実験室編18

希望の腕輪の方へ目をやるとそれは暗黒の光に輝いていた

そして、地下牢はまた森へと戻ってしまった…


そしてトレアは異形の姿になりながらも

俺の目の前でドクターベルケルに

許しを乞い泣いていた

ドクターベルケルの策略など夢にも思わずに…

俺は思わず声が出た

「くっ…」

「何ということを…」

目を背けてしまう

そして泣き止んだかと思うと

いきなり俺たちを巨大な手で殴りつけてきた!

「ぐっ!」

「きゃあ!?」

それぞれ吹き飛ばされる

「があああああ!!!」

もうトレアに自我は残っていなかった

辺り一体の森を邪悪な巨大な力で破壊していく

そして再び俺たちが標的となる

その巨大な力の前に俺たちにはなすすべがなかった

何とか攻撃しても攻撃してもすぐに再生してしまう

そしてより身体は膨張していき

パンパンに身体は膨れあがっていた…

俺たちはトレアに追い込まれていった

その時…!

ミネアが何かに気をとられたのか足を崩してしまった!

「しまっ!?」

「ミネア!」

俺は叫んだ

しかし間に合わない

トレアの魔の手がミネアが襲う

ミネアも死を覚悟し目を瞑った

しかしその魔の手がミネアを襲ってくることはなかった

なぜならその魔の手は

ミネアの顔の寸前で止まっていたからだった

「えっ?」

ミネアは恐る恐る目をあけると

トレアの魔の手が目の前で止まっていて目が点になった

すると声が聞こえてきた

「もう…いいよ…」

マ-ニャだった

マ-ニャは異形な姿となったトレアに抱きついていた

「マ…!」

マ-ニャが心配になり咄嗟に声が出たがそれも遅かった

俺がマ-ニャの名前を言い終わる前に

トレアの手がマ-ニャを襲う!

「きゃっ!」

「マ-ニャ!?」

マ-ニャはふっ飛ばされていた

そして倒れた

しかしマ-ニャは諦めない

口に血を吐きながらも再び立ち上がった

そして、とても優しい目をしていた

しかし俺は叫ぶ

もちろんマ-ニャの危険を感じているからだ

「マ-ニャやめろ!」

しかしマ-ニャはトレアに向かって歩みよるのをやめない

「ぐぉおおお--!」

異形の姿となったトレアの手から生えた

何本もの触手がマ-ニャを襲わんとする

マ-ニャに当たる!そう思ったがうまくマ-ニャは避けながら進んでいた

いや違う…マ-ニャは避けてはいない

その触手はマ-ニャの手前や後ろを

威嚇するようにガツン!ガツン!と攻撃していた

まさか来るなと言っているのか?

トレアにもまだ少し自我が残っているのか?

トレアに無防備で近づくのは危険だ

それでもまたゆっくりとマ-ニャはトレアに近づいて行った

そして近づきながら言った

トレアに聞こえていないのかもしれない

だが絶対心のどこかでは必ず聞いていてくれている…そう信じて

「さっき森で希望の腕輪が破壊される前に

私がお母さんに放った魔法のこと覚えてる?」

「あれはお母さんが私に初めて教えてくれた魔法だよね…」

「いつも私にお母さんは辛く当たっていたけれど

あの時は私が初めて魔法を放つことができて

ミネアと一緒になって初めて喜んでくれた…」

「あの時はうれしかった…」

「お母さんは覚えていないかもしれない」

「でも…私は今でも覚えてるよ」

「大切な思いでとして…」

「マ-ニャ…」

ミネアは涙を目に貯めながら

いつくしむようにマ-ニャのことを見ていた

「それと今日私たちが久しぶりに再開して

私たち二人を誘ってくれたこと…」

「ごめんね…って謝って欲しかった…」

「今までずっとお母さんのことを恨んできた…」

「もういい!そう言ってお母さんの所に行くことを断ったけど

実は少しうれしかったんだよ」

「多分お姉ちゃんも同じ気持ちだと思う」

「お母さんはお母さんなりに

私たちのことを必死になって

守ろうとしていてくれたんだよね?」

「さっきのお姉ちゃんに対する攻撃で分かったよ」

「不器用かもしれない…

それでも私たちのことを愛してくれてるんだなって」

それからギュっと優しく異形の姿となったトレアを抱き締めた

「あ゛っあっ…!」

トレアの自我は本当に戻りつつあるのか…!?

そう考えているとミネアもトレアに抱きついていた

そして言った

「今日会った時に話した通り私はあなたが嫌いだ」

「さんざん私たちのことを虐待して罵って…」

「マ-ニャが言った通りあなたを今でも憎んできた」

「会ったら強くなった私の手で

あなたの人生を切り刻んでやりたい…」

「そう思って生きてきた」

「そんなあなたが謝りもせず私のことを

誘って本気でバカじゃないの?…そう思った」

「でも…それでも私たちのことを誘ってくれて

何だろう…少し嬉しかった」

「あんなに憎んでいたはずなのに…おかしいよね…」

そしてミネアは改めて言った

「そして森での戦い…」

「あなたは捕まえているみんなの事を…

私たちに対して人質としてカ-ドを切るこてができた

「でもそれはしなかった」

「ダメだと思ったからでしょう!?」

「それにさっきマ-ニャが言っていた

言葉を聞いて思い出したんだ…」

「ずっと何か気になっていたことの謎が解けた…」

「何でこんな大切なことに

気づかなかったのか恥ずかしくなってしまう…」

「この森…」

「この場所…」

「マ-ニャが初めて魔法を唱えて

私たち家族みんなで喜んだ場所に似てるよね…」

「!?」

「無意識かもしれない…」

「でも、あなたの心の奥底にはあの時の思いでが

まだ大切かに残ってるんじゃないの!?」

トレアは黙って二人の言うことを聞いていた

「あっあっあっああああああ----!!!!!!」

そして泣き出していた

ミネアは語りかけるように必死に叫んだ


「あなたは完全な悪人じゃない!」

「まだ大切なものは残ってる!!!」

「だから…お願い…」

「そんなものに負けないで?」

「お…母…さ…ん」

ミネアが初めてお母さんと呼んだ日だった

そしてマ-ニャも言った

「私もずっとここにいるから…」

ミネアとマ-ニャの涙の滴がぽつんトレアの身体に落ちた…

すると…!

なんと異形の身体になっていたトレアから

光が溢れみるみるうちに元の姿へと戻っていった

森も元の地下牢へと戻っていく

ドクターベルケルの策略など忘れたかのように…

そしてミネアとマ-ニャに大切に抱き抱えながら

トレアは静かに目を開けた

そして言った

「ミネア…マ-ニャ…」

「あなた達二人の声…」

「わたしに…わだしに゛…」

「ちゃんと届いていたよ…」

「本当に…ごめ…んね゛…」

「こ…れ…か…ら…は…ずっと…三人…で…」

そう言い残すとトレアは静かに目を閉じた

「うそっ…」

「うそ…でしょ?」

「ねえ…うそって言ってよ!」

「こんなのってないよ!」

「こんなのって…ごんなのって…!!」

二人は放心状態で立ちつくす

「いやあああああああああ!!!!!」

「おかあさ----ん!!!」

三人はいつまでも抱きあっていた




残酷な光景だった

胸が苦しくなった

いつまでも三人を抱きあわせていてあげたい…

しかし俺たちにはやるべき事がある

ミネアとマ-ニャが少し落ちつくのを待ってから

心を鬼にして行こうか…そう一言だけ言った

二人は力なく一度だけコクりとうなずいた

そして地下への扉を見つけ俺たちは進んで行った

しかし俺は思った

ドクターベルケル!!

貴様はいつか必ず…俺たちが倒す!!

トレアの無念も力に変えて…!

それにお前が明らかに悪意の目的で

トレアに希望の腕輪を渡したんだろうが

それは誤算だったな!

結果は悪意ある結末にならなかった!

家族が…家族の絆が勝ったんだ!

それに腕輪は家族の望む希望を復活させることができた…

一時的とはいえ家族の和を復活させることができたんだ!

希望という名に変えて!!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る