第25話天主教徒とは、なんたる超人集団であろうか!!

「どうしてあんなことをした!言えっ!!」


 若いのに杖をついた天主教国風の青年は、乳房と股間を僅かに隠すだけの肌着の上に外套を着た若い女に前歯をへし折らんばかりに掴みかかっていた。


「うっせーな。あれが一番効率いいって俺は思ったんだよ。文句あっか?」


「先遣隊と本隊。八千人を越す仲間が全員集合してから総攻撃を開始する。その方が勝率も高くなるし『戦死者』も少なくなるはずだ。違うかっ?!」


「そ、そうだよっ。彼の言うとおりだ。みんなで一斉に戦った方が楽に勝てそうじゃないか?」


 屈強な戦士もその意見に同意した。


「せーよ。お前いつからオレラのリーダーになったんだよ?」


「・・・ぐっ!」


 確かにその通りである。彼はこの西梁国に来て、「こうしたらよいのではないか?」「こうすべきではないか?」と皆にアドヴァイスしているだけだ。それを裏付けるだけの実力はない。

 仮にこの場にいる人間全員が彼の事を指さすだけで彼の状態(ステータス)そのすべてを把握することができるのならば、単純に筋力や生命力ならば屈強な戦士の方が。そして魔力に関しては天主教国風の女魔術師の方が高いことがわかるであろう。


「けっ。対した実力もねぇくせにデカい面しやがって。そもそもモンスター討伐数だって俺の方がてめぇの百倍は倒しているぜ!!」


「それは俺が支援系魔法の取得にスキルを全振りしているからだ!パーティでは経験値は得られても直接討伐数はカウントされない事の方が多いんだ!!」


 驚いた!なんとこの天主教国の女魔術師は他人の過去を伺い知る事ができるのだ!!


「そもそもなんでインフェリオフィティスパークなんて撃ちこみやがったんだ!!」


 インフェリオフィティスパークとは術者の全魔力を放出する比類なき攻撃魔法だ。彼らの間では「核兵器より強力だ」と言われている。

 核兵器とは何であろうか?そんなものこの央原の地にはない。ただ、彼らの間では「レベル100の人間500人をまとめて薙ぎ払えるぜ」と言われている。よくわからないが、とにかく強力な魔法だったのだろう。

 だが、その強力なはずな魔法は、ローランとかいう街を取り囲む街壁にぶつかる寸前できれいさっぱり、消失してしまったようだ。


「しかたねぇだろう。壁向こうにいっぱいターゲットできたから、壁ごと吹き飛ばせば手間が省けると思ってとりあえずぶっぱなしただけだぜ?まぁ地形で無効化されるとは思わなかったけどな」


 女性だというわりには随分乱暴な言葉遣いをする。まるで『中身が男性』のようだ。


「とりあえず、で済む問題じゃないぞっ!!街の連中に気づかれてしまったじゃないかっ!!!」


 そう。今は夜明け前。時刻は『03:47』。彼らにはどういうわけか、正確な時間を把握することができた。

 街壁の上には多数の松明らしき明りが灯り始め、敵襲を知らせる鐘もなったようだ。もはや奇襲攻撃など不可能だろう。


「けっ。仲間全員で攻撃だぁ?この場には六千人も集まってねぇよ。よそに逃げた連中もいるし。おっ。ひなびた田舎村の襲撃をしている連中がいるな。人間が住んでいる村だから食料もたんまりありそうだぜ。俺も最初からそっちに行けばよかったな」


 なんと!この天主教国の女術師はこの場にいる人間の数が正確に把握できるのだ!それだけでなく遠くの仲間がどこで何をしているのかもわかるらしい!千里眼の術を習得しているとでもいうのか!!

 きっとこの世界に生きるすべての人間に狙いを定め、魔術の矢を放ち、人間だけを選んで皆殺しにするような、そんな器用な真似ができるに違いない!!


「ともかく、街壁を魔法で破壊できない以上、素直に正門から突破するしかない」


「へっ。魔法使いと思ったらトンだ脳筋野郎だな」


「壁壁壁門壁壁壁



    ↑

    鎧

    魔

   他僧他


 こういう風に陣形を組んで、突撃するんだ」


「なんだこれ?」


 屈強な戦士は尋ねる。


「メッセージウィンドウを弄ってる奴がいるかもしれないけど、この表記の仕方なら多分全員理解できるだろう。」


 若いのに杖をついた天主教国の若者は屈強な戦士に教えた。

 それは、反抗的な女術師も含め、その場にいた全員。いや、西梁国に来ているすべての天主教国風の装束を身にまとった者達にほぼ同時に伝わった。


「決行は5:00。時間に間に合わなかったものは攻略戦に参加しないと判断する。以前に話した通りその後の行動は自由だ。参加者もそうでない者もこの世界で生き残れるよう

最大限努力しろ」


 ところで、メッセージウィンドウ、というのは何かの法術であろうか?まるでわからない。

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