黒魔女、白魔女編5

しばらくして俺はフロ-ラル様に聞いた

「フロ-ラル様…絶炎とはそんな凄い魔法なんですか?」

しばらく沈黙してゆっくりとフロ-ラル様は口を開いた

「ええ…凄まじい魔法ですよ」

「その威力は使う人の魔法力に依存しますがそれよりも」

「その人の生きてきた年数そしてその人の覚悟や意思そして思いの強さが力を左右します」

「そして…何より使った人の命を対価とします…」

「!?」

「バ-バラが本気で絶炎を使えばいかほどの力か…想像するだけでも恐ろしいです」

「しかし膠着状態だったこの状況を自分の命をとしてまで

バ-バラを突き動かしたのは何なのでしょうフロ-ラル様!?」

「それは…私には分かりません…」

するとミネアが言った

「多分私のせいではないかと思います…」

「しかし私が白魔女にいることを知らなかったはずです」

「でもジェルチェが言っていました…」

「ある方に教えてもらったと…」

「!?」

「この中に裏切りものがいるっていうのかよ!?」

そう咄嗟にバ-ジェットが答えた

「それは多分ないと思います」

「現にバ-バラたちは本物マ-ニャがいることに驚いていました」

「もし間者がいるなら当然その情報は知っているでしょうし、

何か別の方法でコンタクトをとってきたはずです」

「うむむ…」

「誰が言ったかは分からないのでとりあえず今は置いておきましょう」

「そうですね」

俺は後ろで一瞬感じた殺気のことを話そうかと思ったが

俺の勘違いの可能性もあるし

みんなをイタズラに不安にさせるだけだと思ったので

誰にも話さずに今は胸のうちに秘めていることにした


そして静かにミネアが切り出した

「私のことをバ-バラ様は裏切り者だと言っていた…」

「確かに私は裏切り者よ…」

「かつて仲間だった者を騙して今までずっと戦ってきた…」

「ミネア!お前は裏切り者じゃない!」

そう言うとミネアがキッとした顔で俺のことを睨んできた

「ワタル!あなたに何が分かるっていうの!?」

「今は敵同士とはいえかつての仲間との闘いがどれほどまでに辛いかあなたに分かる!?」

「しかも身分を隠して!!」

「身が張り裂けそうだった!」

「私よミネアよ!と言い出したかった!!」

「でも…でも…言えるわけないじゃない…」

「黒魔女を抜け出して今は敵同士なんだもの…」

「お姉ちゃん…」

「うっうっう…」

「ミネア…」

しばらくして落ち着きを取り戻したようでまたミネアが意を決したように語り出した

「私はね…元は黒魔女のNO2だったの…」

「バ-バラ様に虐待されていた母親から

マ-ニャと一緒に救っていただいてそれは感謝しているわ」

「ううん感謝なんて言葉では言い表せないくらい恩を感じているのよ」

「もし救っていただけなかったら私たち姉妹はどうなっていたかも分からないもの…」

「救っていただいてから少しでもバ-バラ様の役にたちたくて」

「そして救っていただいた恩を少しでも返したくて必死になって修行したわ」

「そしたらいつの間にか黒魔女のNO2になってた」

「でも…でもね」

「いつからか黒魔女の…いえバ-バラ様のやり方に疑問を持っていたの」

「数にものを言わせて白魔女を攻撃する」

「卑劣な策略を用いて勢力を拡大する…」

「従わないものには非道な懲罰が待っていた…」

「今の黒魔女にいる魔女にも嫌々バ-バラ様に従っているものもいるはずよ」

「ただそれらの手段も周りの勢力に負けない力を手に入れるためだと思っていた…」

「そう…フロ-ラル様の母上様をバ-バラ様が殺すまでは…」

「!?」

「白魔女と敵対してたとはいえそこまで卑劣な策略を用いることはなかったわ…」

「ただフロ-ラル様の母上様には罠に嵌め

母上様1人に対して我々黒魔女は総動員で攻撃して…そして殺した…」

「それからバ-バラ様に強く疑問を持ったの…」

「それからしばらくして白魔女とは別のもうひとつの敵対する勢力のモンスター達と戦闘になったわ」

「そしてうまい具合に仲間たちと分断されて私1人になった」

「フロ-ラル様の母上様と同じ状況ね」

「天罰だと思ったわ」

「多勢に無勢…死を覚悟した」

「ふふふ…でもね…」

「死を覚悟したのに死の直前になって死ぬことに恐怖したのよ」

「私はなんて情けないだろうと思ったわ」

「でもね情けなくたって何だっていい…生きたい!…そう思ったのよ…」

「それからなりふり構わず生きることにそして逃げることに自分の全てをかけたわ」

「あの時の状況をもし自分が見たら何未練がましくなりふり構わず必死になってるんだろうって思うだろうね…ふふふ」

「そして途中から記憶にないけど気づいたら何とか生き延びていたの…」

「もうね…身体中深い傷だらけで…身体を動かすこともできず…本当に情けない姿で…」

「喉はカラカラで疲れはててまともに声を発することもできなかった」

「意識がなくなりそうになって目を閉じそうになった時に

近くにぼんやりと人影を感じたの…」

「そのときに本当に死を覚悟したわ」

「ハハハ無駄に足掻いた当然の末路ねと思った…」

「首はあの勢力に曝されるのだろうと悟った」

「でもその人影をはっきりと確認した時に愕然とした」

「その人影はね…」

「フロ-ラル様だったの…」

「!?」

「わたしは…わたしは…」

「気づけば溢れる感情を抑えきれずにフロ-ラル様に

私の黒魔女での葛藤…そして何よりあの日起こったことを泣きじゃくりながら

出ない声を必死に全てを懺悔していたわ…」

「それでもフロ-ラル様は許してくれた…」

「その時にフロ-ラル様に一生ついていこう…そう思ったの」

しばしの沈黙が流れ…

「お姉ちゃん…」

「バ-バラ様たちはひどく落ち込んでいたよ…」

「みんなお姉ちゃんは死んだと思ってたから…」

「ごめんね…」

「それで…ミネアが生きてることを知って大軍で押し寄せてきたのか…」

ツバサが力なくそう言った

「裏切り者の報いは私当然受けるわ…」

「身分を隠してしかも敵対する白魔女としてそしてのうのうと生きてきたんだもの…」

「お姉ちゃん!?」

マ-ニャが泣きそうな顔をする

「ごめんね…マ…ニャ…」

「でもこれだけはわかってほしい…」

「バ-バラ様そして黒魔女の仲間のことを忘れ日なんて1日もない!」

「敵対はしていたけれど黒魔女を殺めたことなんて一度もない!」

静かに力強くフロ-ラル様は諭すように言った

「もうその辺にしておきましょう」

「はい…」

「そうだぜしみったれたのはナシだ!」

こういう時のバ-ジェットの前向きな性格は本当に助かる

バ-ジェットの一言でみんなの緊張が緩んだようだった

もちろん気を引き締めないといけないがこういう休める事も大事だ

そう考えているとフロ-ラル様は決意した眼差しでこう語った

「全てを約束の丘で果たしにいきましょう」

「はい!!」

「そして私自身の過去との決着に…」

フロ-ラル様の方をチラリと見ると

フロ-ラル様の眼差しの奥にまだ何か秘密があるような気がした

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