ムズガルド帝国編7

ヨサクは少し落ち着きを取り戻しさっきの話を続けた


ダルトは卑劣にも自分が逃げるために孫同様に可愛がっていたしかも瀕死状態ののヨサクを

バージェットに向けて投げつける

「子ども!?」

バージェットは少年と知りとっさに斬るのをやめた

そしてヨサクを抱き止めたのだった

そして言った

「こんな幼い子どもまで…!」

バージェットは辛そうだった

しかしヨサクは何故バージェットがこんな辛そうな顔をしているのか分からない

そしてバージェットがある事に気づく

「これは…!?」

ヨサクの深い傷に気がついたのだ

「お、俺がやっちまったのか!?」

ヨサクはコクりとうなずく

「くっ……」

「すまねえ…!」

そう悔いいるようにバージェットはヨサクを抱きしめる


ヨサクは何故バージェットが敵であるはずの自分のことをこんなに心配しているのか全く理解できなかった

今まで全ては殺すためだけに育てられてきた

感情など無用…!

そう教え込まれ今まで生きてきた

だから分からなかった

バージェットの思いを…


そしてヨサクは意識が朦朧としてきている事に気づく

血を流しすぎたのだ

身体が凄く寒い

そして凄く眠かった

目を閉じそうになる

しかしかすかに声が聞こえた

「おい…!?」

「しっかりしろ!!!」

「こんなところで死ぬんじゃねえ!!」

バージェットの声だった

それからしばらくして悲痛な声が聞こえる

「また俺のせいで人が死んぢまうのか!?」

「うぅ…」

「すまん…」

バージェットは泣き崩れていた

しかもそれは過去の誰かに懺悔するようでもあった

そして自分を激しく責めてる風でもあった

するとヨサクから意外な言葉が言葉がでてくる


ヨサクはそっと泣き崩れるバージェットの顔を両手で添え

まっすぐバージェットの目を見つめ言った


「だい…じょう…ぶ…だ…から…」


自分が何でそんな言葉を言ったのかは分からない

しかしそれはヨサクの精一杯の声だった


バージェットは一瞬嬉しそうな顔をしそして再び励ます

「絶対死ぬんじゃねえぞ!!」

「う…ん…」

もうそこには暗殺者の顔ではない…

普通の少年の顔があった



するとある声がしてきた

「だはははははは!」

ダルトだった

ダルトは逃げきれると判断したのだろう

遠くから子分数人を引き連れヨサクに言った

「ヨサク!!」

「最後には役に立つじゃねえか」

「死んだら線香一本くらいあげてやるぜ」

「今までご苦労だったな」

「はははははははは!!」

「はははははは」

「はははははは」

そうドスの聞いた声でダルトは子分たちと高笑いをし視界から消えて行く…


ヨサクは思った

そうそれは日常の光景なのだ

使えなくなったら容赦なく切り捨てられる

当たり前だった

使えなくなった者には何の価値もない

それがこの世界の全てだと思っていた


しかしこの男は…

ヨサクはバージェットの横顔をふと見上げる

「や…っ…ろ…お…お…ぅ…!!!」

バージェットはダルトに対し怒りに震えていた

しかしヨサクを抱きしめるその腕ははガリガリで折れてしまいそうだったが、

とても温かくそして力強かった


ヨサクは思った

一体この男はなんなんだろう…

何でこんな俺のことを心配してくれるんだろう

それに何でこんなにあったかいんだろう

何でこんなにあったかい気持ちになるんだろう


それからヨサクは本当に眠りそうになる


「おい!?」

「しっかりしろ!?」

バージェットは慌てる

しかしヨサクは言った


「だい…じょ…う…ぶ…言…っ…た…」


バージェットは言った

「ああ…!」

「約束だぞ…!」

「絶対…」

「絶対死なせねえからな!!」

「う…ん…」

ヨサクは不思議な感覚に包まれていた

何故だかは分からないがこの男なら自分を救ってくれる…

そんな気がしたのだ

それからヨサクは静かに目を閉じた



そしヨサクは言った

「後から聞いた話しすけど自分は10日間ほど眠り続けてたそうです」

「アニキがあちこち駆けずり回って医草を集めてくれたそうです」

「そして俺は目を覚ますと目の前にある子どもが立っていました」

「その子どもは少女す」

辺りはもう完全に暗く焚き火がその幼い少女を照らす

「そしてその少女はとても冷たい眼をしていました」

「自分とは違う冷たい眼」

「そうこの冷たい眼は自分は知っている…」

「それは絶望を経験した者の眼でした」

「その絶望の眼は今までジェルチェやダルトたちと共にいてもう何百人と見てきています」

「そしてその少女はとある集落のただ一人の生き残りなのだと言います」

「そうあの集落す」

ふとヨサクはバージェットがいるであろう闇空を見上げる


そして言った

「それ以上その少女は何も語ろうとしません」

「気づくとアニキは起きてました」

「アニキは言います」

「その少女はとある場所から必死に助けを求めていたそうです」

「そしてその少女を助けたと言います」

「その下は凄惨たる光景が広がっていた…」

「その場所とは井戸でした」

「そしてその少女は…」

「今も俺たちと旅をしています」


「まさ…か…!?」

ワタルは声をあげる


「そうその少女とは…」

「ジェニ-っす」

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