実験室編48

半年後…

凄い衝撃音が聞こえてくる

そしてある声がしてきた

「黒の衝撃!」

大きな黒の魔法が放たれる

しかしそれに対抗するように声が聞こえてくる

「火の雷鳴!」

「風の雄叫び!」

その二つの魔法は合わさって黒の魔法にぶつかる

バ-ン!と衝撃音とともに煙幕が上がる

声がしてきた

「くそっやっぱり勝てないか」

「やっぱりバーバラさんは強いなぁ」

「とっておきだったんだけどな」

二人は笑いあう

ワタルとツバサだった

そしてまた声がしてくる

「私にこの魔法を使わせるとはなかなかやるじゃないかい」

バーバラだった

そして言った

「うん、そうだね」

「合格だ」

「それじゃ、そろそろ次のステップへ…」

「それって…」

その言葉を待ってたかのように二人は顔を見合わせる

バーバラは言った

「ああ剣と魔法の組合わせの修業の開始だよ」

「よっしゃああああ--!!」

「やったぁああああ--!!」

二人は抱き合い喜びの声を爆発させる

その二人をバーバラはため息をつきながら

仕方のない子達だねという表情で見守っていた

この約半年間魔法に専念させるためバーバラは

ワタルたちに剣を持つことを一切禁じた

ワタルたちは剣とともに育ってきた

だから剣を持ちたくてうずうずしていたのだろう

ワタルたちは剣を持てることに心が踊っていた


そしてあることを決意した表情でワタルはバーバラに言った

そのワタルの表情にバーバラは何かを察する

「バーバラ…」

「この半年間ずっと考えていたことがある」

「一回みんなと集まって話がしたいんだ…」

「お願いします」

そうワタルは頭を下げた

分かった…そう一言だけバーバラは言い何も聞かなかった

それからバーバラはフロ-ラルの所へ一足先に出かけると言った

集合場所は入り口でという言葉を残しフロ-ラル様の元へバーバラは飛んで行った

ツバサは心配そうな顔をする

向こうで話すよと言うと分かったっと答えた

それから俺たちは急いで入り口の方へと向かう

バージェットやミネア、マ-ニャとは半年ぶりの再会だ…

自然と気持ちが高ぶってくる

「みんな元気にしてるかな」

ツバサは走りながら言った

俺は答える

「元気にしてるだろ」

「特にバージェットは…」

ツバサはふふっと笑いうなずいた

「迷惑かけてなきゃいいけど…」

二人はバージェットのことを考える

「僕アルバイトぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお----ーーー!!!」

俺たちはそっと考えるのをやめた


「まぁ元気にやってるさ(汗)」

「うんそうだね(汗)!」

二人は急いで集合場所へと向かう

そして着いたときにはみんな集まっていたようだった

「久し振りじゃねえか!」

バージェットがいた

「久しぶりだね!」

ミネアもいる

「お久し振りです」

マ-ニャもいる

そして…

「お久し振りですね」

フロ-ラル様がいた

「ワタル元気にしてたか!」

「まぁな」

そして俺たちいろんな再会の言葉を話し

5人は抱き合いながら再会を喜んだ


フロ-ラル様は言った

「ワタル…みんなに話したいことがあると…」

みんな真剣な顔になる

そう俺はこのことを言うために修業を中断してまで

みんなに集まってもらったのだった


俺は言う

「みんな…修業を途中でやめてまで集まってもらって悪かった」

そして本題を切り出す

みんなワタルのことをまっすぐ見る

「初めの話では元いた世界では2ヶ月…

ここでは20ヶ月の話だったと思う」

「でもここでの修業はあと半年にしたいんだ」

「!?」

みんな驚く

「あとここでの修業を半年にすることで20ヶ月-12ヶ月(半年+半年)=8ヶ月」

「8ヶ月分浮くことになる」

「つまり元に戻った世界では約1ヶ月分浮くことになる計算になる」

「この半年間この先のことを考えに考えて

この1ヶ月でどうしてもやっておかないといけないことができた」

フロ-ラル様は言った

「つまりそのためにあと半年で修業を終わらせたいと?」

「そうです」

俺は答える

そして言った

「その行き先は…」

みんなが見守る

「俺たちの国」

「ゴブリン公国…いやムズガルド帝国だ」

「!?」

みんな一斉に驚く

特にツバサ、バージェット、ミネア、マ-ニャの4人は驚きの表情を浮かべていた

それもそのはず…

みんなてっきりそのままドクターベルケルがいるであろうあの地へ行くと思っていたからだ

バーバラは確認するように言った

「そのムズガルド帝国でどうしてもやらなきゃいけないことがあるんだね?」

俺は答える

「そうだ」

そしてフロ-ラル様は言った

「分かりました」

俺は何とか修業を早く終わらせてもらう承諾をえる

「すいません」

「何言ってんだい」

「どうしてもやらなきゃいけないことがあるんだろ?」

「私たちがどうこうできるわけないわさ」

「なぁフロ-ラル?」

「ええ」

「ありがとうございます」

俺は二人に頭を下げた


そしてバーバラは言った

「今日はせっかくみんな集まったんだ」

