黒魔女、白魔女編8

しばらくみんな無言で進んでいるとフロ-ラル様はポツリと言った

「あの辺りが約束の丘になります」

誰の気配もせずシ-ンと静まりかえっていたので

かえって不気味でみんな息を飲む…

そのまま何事もなく約束の丘へ到着しても辺りは静まり返っている

まさか場所を間違えたのか?そう思った矢先…!

辺り一面松明に火がついた!

「罠だ!」

そう俺は叫びフロ-ラル様もこう叫んだ

「みんな円陣を組んで!」

そう言われた途端武器を構え円陣を組んだ

見事な陣形だ

よく訓練されているのがよく分かる

そして俺たちを囲むように大軍がさっと現れたが火に目がくらみ目がかすんでいて敵の顔がよく分からない

みんなに緊張が走る…!

すると女の声がしてきた

「な-に一斉で襲ったりはしない」

「安心しな」

この声にフロ-ラル様、ミネア、マ-ニャがピクリと反応した

やっと目が慣れてきたころに1人前に出てきたのを確認できた

その顔を見た途端にこう叫んだ

「バ-バラ!」

「バ-バラ様!」

三人が一斉に答えた

「よく逃げずにここまで来たね…」

この人が3人が言っていたバ-バラか…

本人からミネア以上に魔力が溢れだしてるのがよく分かる

「バ-バラ様!」

「マ-ニャかい…」

「わたしは…」

「黙れ裏切り者!」

「拾ってやってさんざん可愛がってやった恩を忘れおって!」

「ちが…」

「違わないさ私は…」

マ-ニャを庇うようにミネアがさっと前に出た

まっすぐバ-バラを見つめるようそして懺悔するようミネアは言った

「お久しぶりでございます…バ-バラ様…」

「こっちも裏切り者のミネアかい!」

そうバ-バラが言ったが必死に答えるようにミネアが言った

「たしかに!…」

「私は…裏切り者です…」

「黒魔女であることを隠して今までみんなと戦ってきました…」

「それは間違いではありません」

「どんな罰をも受ける所存です…」

「ほう…」

バ-バラが目を大きく見開き答えた

「ちがっ!」

俺がそう答えようとした瞬間…!

ツバサに口を抑えられた

顔を横にふっている

ここは黙っていようという合図らしい

わかってる…これはミネアやマ-ニャそしてバ-バラたちの問題だ

俺の出る出番じゃない…俺は必死に叫びたい衝動を我慢した

「しかし!」

「ここにいるマ-ニャは別です!」

「私はどんな罰だって受けます!」

「ただ…」

「ただ…」

「マ-ニャの話だけは…きちんと聞いてあげてください!」

潤んだ瞳でミネアはバ-バラに必死に訴えていた

「うるさい!うるさい!」

「マ-ニャの話を聞けだぁ!?」

「裏切り者のくせに何言ってるんだい!」

「そうだそうだ!」

バ-バラ以外の黒魔女の怒声がまう

「調子のいいこと姉妹揃って言いやがって!」

「どうせ私たちが怖くなって出てきたんでしょ!」

「えっ!?違うのかい!?」

「大軍で殺されるのが怖くなって命乞いするために

ノコノコとここまで出てきたんだ!」

「でも私は決してお前たちのことを許さないよ!!」

「残念だったね!」

ミネアとマ-ニャは涙目で必死に唇を噛みしめながら

バ-バラの言うことを黙って聞いていた

「しかも姉妹揃ってよく私の前に出てこれたね!」

「そうだこの恩知らず!」

「私たちの仲間を今まで何人殺してきたの!?」

「何考えてるんだ!」

「一緒に戦った日々は偽りのあなただったの!?」

「私の仲間を返してよ!」

「裏切り者!今すぐ死ね!」

「死-ね!死-ね!」

「ばかやろおおおお!!!!」

「んなっ!?」

ツバサにゴメンと思いつつ前に出た

ツバサのほうをチラリと見るともう勝手にしてと

言わんばかりに片手を顔に覆っていた

「何だいお前は!?」

「俺は訳あって今フロ-ラル様やミネアたちと同行させて貰ってる

ホワイトゴブリンのワタルというものだ」

「ゴブリン風情が私に意見しようと…!」

「黙れ!」

「!?」

「俺のことはいい」

「だがさっきから黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって…」

「ミネアが今までどんな気持ちで

お前たちと戦っていたのか分からないのか!?」

「かつての仲間だった者たちと身分を隠してまで戦うことが

どんなに辛かったのかお前たちには分からないのか!?」

「…」

「かつて命をかけて戦った仲間だろ?」

「ミネアがどんな黒魔女だったか少しはわかってるはずだ」

「裏切られたと感じるお前たちの気持ちも少しは分かる…」

「でも少しはミネアの話を聞いてやってもいいんじゃないか?」

「俺の話はここまでだ…」

「ここまで言って分からない奴らなら俺は本気で斬る!」

「例え最後の1人になろうとな…」

ワタルの殺気がピリピリと伝わってくる

僕や他のみんなも同意見だったようで

みんな一斉に武器を構えた

ワタルの殺気に他の黒魔女もそうだが

バ-バラでさえたじろいでいるように見えた

ワタルたちの殺気にいくら多勢に無勢とはいえ、

自分たちも只ではすまないと感じたのかシ-ンと静まり返った

「もういいょ…ワタル…みんな…」

真っ直ぐな瞳でバ-バラを見つめていた

あの瞳のどこに嘘があろうか

バ-バラは自分とは全く関係のない虐待されていたミネアやバ-バラを見かねて助けたんだろ?

良心は少しはあるはずだ…

そこまでバカじゃないことを祈る…!

俺は本気でそう願った

みんなゴクリと唾をのんだ

そう思った矢先バ-バラから返答が返ってきた

「ふぅ…負けたよ…」

「分かった分かった…」

「話だけは聞いてやる…」

「バ-バラさ…」

「ただし!」

「ウソを言った瞬間!この場で全員皆殺しにする…」

「それでいいね?」

「ありがとうございますバ-バラ様!」

「それとお前たち!」

「黙ってな…わかったね?」

「はい…」

黒魔女たちはシュンとしてるようだった

「続けな…」

「はい」

「先ほども申した通り私は裏切り者です」

「どんな報いも受けます」

「その気持ちは今も分かりません」

「ただし…マ-ニャは違います!」

バ-バラは真剣な眼差しでミネアの言うことを聞いてるようだった

「マ-ニャは徴兵されて行った…そのことは事実です」

「しかし、その先に問題があったのです…」

すると今まで黙っていたマ-ニャがさっと前に出て答えだした

「お姉ちゃんごめんなさい…」

ウンウンとミネアは首を横にふる

「バ-バラ様…」

「続けな…」

「はい」

「私は他のモンスターたちと混ざるようにして、

徴兵されたものたちが集まる場所にいました」

「そのとき…」

その時…その時については

俺やフロ-ラル様ミネア含め白魔女でさえ誰も知らない

みんな固唾を飲んでマ-ニャの口元を凝視していた

「そのとき私たちに用があるかのように

目の前に小さな軍団が現れました」

「その先頭の男はハイデルと名乗っていました」

「それでこう言ったのです」

「あなたたちには特別な任務がありますこちらへと言われました」

「私はそのときには勿論少しはびっくりしましたが

何の疑問もおもいませんでした」

「普通この状況の中敵がいるなんて思いもしませんから」

「しかしその中で危険を察知したモンスターがいました」

「そのモンスターはブラックラビットです」

「そのブラックラビットは草食魔獣と言われているモンスターの一種で

草食魔獣は普段は穏やかで戦闘能力はないのですが、

その分危険を察知する能力が鋭いのだと思います」

「ハイデルが案内した途端そのブラックラビットは一目散に逃げだしました」

「その場にいた私たちは何も感じませんでしたが、

ブラックラビットは本能的に死の危険を察知したのでしょう…」

「しかしハイデルの対応も早かったです」

「人差し指を上空にかざすとブラックラビットに向かって黒い稲妻が降り注ぎました…」

「私たちはその場に固まりました」

「それからハイデルは何事もなかったかのように私たちを誘いました」

「私は怖くてなにもできなかった…」

「これだけの大事が起こったのに

周りの幹部らしい人たちは素知らぬ顔をしていました…」

「私たちになすすべはなく実験室と言われているところに連れて行かれました…」

「そこはもう…本当に…」

「地獄で…うっうっ…」

「大丈夫かマ-ニャ!?」

「もう少し落ち着いてから…」

「大丈夫です!」

「本当に…大丈夫」

マ-ニャの目を見ると決意の目をしていた

「分かった」

「私だけは何故か別室へ連れて行かれ脳波実験を受けました」

「脳に電流を流され脳が焼けるような衝撃を何度も受けました…」

「脳以外の全身のあちこちも…」

「はぁはぁ…」

マ-ニャが震えていた

記憶がフラッシュバックしているのだろう

そのとき…!

「もう…分かったから!」

とバ-バラが言った

「はい…すいません…」

「それからここが一番大切なことなんですが…」

「私はその実験室で見るも無惨な身体になった

何百人ものモンスターたちの死体を見ました…」

「その中に…」

「まさか!?」

バ-バラが咄嗟に答えた

「はい…黒魔女のみんなもいました」

「おのれええええ!!!!」

バ-バラが絶叫する

「黒魔女以外にも白魔女もいました」

「捕らわれてる黒魔女のメンバーにズイ-ダも…」

「!?」

「ズイ-ダはまだ子供であろう!?」

「まだ何の楽しみもしらない!」

「子供にしか出来ない任務があるからということで手放したんだ!」

「それを今も拷問を受けてるだと!?」

「しかし…そんなむごいことがあるか!?」

「それなのに…それなのに…」

「うおおおお!!!」

「私は待ちました…」

「脱出のチャンスを…!!」

「それでその日はやってきました…」

「ドクターベルケルとハイデルが何かの用事でいない日が!!」

「ドクターベルケルぅ!?」

「正真正銘の魔王軍の幹部じゃないか!?」「そんなやつが…」

「はい…ドクターベルケルについては後でお話します」

「同じ部屋にいるモンスターたちが手伝ってくれました…」

「死を覚悟して…!」

「初めはもちろん断ったのですがせめてお前だけでも生きろ!」

「俺たちや私たちのことは大丈夫だから(^-^)って…」

「うううぅ…」

バ-バラがその場に泣き崩れた

「断ってるうちに看守がきてみんな必死に脱出のチャンスを作ってくれて…」

「断りきれずに私だけ逃げてきたの…」

マ-ニャはいくら流れとはいえみんな置き去りにして

逃げてきた自分のことを激しく責めていた…

だからあんなにも満身創痍になりながら実験室へ行きたかったのか…

この少女にどれだけの葛藤があったのだろう…

俺の胸の中が苦しくなった…

「それで逃げたことがバレて追手をかけられて…」

「捕まる!…そう思ったその先に…」

「俺達が偶然云わせたんだ…」

「そう…ワタルたちが助けてくれたの…」

「それで…ハイデルが現れて…」

「私たちはハイデルに負けて…死を覚悟したときに…」

「私たちが偶然云わせた」

そうミネアが言った

「それでハイデルが部が悪いと感じたのか撤退してくれて…」

「白魔女の本拠地で休んで…それからバ-バラ様の所へ

このことを知らせに行こうとしたときに…」

「私が現れたんだね」

「はい」

「なるほど…」

そうバ-バラが言った

しばらくバ-バラは目を閉じ無言だった

考えているのだろう

そのとき黒魔女の1人が呟いた

「ウソだ!」

「そんな出来すぎた偶然があるか!?」

「信用できませんよバ-バラ様!」

「そうだ!」

こいつらぁああ!と今にも剣を抜きそうなときに…!

バ-バラの口が一瞬動いた気がしたがその前に!

「待ってください!」

そうマ-ニャが必死な声を出して言った

バ-バラは何か言いたそうだったが、

真っ直ぐにマ-ニャを見ていた

「偶然が出来すぎていますよね…」

「信じて欲しいと言っても無理があると思います」

「私だってそんな偶然云わせた人が信用できないかもしれません…」

「そこで回復してから今までどうすれば信用してもらえるんだろうって

ずっと考えていました」

「そこで私は覚悟を見せなきゃいけない!」

「そう思いました」

「マ-ニャ何を言って…」

ミネアが困惑の表情を見せていた

「私は今まで逃げてばっかりでした…」

「姉さんにも頼ってばかりで…次はバ-バラ様…」

「黒魔女のみんな…実験室で捕らえられてるみんな…」

「でも…少しの間ですけど実験室のみんなや

ワタルたちに出会えて変わったんです!」

「見ず知らずの私に命をかけてくれた…!」

「私も強くなる…そして誰も命の心配をしてほしくない!!」

ぱっとフロ-ラル様の方向を決意した眼で見た

「フロ-ラル様!」

「あれをお願いします!」

あれって…

「まさか!?」

ミネアとバ-バラは気づいたようで大きく眼を見開いていた

夜風はそっと俺の頬をなびいた

少し肌寒い

自分はまだマ-ニャのいわんとしてることが理解出来ずにいた…

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