黒魔女、白魔女編14
シェリル様はどこまで気づいていたのであろうか?
そう考えていたところフロ-ラル様は前へと出た
「バ-バラ…」
「事情はよく分かりました」
「この事をみんなの前で告白することにも相当の覚悟が必要だったでしょう」
じっとバ-バラはフロ-ラル様のことを見つめていた
「前にも言った通り私はあなたを許します」
「ありがとう…ありがとう…」
そう言いバ-バラはうつむいていた
「それにこんなにも大勢の仲間が私たちを助けてくれるのですから…」
「それと最後に聞きたいことがあります」
「何だ?」
「大丈夫なのですね?」
そうフロ-ラル様はバ-バラへ問いただした
単にバ-バラの身体のことを気づかってだろうが
もう一つの意味に気づいたようで大丈夫だ…そう力強く返事をした
これから実験室へ行くからには死戦が待っているのだろう
もし死戦に行って突然体調が悪くなっても
バ-バラのことは庇いきれない…
今ならまだ間に合う
ここに残りそれで生き残る道がある…
フロ-ラル様はそう言いたかったのだと俺はそう思った
バ-バラの決意を確認したようにフロ-ラル様はコクリとうなずいた
「分かりました」
二人の…そしてみんなの決意は固まったようだった
そしてみんなが実験室へと旅立とうとしているときに
フロ-ラル様がバ-バラに言った
「バ-バラ…あの言い伝えを覚えていますか?」
「言い伝え?」
バ-バラはフロ-ラル様が何を言っているのか、
分からないようで怪訝そうな顔をした
しかしフロ-ラル様が自分のペンタゴンに指を指し
宝玉…そう言ったときに
自分のペンダントをも見つめとある事に気づいたようだった
「まさか…!?」
「ええ」
その言い伝えを言いましょう
「白魔女と黒魔女一つになりし時…互いの宝玉合わせん」
「さすれば大いなるものが見えるであろう…」
「白魔女に伝わる言い伝えです」
「ミネアや他に黒魔女から白魔女になった者に同じ言い伝えがある…」
「私はそう聞いています」
「伝説だと思ってたが…」
バ-バラは本当に伝説だと思っていたようで
そのことについては全く頭になかったようだった
「私もつい先ほどまでただの伝説…そう思っていました」
「でもお母様が消えるときに私だけに分かるように
そっと自分の胸に手をやり私を見つめた時に気づいたのです」
「お母様が自分の胸に手をやり私を見つめたことは
偶然だったのかもしれません」
「でもそれが私に気づかせてくれた…」
「バ-バラ…あなたも私と似たようなペンダントをしてることに…!」
「!?」
そう言われ俺はギョッとした
今まで気づかなかったがフロ-ラル様とバ-バラのペンダントを見比べると
確かに色こそ違えど似たようなペンダントに見えた
綺麗なピンク色と青のダイヤのような物が輝いていた
「私たちの白魔女と黒魔女…その心は一つになったと思います」
「今がその時ではないか…そう私は思ったのです」
「言われてみれば確かに…」
バ-バラは納得したようにうなずいていた
「宝玉とは何か?」
「伝説だと思って深く考えなかったし…」
「その言い伝えの一つになりし時とは白魔女と黒魔女…」
「どちらかの勢力が滅んだときだと漠然と考えていて
その考えは全くなかった…」
「確証はもちろんありません…」
「ただ…もしこれからの戦いに何かプラスになれば…」
「そう考えて…」
二人は見つめあいコクリとうなずいた
そして二人はそれぞれの正面へと歩み出た
それから二人はペンダントを各々外し
そのペンダントをお互い手に取り前へ出しペンダントを重ね合わせた…
緊張がその場を包み込む
その時…!!
2つのペンダントが光り、パーン!とその光りは上空へと消えていった…
それからその上空から光りに包まれ
そこから書物みたいな物がフラフラと落ちてきた
フロ-ラル様とバ-バラはその書物を恐る恐る手に取り
その書物のページを開くと言葉を失った…
何か書いてあるようだった
「古文書!?」
「何か特別な強い魔法が書いてあるのか!?」
しかしその内容はそんなものではなかった
以下古文書にはこう書かれてあった
「古よりの者…我ここに書す」
「全ての魔幻龍の力揃いし時…希望の扉開かれん」
「過去を知りしドラゴン…ゴブリンドラゴン」
「闇空の覇者…ダ-クバハム-ト」
「魔海の王…独眼リヴァイアサン」
「人界の…」
古文書はここから先が読めない…
文字はここで途絶えいた
その場から全員動けないでいた
あまりのスケールの大きさに固まっていた
その固まりからようやく解けバ-ジェットが言った
「おいおい冗談だろ…」
「魔幻龍って伝説の生き物じゃないのかよ…!?」
そうバ-ジェットが言った
魔幻龍…確かにおとぎ話でした聞いたことがなかった
村長によく悪いことをすると
魔幻龍のドラゴン様がお仕置きに来るぞ!
