第45話
「先生!」ルイスたちは絶叫した。くるくる回りながらぼろきれの様に宙に舞い上げられた先生の体が、次の瞬間地面にたたきつけられる。
「この野郎!」激高したデイビスが長剣を振り回しながら戦獣猪に向かってゆく。
「待て!デイビス!」ルイスの声にも
「うるさい!止めるな!」耳を貸そうともしない。猪に向かって剣を振り上げ、斬り下ろした!
だが、さっきと違い、今度は冷静なのは戦獣猪の方だった。
デイビスの剣を軽々とかわし、岩棚の上に飛び乗り、狼狽する人間たちを見下ろして、巨大な戦獣猪はしゃべった。「おかしら、つぶした。おまえら、おしまい」
「先生が長だと見抜いて、攻撃したっていうの?」カチェリ
「なんて奴だ!獣のくせに!」ウォルフ
倒れたウィラーフッド教官は動かない。周囲に赤黒いしみが広がっていく。
「てっ手当てしないと!」療術師ゲルダが這いずるように近づこうとする。
彼女も骨折したけが人なのだが、今はそれ以上に先生が心配だった。
しかし、その間に戦獣猪が割り込んだ。唸り声をあげ、蹄を蹴立てて威嚇する。
「この野郎!先生に近づけさせないつもりか!」デイビス
「私たちが傷ついた仲間を見捨てない性質を知っているのよ!」ゲルダ
「なんて奴だ、獣のくせに!」ウォルフ
ルイスはセレクに小声で話しかけた。「このままじゃみんなバラバラだ。セレク、君が指揮をとれ。」
セレクは狼狽した「えっ、そ、そんな。私なんか・・・ここはルイス先輩が」
ルイスは首を振った「デイビスもウォルフもゲルダも俺のいう事なんか聞かないよ。
彼らが信頼しているのは君だ。俺じゃない」
「俺とカチェリで奴を引き離す。その間に先生を助けるんだ。君ならできる!」
「そ、そんな、無理です。わたし・・・」下を向いたセレクに
「なぁに?自信ないのぉ?"飛び級"だとか"逸材"だって聞いたけど」
張りのある胸をつんとそらした赤毛が、見下ろすように言う。
「たいしたこと、ないんじゃん」
セレクの眉間に皺が寄る。今度ははっきりとカチェリを睨みつけ「やれますっ!」言うや
短刀と盾を構え走り出した。
「デイビス!いったん退いて! ウォルフ!幻界かけて!ゲルダは治療の準備を!」
矢継ぎ早に指示を出し、皆もそれに従う。”セレクの組”は一つの生き物のように動き出した。
それを眺めながらルイスは眉をひそめてカチェリをとがめた。
「・・・君らしくないな。年下の女の子を挑発するなんて」
みるみるカチェリの頬が紅潮する。久々の”怒りの印”だ。
「らしくない?あたしらしいって何よ?あんたが私の何を知ってるっていうわけ?ていうかこのあたしにお説教とはまたずいぶんと偉くなったものね!
”グズでとんまのフェイラー”のくせに!」呪詛のキツツキがルイスを蜂の巣にし
「ごごごごめん」とりあえず謝る。この感じ。なんだか懐かしい。
ふくれっつらのカチェリはぷいと横を向き、そして言った「意外だったわ」。
「???」
「けっこうモテんのね あんた」
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