三・アゼルクの目論見
「……俺、改めてリウィアスを尊敬する」
それはアルザが護人の家に移る少し前、しみじみと零した言葉である。
──始まりは、ある光景を目にした事だった。
「……何だ……、この状況は……」
「……いや、忙しくて……」
愕然とした様子のアルザに、アゼルクはばつが悪そうに視線を泳がせた。
目の前に広がるのは、室内に物が溢れかえった光景。
「……」
アルザは言葉を失った。
以前、訪れた護人の家は綺麗に物が収納されていたはず。
「──ああ、お師匠様のこれは昔からよ」
後日、護人の家を訪れたリウィアス。
アルザが愚痴を零すと、あっけらかんと言ってのけた。
「最近は、来れてなかったから」
作った時間は『死の森』を優先し、護人の家には寄る事が出来なかった。
結果、これだと。
つまり、今まで綺麗だったのはリウィアスが毎日のように掃除をしていたから。
「……」
──リウィアスがいなくなったこれからの護人の家を不安に思う、アルザだった。
「──取り敢えず、片付けるわね」
そう言ったリウィアスが、手早く物を片付け行く。
「……どうしたら良いか、教えて」
ここに越す自分がやるしかない。
アルザがリウィアスに教えを請うと、リウィアスは顔を綻ばせた。
「……なら、始めに……」
リウィアスの講義に耳を傾けるアルザ。
「……これで、これからも家が片付く」
ほっとしたように、せっせと動くアルザを見ながら零されたアゼルクの胸の
それに鋭いリウィアスの殺気に似た気が放たれる。
「──お師匠様?」
「!俺もちゃんと片付けます!」
これからもなるべく顔を出さねばと、リウィアスは強く思った。
【アゼルクの目論見・完】
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