりと微笑んで手を差し出してみますと、
「…………っ」
ほんのりと頬を染めながらコクンと頷いて、わたくしの手を握り返してきましたの!
無表情のままですが、内心は誘われて喜んでいるのでしょう。なんとなくですが、きっと当たっていると思いますわ。
わたくしもとっても嬉しいですわ……純粋にお仲間が増えて、というのと。実はわたくし、こういう謎めいた女の子が大好きなんですの。
よーしっ、帰ったらすぐにMROにダイブしますわよっ! あと、隙あらばモフりたいですわね……なーんて!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます