【みー2】 思い出を一欠片ポケットに忍ばせればさよならできるか
▶①
「てらはみとめないのです。そんなことがあっていいわけがない。そんなことをしたらこうが、くつがたこうはもどってももどれなくなるんだよ。それでもいいの」
「愚問だな。神にしては雑な別れの挨拶じゃないか。グッドモーニングとあいさつしたいのならば遠回しにせずに略さずに直接言ってくれ。朝の挨拶にしてはまだ夜明けには早すぎる気がするがな」
「おぬしはいったい……」
「すべてを理解したうえでここまで進めてきた。覚悟を決めてここまで来た。悪いがもう神はお前じゃない。照はどうがんばっても抗うこともできない……悪いな。俺の身勝手なやり口で幕を下ろすことになって。でもまぁ、神様っていつも勝手で気まぐれでわがままなものだろう?」
あきらめて覚悟を決めた小さな少女に涙を流しながら俺は刃物を立てた。完全に完璧に狙えばいい場所が示された場所をその通りに道しるべ通りに。
▶▶▶
戻ってきた彼女は白い布を被せられ、変わらずに変わり果てた友人たちとその彼氏と少女を見て膝を折った。きれいにまっすぐに音を立てて崩れた。
「なんで、どうして……。恒が、恒が、やったの……?」
絶望する顔は見てられなかった。胸が痛んでまたすぐに泣きそうだったから顔じゃなくて目を見た。その眼はどこかに希望を持っていて俺に縋っていた。夢だ。現実じゃない夢だ、と。
だから俺はこれからこれを夢にするんだ。
「先輩、さすがです。ご明察です。すべて先輩が考えている通りです。俺がこのホテルにいるみんなを殺しました。人間ではなくなってしまった人間ではない俺がやりました」
俺はこの世界唯一の一人の少女が泣き止むのを静かに見守った。
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