▶③

 廊下に恒の姿はなかった。代わりにいたのはこの間の武士たちだった。見たところまたもや友好的な態度ではないのは明らかだった。私が進もうとすると邪魔してきた。

 間に合えと思った。

 妹なんているはずがなかったのに。何を見て何を信じてきたんだか。分からないけど翼は現実を知らせてくれる。聞けば答えてくれる。私はとんでもない勘違いをしていたのだと気づかせてくれた。

 未知道乃家は一人っ子のはずだ。

 妹なんているはずがない。もしあの少女が本当に神様で、私が思っている通りこの世界の創造主兼支配者だとしたら。

 ああ。刀を受けとった時に分かっていれば。武士と戦った時の高揚感はアドレナリンなんかじゃない。今私の中に流れ込んできているものと同じもの。

 私に干渉しているんだ。

 長い廊下だった。同じ階の角を曲がってすぐ近くの部屋だったはずなのに四○六号室はまだ見えない。立ち塞ごうとする武士はどこにでもいた。途切れながらも続くものは息と幸せだけで十分だ。敵はいらない。私は急いでいながらも、残すとそれが原因で崩れそうな気がしてまじめに切った。アドレナリンを完全に切って自分の力で微かなイメージだけを追い求めてまじめに目の前を切った。

 恒が、彼が望むものはただ一つ。異世界に結界を張って私を現実へ飛ばしたことだけ。

 重力にも反重力にも従わずに飛翔んで駆けたらきらめいた。

 

 このままじゃ恒が消えていなくなっちゃう。

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