ムズガルド帝国編9


ヨサクの発言からワタルたちは

ヨサクとジェニ-の衝撃のことを知ることとなった


そしてヨサクは続きを話し出す

「それが…」

「俺とジェニ-とアニキの出会いの全てです」


そしてヨサクは悲しそうに言った

「でも…この事を知ったのはそれから大分後のことなんすよ」

「いや…それは違うっすね」

ヨサクは自分の言葉を否定する

「心の奥底では本当は気づいてた…」

「でもそれから目を背けてた」

「気づかないフリをしてたんす…!」

「自分が傷付かないように…」

「最低す」

「本当に…」

ヨサクは激しく自分を責めてるようだった



「でもアニキは俺たちのことを気づかってか何も言わなかったっす」


「ジェニ-もそれまで何も言いませんでした」

「でも…」

「ジェニ-はアニキから聞かされるまでその事を知らなかったみたいっす」

「俺がダルトの一味だということを…」

ヨサクはさらに悲しい目をする


そして改めて言った

「アニキは普段おちゃらけていますけどその時は真面目にその事を話してくれました」



「お前ら…大事な話がある」

バージェットは改まって言った

二人はバージェットのただならぬ雰囲気に怯えながらも何事か…?

とバージェットの前に集まる


そして言った

「ヨサク…ジェニ-」

「お前らもそろそろ大人になった」

「本当のことを言おう」

「本当…?」

ヨサクやジェニ-は困惑する

二人はバージェットが何を言おうとしているのかまったく分からなかった


そしてバージェットは意を決して言う

あの集落での出来事を二人に話したのだ


「な…ん…だよ…」

「そ…れ…」

ヨサクは絶句する

「う…そ…だ…」

「うそだうそだ」

「うそだうそだうそだうそだうそだうそだ!!!」

ヨサクは混乱する

そして目の焦点が定まっていなかった


「あっ…あっ…!?」


わざと目を背けようとした過去

あの当時の光景が生々しく走馬灯のように蘇ってくる

あの集落での出来事!

ダルト…

ジェルチェ…


そしてヨサクは恐る恐るジェニ-をちらりと見つめた

するとジェニ-はヨサクをキッ!と睨みそして一粒の涙を流していた

それを見過ごさないヨサクではなかった

頭の中に軽蔑するかのような目で自分のことを睨み一粒の涙を流したジェニ-の顔が脳裏から離れない


「あっあっ…ぁああああ゛あ゛あ゛あ゛----!!!!」

ヨサクは絶望の声をあげる

死にたかった

そしてもうこの場にもいられない

そう本気で考えた

そして頭の中が真っ白になりながらもここを離れようとした


その時…!

