実験室編21

俺たちはハイデルを見つめた

するとハイデルは言った

「あれあれ-?」

「喧嘩してたと思ってたら

もう仲直りしちゃったんですか?」

「つまらないですね」

「せっかく待っててあげたのに…」

するとハイデルは俺たちを見て驚いたように声をあげた

「そういえば…あなた方2人は…」

「あっ…!」

「思い出しましたよ!」

「ワタルと一緒にいたお二人ですね」

「しかし…」

すると突然ハイデルは口に手を当て笑いだした

「くくく…はははは」

「はははははは」

「どんな援軍かと思えばあなた方たった二人だけですか」

「私に一発であの森でワタルと一緒に

倒されたの覚えていますか?」

「あなた方二人が加わった所で何ができるというんですか」

「みなさん自信満々の顔しちゃって…」

「くくく…」

「まぁいいでしょう」

「せっかくここまでたどり着いた

ご褒美と言ってはなんですが

少しだけ遊んであげましょう」

少しハイデルに殺気が隠るのを感じた

一斉にみんな武器を構える

するとマ-ニャが何か気づいたようで叫びだした

「みんなは…!?」

そう言うとキっとハイデルを睨み言った

「ハイデル!」

「みんなはどうしたの!?」

そう言われハッとなりあたりを見回すと

いつの間にか生首となったみんなは消えていた

するとハイデルは答える

「ほっほっほっ」

「な-に心配しなくて結構ですよ」

「大事なコレクションなので

あなたたちと戦ってる間に移しましたよ」

「安全な場所へとね…」

するとマ-ニャは言った

「コレクションだと…」

「みんなは自分たちがどんな目にあうのか分かってるのに

私を命をかけて救いだしてくれた…」

「どんなひどい拷問が待ち受けているのか分かってるのに゛…」

マ-ニャが悲痛な声をあげる

またハイデルの方へ突っ込んで行こうとするが

ミネアが手をかざし止める

また同じことを繰り返すつもり?

今はお願いだから…耐えて…

そういう思いがひしひしと伝わってきた

マ-ニャは何とか自分をグっと抑え我慢したようだった

そして唇を噛み締め下を向いた

するとミネアはマ-ニャの頭を一回なで

それから俺たちに言った

「みんな聞いて…」

「あいつの魔力は膨大…」

「今のみんなの持てる力全て尽くして

あいつにかかっていっても敵わない…」

するとツバサは言った

「じゃあどうすれば!?」

ミネアはマ-ニャの手を握り言った

「私とマ-ニャがあいつの魔力を抑える」

「その間にみんなはあいつを…いやハイデルを…」

えっ?とした表情でマ-ニャはミネアを見る

「そんなこと可能なのか?」

「可能云々じゃないわ」

「やらないと確実にハイデルに殺される…」

「私たち全員死ぬのよ」

みんなに動揺が広がった

しかしそれを見透かしたようにミネアは言った

「それに希望がないわけじゃない…」

「!?」

みんながミネアを注目する

「白魔女のみに伝わる必殺魔力相殺魔法…デッドサイレント」

「何かいやな響きだな…」

「魔女や魔道師にとって魔力とは命そのもの」

「それを失わせることができる…」

「まさに死の沈黙ってわけか…」

「ああ」

「ただ相手の魔力を失わせるだけじゃない…」

「使った術者も魔力が失われるんだ…」

「!?」

「白魔女が黒魔女に対して

人数的に圧倒的に不利な状況の中

考え出された魔法さ」

「魔力さえ失われれば何とか魔力以外の自分の力だけで

森に紛れ逃げ切ることができる」

「その肉体的な鍛練もきちんとしてある」

伊達に黒魔女と渡りあっていただけではない…

さすが白魔女だなと俺は感心した

そしてミネアは話を続ける

「ただ自分より魔力が上の相手には効果がない」

「それならどうやって…」

俺は嫌な予感がした

そしてある事に気づく

「はっ…まさか!?」

するとミネアは俺の考えていることを

察したようですぐに答えた

そして少し苦笑いしながら言った

「ふっ…浄魔の儀式みたいな

命に関わることではないから安心して」

俺はその答えを聞いて安心した

一度マ-ニャはあれで死の境をさ迷った…

緊急事態とはいえ命に関わることはやめて欲しかった

もう誰も失いたくない

もう誰も…

しかし当然の疑問がふつふつと沸いてくる

「それなら…」

みんな疑問に思っていたのを

見越してミネアは答えた

「鍵はマ-ニャにあると思うの」

するとマ-ニャは一瞬びっくりした表情になる

「えっ…私!?」

そしてミネアは言った

「そう…マ-ニャの力よ」

マ-ニャは困惑した表情を見せる

「私はデッドサイレントなんて知らないしお姉ちゃんのほう…」

俺はマ-ニャが言い終わる前に間に入って質問した

「ちょっと待ってくれ」

「マ-ニャは確かにトレアとの戦いで強くなった…」

「でもさっきはっきりと言ったじゃないか」

「今の持てる力ならみんなまとめてかかっていっても

殺されるだけだって…」

するとミネアはその質問を想定していたようで答える

「そう…今の持てる力ならね」

「?」

みんなの疑問を遮るかのようにミネアは話を続ける

そしてマ-ニャの肩に手を置き言った

「でもマ-ニャは違う」

「無限の力を内に秘めてる」

「でも、それをいきなり今引き出すのは無理…」

「それくらい私に分かってるわ」

「でも唯一マ-ニャはハイデルに対抗できる力がある…」

「私はそう思ってる」

俺は考えた

ハイデルに対抗できる力ってなんだ…

さっきも言った通りマ-ニャは確かに強くなった

だがそれでもハイデルには敵わない

するとミネアは言った

「さっきの森での戦いを思い出して…」

「いやだから確かにマ-ニャは強く…」

そう俺が言いかけたのを遮るように言った

「うんうんそうじゃない」

「もっと思い出して」

「マ-ニャの力の本質を…」

ベルケルに唯一対抗できる力…

先ほどの森での戦い…

マ-ニャの力の本質…

「あっ!?」

すると俺はある考えにいたった

俺の様子を見てミネアは少し微笑んだ

「ワタル気づいたみたいね」

「ああ…ハイデルに唯一対抗できる力…」

「それは…」

「聖なる力だ」

「!?」

ミネアは言った

「ご名答」

「ハイデルは暗黒の力を持ってる」

「聖なる力は暗黒の力と唯一対抗できる力…」

「それに白魔女の力も聖なる力とまではいかないけど

それに似たような力もあるわ」

「マ-ニャの聖なる力に私の力が少しでも手助けできる…」

「そう考えてる」

そしてミネアはハイデルを見据えて言った

「あの森でのハイデルとの戦い…」

「ハイデルは本気だったからじゃないかもしれない」

「だけど、あれほどの力を持ちながら

私たち白魔女と戦闘を避けたのは

少し厄介なことになる…」

「そう考えたからだと私は思ってる」

「なるほど…」

みんな納得していた

この力に賭けてみるしかない…俺はそう思った

しかしこのときミネア含め

誰一人として気づいてはいなかった

もし、ズィ-ダが死んでいたのなら

マ-ニャは連れさられ

ミネアやワタル含めみんな八つ裂きにされて

殺されていたであろう運命であったことに…

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