実験室編17

場面は変わって数日前の出来事


ハイデルは地下のとある部屋へと入る

そこにはドクターベルケルがいた

何やら死体をいじくっているようだった

特に何も思わずにドクターベルケルの近くに行き

そして声をかけようか…そう思った時ドクターベルケルは言った

「よし完了だ」

そして何をしているのか気になりハイデルは声をかけた

「ドクターベルケル様…何をされてるんですか?」

するとドクターベルケルはハイデルの存在に気づいた

「おお…ハイデルか」

「トレアの身体にちょっと細工をな…」

そう言われて死体だと思っていた

実験体をみると何と裸体になったトレアがいた

叫び声ひとつあげすに横たわっていたので

ハイデルは死体だと思っていたようだった

そして肝心のトレアは麻酔か何かで

眠らされているようだった

「細工ですか…」

ひひひとハイデルは不気味に笑う

そしてドクターベルケルは言った

「トレアの身体の中にある種を植えておいた」

「種ですか?」

「ああこの種はな…成長すると素晴らしい力を発揮する」

「しかし限界を越えると花火をあげるのだ」

「花火?」

ハイデルはドクターベルケルが何を言っているのか

よく分かってないようだった

「そう…きれ-な花火をな…」

そうニヤリと笑う

そしてニヤリと笑ったことで

ハイデルはドクターベルケルが

何を言わんとしているのか察したようだった

そして目を見開きながら同調するように言った

「さぞかしきれ-な花火なんでしょうねえ-」

「ふふふ…ははははは!!」

「あっはっははははは--!!」

二人は恐ろしい顔で笑っていた

そして言った

「それと…その花火を見た者も一緒に花火になる」

「儚くそして小さな美しい花火をな…!」

それでドクターベルケルはある腕輪をポケットから出した

それを見てハイデルは言った

「これは?」

するとドクターベルケルは答える

「ああ…これか…」

「これは希望の腕輪と言ってな…」

「まぁその力についてはお前が知る必要もない」

「しかしこの希望の腕輪をトレアに授けようと思う」

「へえ-……」

ハイデルは興味深そうに聞いている

「そしてこの腕輪にはある結界を張っておいた」

「結界ですか?」

「ああ…結界だ」

「それにそのきれいな花火はちと強力でな…」

「この小城を吹き飛ばすくらいの力は秘めておるだろう」

そして、そんなにですか!?とハイデルは驚いていた

しかし次のドクターベルケルの一言で安堵したようだった

巻き込まれるのを恐れていたのだろう

「ああ…だが案ずるではない」

「この結界が破れることはない…お前を守ってくれるだろう」

「お前はその花火を見れなくて残念だろうが…」

そしてハイデルはある疑問に思っていたことを

恐る恐るドクターベルケルに聞いた

「あの-」

「ん…何だ?」

そして必死に愛想笑いをしながら聞いた

「え-と、もし…もし…!ですよ?」

「その腕輪が結界を張る前に

破壊されたりなんかしたらなぁ…なんて…」

ハイデルはすごい冷や汗をかいていた

もしドクターベルケルの機嫌を

損ねるような事態になれば

自分がどうなるのか理解しているのだろう

「ははは…ドクターベルケル様が渡す物に限って

そんなことはありませんよねぇ…?…ははは(汗)」

すると、何だそんなことか…と

ドクターベルケルは特に機嫌を損ねることなく言った

ハイデルは安堵したようだった

そして言った

「もしこの腕輪が一度破壊されようが…関係がない」

「と…言いますと?」

にやりとドクターベルケルは笑いながら話を続ける

「この腕輪わな…暗黒の力に反応する」

そして目を見開き自慢するように言った

「この腕輪を破壊しようが…暗黒の力がそこに存在する限り…

何度だって蘇る…何度でも!!」

「それに…もし!」

「もしもだ…花火から逃れることが出来ても

この結界から外へ逃れることはできない」

「結界が発動するということは…」

「トレアの中の種が花開き暗黒の力が止めどなく放出される証…!」

「この腕輪がある限りトレアの絶望が…!怨念が…!」

「それに…小さな花火たちの絶望が…!心の叫びが…!」

「暗黒の力となり輪廻し…

そして永久にこの結界の中に閉じ込められるのだ!!!」

「ふふふ…はははははははは!!!」

「がははははははは!!!」

ドクターベルケルはトレアをこの戦いで

ひとかけらも生かそうとは考えていないのだろう

そしてドクタベルケルの目が狂っていた

そして、そのドクターベルケルの狂喜の姿に

流石のハイデルも背筋がゾクリとした

自分でもハイデルは震えているのが分かった

しかしこれが歓喜の震えだということに気づいてはいなかった



そしてドクターベルケルは落ち着きを取り戻し言った

「それにあれだ…」

「この花火が綺麗に打ち上げられるとは限らんがな…」

そう言うとハイデルは不思議に思い聞き返す

「どういうことでしょうか?」

するとドクターベルケルは答える

「この腕輪の件は私がトレアに

分け与えると喜んで使うだろう」

「それは問題ない」

「問題なのは花火を打ち上げる以前の話だ…」

「そやつらは確実にこの小城までは来る…」

「そう確信はしている…長年の感だがな」

「しかし…ここまでそやつらがたどり着けるかどうか…」

「ああ-そういうことですか」

ハイデルは納得したようだった

そして再びハイデルは恐る恐る聞いた

「しかし…ドクターベルケル様」

「何故こんな回りくどい真似を…」

「ああ…せっかくここまで来てくれるのだから

少しは希望を与えてあげないとな…」

「ゲームもいきなりゲーム終了じゃつまらないであろう?」

「ここまでたどり着けるほどの者たちでないなら興醒めだが…」

そしてハイデルは笑いながら言った

「希望を与えて…それから絶望をですよね?」

「ふふふ…よく分かっておるでないか」

嬉しそうにドクターベルケルは笑う

「さてと…」

トレアの手術が無事成功しハイデルとの会話が

終わったので別の部屋へ行こうとする

ハイデルもドクターベルケルに付いて行く

そして、ハイデルは一緒にドクターベルケルと歩きながら

思いついたように言った

「あっ…そういえばあの実験体はどうなりましたか…?」

するとドクターベルケルは答える

「ああ…何とか息は吹き替えした」

「逃げた実験体も良かったがあの実験体もいい…」

「随分長い間私の実験に付きあってもらった」

「もし、あの実験体がいなかれば私の実験も

どうなっていたのか分からなかった」

「お陰で私の実験も完成した」

「死なせるにはおしい実験体だ」

「今後の研究にも役立ってもらわないとな…」

「えっと名前は何て言いましたっけ」

「ズ…ズィーダだったかな…?」

その時…!

ロ-ソクの火が激しく揺らめいた

「まぁ実験体に名前などいらん」

「そうですね…ははは」

そうハイデルは愛想笑いをした

そして、二人は談笑しながら闇の奥へ消えて行った

トレアの信じる思いをそこに残して…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る