と怒られたものだった
あまりのことにうまく頭が回らない
魔幻龍…それに…
ある考えにいきつこうとすると先にツバサが口を開けた
「ゴブリンドラゴン!?」
ツバサが驚いていた
その言葉を聞きさっき俺が考えようとしたことと同じだと思った
ゴブリン族の俺ではあるがゴブリンドラゴンなんて聞いたことがない…!
俺はホワイトゴブリンだから
もしかしてゴブリン族の大多数を占めるブラックゴブリンなら
この事を知っているのであろうか?
今はそのことについて何も分からなかった
もしや!?と思いバ-ジェットの方を見るが
やはり魔幻龍のことは知っていたみたいだったが
ゴブリンドラゴンについて聞いたこともないようだった
ゴブリン族の元盗賊でいろいろ情報網のあるバ-ジェットなら
何か知ってるかもと思ったのだが…
「ダ-クバハム-トと独眼リヴァイアサンなら知ってるが
ゴブリンドラゴンなんて聞いたこともない…」
「何か知ってるのか?」
そうミネアが聞いてきた
「ゴブリン族の俺ですら聞いたことがないんだ…」
「ツバサやバ-ジェットも知らなかったようだし…」
「そうか…」
「……」
しばらく沈黙が続いた
「この話は本当なのだろうか…?」
「でたらめに決まって…」
誰かがそう言った
しかしバ-バラが反論するように答える
「多分本当の事だと私は思うね…」
「もしウソならわざわざこんな手の込んだことなんてしないさ…」
「それにもしウソならご先祖様がこんな言い伝えを残すはずもない…」
みんな黙ってしまった
「それに希望の扉とは何なのだろう…」
「希望…つまり魔族そして私たちの希望…」
「人界のことか?」
「いや最後の魔幻龍に書かれている部分で
文字こそ読めなかったが人界の…と書いてあった」
「多分それはないだろう」
「それじゃあ…」
みんな黙ってしまった時にフロ-ラル様は言った
「これからの実験室にに行くにあたって何か力になれば…」
「と思ったのだけれど…ごめんなさい」
そう申し訳なさそうにバ-バラとそしてみんなに謝った
「いやいや…」
みんな否定した
しかし何か力になるものが必ずある…!
そう期待したのは事実だろうが…
でももとより俺やみんなの力でやるつもりだったのだから…
そう考えているとフロ-ラルは言った
「ありがとう」
それからある決意をした表情でみんなへと語った
「しかし私たちには新たに生きて帰らなければならない使命が一つ増えました」
「使命?」
「ええ」
「この事を後世に伝えなければ…」
「そして答えを探しに行かなければならない…という事です」
「!?」
「この古文書を作成した人物とご先祖様は
どういう関係かは分かりません」
「この古文書を作成した人物がご先祖様だったのかもしれません」
「またはご先祖様と何か深い関係があったのかもしれません」
「しかし何故このような人目に避けるような方法を選んのか…」「それは私には分かりませんがただ一つだけ言えることがあると思います」
「それは…」
「それは?」
「私たち白魔女と黒魔女が力を合わせたとき…」
「この古文書が必ず必要になるであろう…そう思ったことです!」
「伝説と思われていた魔幻龍がもし実在するのならば何かこう…
この世界全体の行く末さえ左右している…そう思えるのです」
「ドクターベルケルやハイデルという次元の話ではない」
「何かこう…もっと巨大な何かを感じます」
それからフロ-ラル様は手を高らかに挙げみんなに宣言した
「ここで死ぬわけにはいきません!」
「みんな生きて…そしてここへ帰ってきましょう!!!」
「おおおぉおおー!!!!!!」
みんな死ぬ覚悟もある程度していたと思うが
新たに生きて帰らなければならない理由ができた
その思いは人を何万倍をも強くする
俺も空に向かって吠えた
「みんな行くぞ!!!」
「うん!」
「ったりまえだ!」
「せーのー!」
「おおお--!!!」
俺たち三人はみんなと一緒になって吠えた
絶対に…生きて帰ってみせる…!!!
ここからはるか彼方にある城にいるとある黒い影
ゴゴゴゴ
「運命の歯車は回り始めた…」
<黒魔女、白魔女編 完 >
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