「たまには息抜きも必要さ」

「お前たちはここで1日ゆっくりしておいで」

「私たち二人はちょっと用事があるから元の世界に戻ることにするよ」

「用事?」

「ちょっと気になることがあってね」

「そうですね」

それからじゃあねと言い残し二人は元の世界へと戻っていった


そして二人を見送るとみんな厳しい視線を感じる

どういうことなんだ?ということだろう

そして特にツバサやバージェットは憤慨していた

「ワタル見損なったよ!」

「お前はみんなのことより

そんなに死ぬ前に村のみんなの敵討ちでキングを倒したいのか!!」

「ここでもっと修業して少しでも負けないように力を得るなりやるべきことがあるだろう!!」

俺は言った

「違うんだ」

「だから何がちが…!」

「聞いてくれ!!」

二人は静かになる

「もちろんキングは憎いさ」

「でも俺がムズガルド帝国へ行く理由はそんな個人的な恨みじゃない」

「じゅあ何で…」

ツバサは聞いてくる

「この半年間ずっと考えてたんだ」

「このままドクターベルケルがいるあの地へ俺たちが行こうとしても途中で必ず見つかる」

「それにいくら俺たちが修業したところでまだまだ弱い…」

「そんな甘いもんじゃないことくらい分かってるさ」

「それに、もし奇跡的にあの地へ行けたとしても俺たちは目立ちすぎる」

「必ず見つかって拷問されるだろう」

「最悪良くて一生奴隷」

「それ以外は死だ…」

「だから考えたんだ」

「何事もなくあの地へ潜りこめる方法を…!!」

「!?」

みんな驚いている

まさかそんな方法があるとは夢にも思わなかったのだろう

「そんな方法があるのか…?」

「ある」

俺は言いきる

そして言った

「ツバサ…初めに俺たちの村をブラックゴブリンが襲ったのは何のためだ?」

ツバサは答える

「えっそれは戦争のため僕たちを徴兵するために…」

俺は続けてツバサに聞いた

「それじゃあ仮に俺たちが徴兵されたとしてまずどこに移動させられたと思う?」

「そりゃムズガルド帝国に…」

「あ゛っ…!?」

その時みんな気づいたようだった

驚愕の表情を浮かべる

みんな俺が一体何を考えているのか察したようだった

バージェットは言った

「そうか…!!」

「俺たちがそのままあの地へ行っても確実に捕まる…」

「だからムズガルド帝国へ潜入し…」

「偽装して徴兵された兵としてあの地へ向かうってわけか!!!」

俺は答える

「ああ、その通りだ」

「ははは!…やるじゃねえかぁ!!」

「うん凄いよ!!」

二人は喜びの表情をあげる

「まぁ理想としてはキングに直接謁見して協力してもらうことが…」

「それは難しいと思うぞ」

バージェットは真顔で言う

「ワタルには悪いがあいつらがホワイトゴブリンの言うことなんか信じるはずがねえ」

「それにキングに謁見するのも無理だろう」

「精鋭たちが守りを固めてやがるからな」

「あいつらはつええぞ」

俺は言った

「ずいぶん詳しいんだな」

バージェットは答える

「ああ、ちょっと昔城に盗みに入ったことがあってだな…」

「………」

「………」

俺たちはそれ以上何も突っ込まなかった

でもムズガルド帝国に詳しい仲間のバージェットがいるのは頼もしい…そう思った

俺はみんなにムズガルド帝国に行く理由を説明することができた


そしてもう一つ決意していたことを実行にうつすことにする

俺はミネアとマ-ニャの前へと行く

そして二人はいきなり俺が決意した表情でいきなり目の前にきて戸惑っていた

「えっ?」

「ちょっ…ちょっと何?」

辺りは夕暮れになっていた

その夕暮れの光が二人を美しく写す

俺は言った

「言うべきかずっと迷ってた」

「でも言おうと思う」

「ミネア…マ-ニャ…」

ワタルは気持ちを込めて言う

「俺たちの仲間になってくれないか?」

そう言った瞬間…!

二人はみるみる涙を滲ませ嬉しそうな顔をする

「え゛っ…」

「あっイヤだ…」

二人に自然と涙が流れてくる

本当にうれしそうにしていた

その言葉を待ちわびていたかのように…

ツバサとバージェットは微笑んでいた


しかしその直後二人はとても申しわけなさそうな顔がする

そしてうつ向きながら言った

「せっかくの誘いなんだけど…」

「ご…め…ん…な…さい」

マ-ニャも言う

「私たち…も…ここで…どうしても…やらなきゃ…いけ…な…い…こと…が…あっ…て…」

「ごめんなさい」

二人は必死に俺に頭を下げた

恐る恐る二人は俺の表情を見る

「そっか…なら仕方ないな」

そう俺は笑顔で笑った

しかし二人はそれでも申しわけなさそうにしていた


俺は思うんだ

この先あの地で俺たちには死が待ってるだろう

だからこの二人には笑顔でいて欲しい…

このまま生き抜いてほしいって…そう思ったんだ

だからこれで良かったのかもしれない

二人が…

そしてバーバラやフロ-ラル様…

そしてここにいるみんなが無事に生きていてくれれば…

それが生きてるってことなんだから

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