肩に手をかけられ引き寄せられる

そっと目を開けるといつのまにかジェニ-の顔が目の前にきていた

ジェニ-も同じように引き寄せられていた

それを引き寄せていたのはバージェットだった


それでもヨサクはパニックになりながらつぶやく

「俺がジェニ-の親を…!」

「姉弟を…!!?」

「ここにいちゃいけないんだここにいちゃいけないここに…」



「そうじゃねえ!!!」

バージェットは声を荒げる

そしてヨサクの肩に両手を置きまっすぐ目を見つけ言った

「いいか?」

「よく聞け!」

「ジェニ-もだ!」

いつにない迫力にジェニ-も一瞬びくっ!となる


「ヨサク…お前は何も関係ねえ!!」

「あれは…ダルトがやったんだ」

「お前は何も知らなかった」

「関係ないんだ…!」


「でも…!」

ヨサクは泣きそうになりながらもバージェットを見つめる

バージェットはヨサクが何を言おうとしているのか察し抱きしめる

例えそうだとしてもヨサクはダルトの一味だった

その事実は変えることはできない

それはつまり…自分のせい

そう考えていたのだろう


バージェットは言った

「俺はなぁ…」

「あのゲス野郎どもが許せねえ!!!」

「今でものうのうと生きそしてまた同じことを繰り返しているのかと思うと吐き気がする…!」

「あいつらは変わらねえだろう」

「でもお前は違う…!」

「お前はあの時のお前じゃねえ」

「あれから何を見…」

「そして何を考え生きてきた…?」

「それにジェニ-と過ごした時間あれはウソだったのか…?」

「お前は変わったんだ…!」

「それは俺が保証してやる…!」

「それを重荷に感じる必要はねえんだ…!」

「そして…」


ヨサクから手を話し二人をそっと抱きしめる

「お前らは…」

「俺の家族だ!!!」


その言葉を聞いた瞬間…!

ヨサクの目から大量の涙がポロポロと出てくるのを感じた

ヨサクはジェニ-のを方を見ると

ごめんなさい…と泣きじゃくりながらヨサクに謝ってきた

ヨサクもごめんな…本当にごめん…とジェニ-に謝った

3人はいつまでも抱き合っていた



「そんなことが…」

ワタルは深いため息をつく

「はい…」

ヨサクは答える

「それでも今でもジェニ-に申し訳ない気持ちいっぱいあるんすよ」

「いつだったかまた謝ったとき…」

「あいつは許してくれました」

「それ以降その話題については何も触れないようにしてます」

「そうか…」

「はい…」


そして再びバージェットがいるであろう空を見上げて言った

「それにジェニ-はアニキのことを本当の父のように思ってるんす」

「アニキも今も俺たちを少しでも心配させまいとあんなふざけてがんばってる…」


俺たちはバージェットの思いを知りしばし無言になる


そして何か声が聞こえた気がした

「僕アルバイトぉぉぉおおおお---!!!!」

バージェットだった

「僕アルバイトぉ!!」

ジェニーはバージェットの背中に抱きつきながら真似をする

「はははははは(≡^∇^≡)」

ジェニ-は本当に楽しそうに笑っていた


そしてバージェットはランバ-ドから降り俺たちに言った

「ハハハ…どうしたそんなシケた面しやがって」

「まさかムズガルド城にほうへ行くと思ったか…?」

「そんな心配しなくてもそんなヘマはしねえよ」

「よし次はヨサクの番だ!」

「はい…!」

先ほどとはうってかわってヨサクは嬉しそうにランバ-ドへと飛び乗る


そしてバージェットはランバードに向かって言った

「ランバード…いくぞ!」

「クェ…♪」

嬉しそうに返事をした


それからランバードはツバサから貰った大きな白い翼を広げ空へと飛び出していく

「うぉ…!?」

ヨサクは喜びの声をあげる

「ははは…しっかり掴まっておけよ!!」

「はいっす…!」


そしてバージェットが絶叫しながら視界から消えていった

しかし声は木霊のように聞こえてくる

ヨサクもバージェットの真似をしているようだ

「ヒャッハーーー!!!!!」

「ヒャッハーーー!!!!!」

「僕アルバイトぉぉぉおおおおおおおおおーーーー!!!!!!!」

「僕アルバイトぉぉぉおおおおおおおおおーーーー!!!!!!!」

「( ゚д゚) 人(゚д゚ )ウェーイ」

「( ゚д゚) 人(゚д゚ )ウェーイ」

はしゃいでいた

そして声も聞こえなくなる


ワタルは呆れた表情でそして少し嬉しそうに言った

「ったくあいつら何やってんだ…」

「ふふふ」

「ははは」

ジェニーとツバサは笑っていた


そしてしばらくしてワタルはバージェットがいるであろう遠い空を見つめながら思った

バージェット…

お前は一体どんな深い闇をかかえているんだ…?

俺たちに何か手伝えることがあるのか…?

そのことを俺たちに告白してくれる日はあるのか…?


そんな思いをよそに炎月が夕焼け色に染まり綺麗に輝いていた

<続>     

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