第33話『いやね、自分と同じ故郷から来た人見て嬉しくなっちゃたんですよ』
ベルゼルガは紅鎧城の正門で、青い鎧を着た西洋甲冑の集団を押しとどめていた。
いずれもレベル70以下の連中は一人もいなかった。
つい先ほども90越えのを一人始末したところだ。
カウンターバッシュがタイミングよく決まらなければ。
相手の攻撃を無効化できる正面30度から斬りつけてこなければ即死していたのは間違いなく自分であっただろう。
獅子奮迅の活躍を続けるベルゼルガを警戒し、青い鎧を着た西洋甲冑の集団は正門から離れ、距離を取り始める。
「よし、いける!いけるぞっ!!弓矢を持った連中や魔法を使ってくる相手もいるが、全部攻撃は正面からだ。飛んでくる方向に合わせて30度以内に収まるように向きを変えて防御し続ければ・・・」
『ハハハハハハハハハハ!!!!やるじゃないっルーキー!!!!』
右側面からやたらと軽快な声が聞こえてきた。
そして、同じく右わき腹に激しい痛み。
33万ポイントのダメージと共に、べルゼルガは大きく左方向へと吹き飛ばされた。
城壁と城内の間に存在する芝生を転がりながらも10万ライフポーションを飲んだ。
「くそっ。最大HPが大き過ぎるのも考えものか。回復量が追い付かない!!」
ポーション類は一度使用すると30秒は再使用が不可能なのだ。そういう風に運営が『設定』している。ゲームがサービス開始された当時かららしい。
本来は複数の僧侶に回復魔法をかけてもらえば盾役として攻撃され続けても決して死ぬことはないと、先輩方から聞いた。
だが、今ベルゼルガは独りで戦っている。
バッグの中身の傷薬が唯一の命綱であり、その回復量を越える攻撃を受けた段階で彼の致命傷は、敗北は確定する。
ベルゼルガを蹴り飛ばしたのは蒼い全身甲冑を着た男だった。
肩には首輪のついた鳥の紋章。
両手にボウガンを持っている。
『あんたらも俺達の国から来たわけ?同業者ってことだねー。まっ、あと5分くらいのお付き合いになるだろうけど、よろしくー』
軽薄な口調で殺人予告をする甲冑の男。
「同じ国?まさかお前も・・・?」
『いやね。俺達傭兵やってんだけどさ。給料いいんだよなぁ。この西梁って国は。だから悪いけど。あんたら全員死んでくれるかな?』
言われて、ベルゼルガにはなんとなく思いついた事があった。
「そうか!裏切者がいたのか!俺達を裏切って、こちら(異世界)側についた連中が・・・!」
『そうそう。俺も思いついちゃった事があるんだけどさ』
「な、なんだ?」
『お前さんのさっきからの戦い方みてたんだよ?で、部下の攻撃、ほぼ完璧に防いでただろ?
でも、今の俺の蹴り、防げなかったよな?』
「それがどうかしたのか?」
『お前、正面からの攻撃は無効化できても、後ろからは無理なんだろ?』
蒼い甲冑を着た男はベルゼルガの顔面目がけてボウガンを撃ちこむ。当然ながらそれは無効化される。
『これがこいつの『チート能力』とかいうやつだから、おめえら。やっちまえ』
蒼い甲冑を着た男は、可愛い部下達に命令した。
大勢の青い鎧を着た兵士が、あるいは蒼い服を着た魔術師が、紅鎧城の外壁を乗り越えてベルゼルガの背後から襲い掛かる。
「馬鹿なぁ!!なぜあの壁を越えることができるっ!!!越えると魔術で吹き飛ぶはずだっ!!」
『別にいいじゃん。お前ここで死ぬんだから』
蒼い甲冑着た兵士達。首輪鴉の傭兵団は、鄭国に金で雇われている。
彼らは、この国を護れと命じられている。
滅びたら報酬を払ってくれる相手がいなくなってしまう。
彼らはただ報酬の為に働くのみ。
そこにこの国の玉座を奪おうなどという大それた欲望などない。
「くっそおおおおおおおおお!!!!」
背後から襲い来る蒼い兵士達を大振りの回転切りで薙ぎ払う。
ほぼ無傷で正門を護り続けていたベルゼルガは、次第にかすり傷と、多大なスタミナの消費をしていった。
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