第5話
ハンバーガーショップでわたくしたちはお話をすることになりましたの。
むいと第2位がお知り合いってだけでも驚きましたのに、なんとこの方わたくしたちと同じクラスの生徒だったんですって。
でも、そりゃ知らねェはずですの。だって、数回しか出席していない不良少女みたいなんですもの。
それにしても世の中って広いようで狭いものですわね……。
「委員長から色々言われてるんだろーけど、余計なお世話なのよねー。学校なんて気が向いたら行く程度だから。別にテストだけ良い点とってりゃいいんでしょ、中学なんて」
シェイクのストローを弄っている第2位に、
「ううん。今日はそのことでミヤカ様に会いに来たんじゃないの。これ、なんだけど」
「?」
眉をひそめたのは第2位だけじゃありません、わたくしもですわ。
むいが差し出した紫色の封筒。その中から同じ色の紙が出てきたのですが……。
『貴女はMusic Rainbow Onlineのβテスターとして選ばれました。おめでとうございます。ぱちぱちぱち』
「な、なんですのこれ」
「な、なによ……これ」
思わずわたくしと第2位が同時に呟き、顔を見合わせていると、
「昨日届いたんだよね……。なんか調べてみたらBEO2の参加者の中から女の子たちだけに送られるみたいなの」
「そういえば昨日あたしの所にも変な封筒が届いてたわね……。青い封筒だから気味が悪くて開けてなかったけど」
わ、わたくしの家には、そのようなものは。
いえ、そうでしたわ!
「わたくしの所にもありましたの! 橙色の封筒が届いてましたわ……でも、お姉様が持っていってしまいましたの」
ただのダイレクトメールかと思っていましたが。まぁ色が違いますし中身も一緒という確証はありませんが。
「でも。同じタイミングで色のついた封筒が届くかしら。歌雨さんとあたしのところにもβテストの招待状を送ったのよ……って、二人ともBEO2やってたの!?」
「い、今更ですわね。わたくしは……まぁちょっと嗜んでおりましたわ。それほどやりこんでいませんでしたけど」
「ふーん……」
うう。『最ッ低』って言われたときのことを思い出して、つい嘘をついてしまいましたわ。
もし、わたくしがウェザー・キングだとバレたらとっても大変なことになりそうなんですもの……。
「じゃああんたも?」
「う、うん。私もちょっとやってみたくなって……えへへ。一ヶ月前に始めたばっかりなんだけど、すぐにサービス終了になっちゃってちょっとガッカリしてたんだ」
落ち込みながらポテトをつまんで言うむいに、
「ついてないわねぇ。ま、正直言ってあたしも驚いたわよ。だって突然なんだもん」
同じBEO2をやっていた仲間意識なのでしょうか、少しだけ第2位の態度が和らぎましたの。
あらまぁ。最初はとっつきにくそうな方だと思ったのですが、結構可愛らしい仕草をするものですわね。
サイドテールをくるくると指で弄る第2位をジーッと見ていると、
「んで。どうするワケ、あんた達」
「どーするって……どうしよう、歌雨ちゃん」
どうするもなにも、わたくしの答えはとっくに決まっておりましたの。
「丁重に辞退させていただきますわ。わたくし、もう二度とVRMMOをプレイするつもりはありませんの」
◇◇◇
「あのときのむい、とても悲しそうな目をしてましたわ……」
湯船に浸かりながらさっきのハンバーガーショップでのやり取りを思い出しましたの。
「でも、やりたくないものはしょうがねェですの」
だって、いくら強くなっても行き着く先はどうせ同じなんですもの。
アイテム収集も終えて、レベルもMAX。そうなったら最後、やることと言えば数少ないエンドコンテンツと週末のPvPトーナメントくらい。そりゃ飽きもくるって話ですの。
そうそう! ギルド運営も思ってたよりずっと気疲れしてしまいましたの。わたくしだけが頑張ってる感が半端なかったですわ……。
結局はみんなキングのおこぼれが欲しかっただけですの……吟味しないで可愛い女の子ばかりホイホイ入れたわたくしもわたくしでしたが。
それにせっかく全サーバートーナメント優勝で貰った神器――サーバインを使える相手すらいませんでしたわ。辞めるにしても一回くらい神器を使う機会が欲しかったのが本音。
まぁ、最後は念願叶って初めてを第2位に捧げましたが……。その瞬間やる気の糸がぷちっと切れたのは確かですの。
「あーあ。最初の頃は楽しく遊んでいましたのに。思えば、一体わたくし何が面白くてBEO2を続けていたのでしょう……。第2位と戦うこと以外、何も思いつきませんの」
ぶくぶくと口だけお湯につけたとき、
「あらあら。まぁたBEO2のことを考えちゃって。今日の二十三時にサービス終了なんでしょぉ~?」
脱衣所からお姉様の声がしてきましたの。
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