第5話 白い疑惑
「ねえ、ルカ。あなたとネスィア先生ってどういう関係なの?」
ミリアの質問に、ルカは言葉を失う。
驚きの極致だった。まさか、彼と自分の関係に気付かれるとは。
「ネスィア先生にルカと上手くやってくれって言われたの。変よね? ただの生徒の一人なら、あえてそんなこと言うこともないじゃない?」
ルカは心の中で舌打ちする。
(あの馬鹿……。余計なことを言ってくれた……)
しかし、ミリアの様子からすると、ルカ自身とネスィアの態度で関係性に気付いたわけではないらしい。
言葉だけならなんとかごまかせる。ルカはそう思った。
「大した仲じゃない。叔父と姪って関係なだけ。それ以上の関係は特に何もない」
ミリアはそれを聞いてもまだ納得はいっていないようだったが、ルカはそれ以上の追及をさせない雰囲気を出した。
「そっか……。ねえ、それって、ネスィア先生って相当良い人ってことじゃない?」
ルカは首を傾げた。いったい何を考えたらそうなるのか、彼女には理解できなかった。
「よくわからない……。どうして?」
「だって、ネスィア先生ってクラスの担任ってわけじゃないでしょ? 私たちは青魔法しか教わってないんだよ? しかも、まだこの学校に来たばっかりだし……。それなのに、一生徒でしかない私と、姪のルカが寮で同室だってことを知ってる。それってネスィア先生が相当私たちのこと考えてくれてるってことだよ」
ミリアの論理は筋が通っているようにルカには思えた。
しかし、ルカは知っていた。ネスィアはそんな生徒思いの教師というわけではないことを。ルカとミリアをよく知っているのも、教師としての勤めから来るものではないことを。
だが、口には出さなかった。
それこそ、ミリアに知られてはならない事情がそこにはあるのだ。
「あー! なんかネスィア先生のこと、良いかもって思えてきちゃったなー」
クッションを抱えながらミリアはベッドにダイブした。
顔をクッションにうずめて、ミリアは嬉しそうに笑う。
寮の二人部屋にはベッドは二つ。
おかげでお互い狭いスペースで生活しなければならないが、ルカもミリアもそれには慣れてきていた。
(良いかも……か。まあ教師としてってことだろうけど……。あいつが聞いたら……。ううん、聞かせたくないな)
ルカは複雑な思いを抱えながらも、何も言わずに魔導書に向き合った。
やがて、ミリアのかすかな寝息が聞こえてくると、いっそう集中して勉強に打ち込むのだった。
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