第15話 Information warfareⅡ

 情報戦が始まることとなった。などと言ったがまずは情報交換をしなければな。さっき軽くしたが流石にあれだけの情報しか持っていない、ということはないはずだ。

 その女の居場所がもしかしたら、本当にもしかしたらわかるかもしれない。居場所がわかるのがそんなに僅かな理由は、それがわかってたらただ一方的にやられているという状況にならなかったはずだからだ。それは期待せずに忍者に聞くことにした。


「忍者さん、h」

「忍者さんではなく上谷だ。その...忍者さんと呼ばれると.つ、つい笑ってしまいそうになるからな。プッ」

「そんなに面白いかよ。忍者さん」

「ハハハ、あ、ああ、面白いよ」

「そりゃ良かったな上谷さんよ」


 く、くそぉ、そんなに馬鹿にすることないだろ。俺はそう思いつつも疑問に思ったことを振る


「上谷って名前なんだなお前。服部とか藤林とかじゃないのか?」

「ああ、我が一族は確かに藤林の血を引いているが苗字は上谷だ。その二つの名と百地は知れ渡ってしまってるからな諜報するのに差し支える。だから違うのだよ」

「へぇ~~大変だな~」

「ああ、大変だ」

「そういえば」


 何気ない話からこうやって入っていけば軽い気持ちで話せるようになるだろう。最初はあれを聞くか。


「なんだ?」

「その女の居場所を知らないか?」

「知らん。知っていたら復讐の一つや二つやっている」

「だよな」


 上谷さんの言うことはごもっともだ。やはりそんなに物事は簡単にいかないらしい。その後質問してみたが「尾行させていた奴は全員手篭めにされた」とか、「毛を回収してDNA鑑定をしようと思ったら毛が全く落ちていなかった」など敵の武勇伝しか出てこなかった。凄いなんてものではない。

 ここから考えるに上谷さんが謀反を企てることも知っていると考えたほうがいいだろう。やはりとんでもない奴だな。敵は。


  全く情報が得られなかった。思わず俺は肩を落とす。相手が強いことぐらいしか情報を渡せなかった上谷さんは申し訳なさそうにしていた。気持ちを切り替えよう。パンッと自分の頬を両手で叩き活を入れる。で、どうしよう。情報戦をする、と言ったものの情報がここまで少なく、尾行も出来ない以上図書館で書物を漁るとかネットで調べるぐらいしかない。

 困ったな~


(久しぶりだな)

お、レインか。どうすれば良いと思う?

(簡単だ。永遠に使い魔となる存在を作ればいい)

それでも相手は気づくだろ

(これだから、平和ボケしている奴は。はぁ、いいか)

ああ


(そいつは魔力の存在と魔力量を感知して気づいたんだ)

そう断定する理由は?

(忍者は今も国家に仕えて、諜報や暗殺をしている。つまり、監視カメラなるものや赤外線センサーなるものがある中それが出来ているんだぞ?例え、それらキカイの探知能力を普通に凌駕する超人だったとしても、使い魔なら潰されてもかまわんだろ)

なるほどな。確かに使い魔ならバレても問題ない。

(ただ、一時的に使い魔にする魔法は使うなよ?)

何でだ?

(魔力ですぐバレるからな。使い魔になるように改造する魔法を使え)

わかった。


 レインには助けられてばっかだな。そんなことを思いつつ俺は教えてもらった方法を上谷さんに教えた。


 「使い魔か、よく魔女が従えているアレだな?」

「そうだな。よくお話で魔女がカラスとかを飛ばして見てたりする奴だな」

「ということはカラスを魔法でどうにかする、ということだろうか?」

「そうだ」


 口ぶりから察するに、忍者はやはり使い魔を用いることは無いらしい。諜報や暗殺のプロである忍者が使い魔を持っていてもなんら不思議ではなかったんだけどな。

 俺の憶えている記憶では使い魔を試しに作ったことはあっても使い魔を使って備考したことは無いことになっている。要するに上手な使い魔の扱い方がわからない。上谷さんも知らないとなると使い魔をそのまま着けさせるぐらいしか思いつかないぞ。レインも口を出してこないしな。


「使い魔はどんな動物でも選べるんだが、選んでくれないか?尾行のことはさっぱりわからんからな」

「もうそろそろご友人来てしまうでしょう。なので時間がないので欲しい能力を挙げますね。居てもおかしくない、夜目が利く。この二つですかね。では」


 正直に言うと俺はすっかり二人を待たせていることを忘れていた。上谷さんが気づいていなかったら湯川さんに内容を聞かれる、幼なじみもこの事件に巻き込む、といった事態になってただろう。

 上谷さんナイスだ。


 俺はその二つの条件に合う動物を考えながら二人の元へと帰った。随分と長いトイレになってしまったな...


  俺が二人の下に戻ると当然、最初に追求の言葉を紡がれた。


「で、何をやってたの?トイレにしては明らかに長すぎるし」

「そ、それはだな」

「私が説明する」


 湯川さんは俺を手で制し、そう言った。湯川さんってこういう隠し事苦手そうだけどな。大丈夫だろうか。まあ考える時間はだいぶ有っただろうし、ここは湯川さんに任せますか。俺にはいい言い訳が思いつかないからな。


「男子トイレが故障していた」

「男子トイレが?」

「そう。私が見に行った時は男子トイレの前まで水が見える状態だった」

「大丈夫だったのか?」

「そこまでは知らない。ただ、帰ってきたということは大丈夫になったんだと思う」


 湯川さんナイスだ!よし、この流れのまま俺は持っていくぜ!


「そうなんだ。だから俺がトイレを直していた。男子トイレは無事に直し終わったぞ」

「トイレなんて直す技術を仁は持っているのか??怪しい」


 俺の頬に一筋、汗が伝った。大丈夫だ。ここは冷静に答えればなんとかなる。


「ああ、これでも国立理科高校の生徒だからな。こういった技術は持っておいた方が良いと思って秘かに習得しておいた」

「そうか。それにしても、それ相応の道具が必要だろう。よもや道具箱を持ち歩いていたわけではあるまい。それはおかしくないか?」


 流石だな、幼なじみ。ビシバシと矛盾点をついてくるぜ。でも、あいつは嘘をつくことを余りしてこなかったはずだ。

 不幸を乗り越える為に嘘を付く必要性があった俺にぶがあるな。


「トイレにはすぐ直せるように修理キットが置いてあったんだ」

「女子トイレにはそのような物は置いてなかったが」


 くっ、相手が確認できないことを言えば相手もなにも返せない作戦を実行したつもりだったが、確認できることだったか。

 いや、待てよ。男子トイレはアイツでは確認できない。男子トイレと女子トイレの差を考えるんだ。女子トイレは見たことないが女子は立って小をすることはないらしい。


 つまり、座る用のしかない。スペースは同じなのだから占有面積の関係性上男子トイレの方が置いてあるトイレが多いのではないだろうか。

 憶測でしかないがこれに希望を託すしかない。


「男子トイレの方が占有面積の関係上トイレの数が多いんだ。だから、男子トイレには置いてあったのかも。それに、男子清掃員の場合、女子トイレに置いてあったら取れないだろ?でも男子なら女子の清掃員でも、あんまり抵抗することもない」

「た、たしかにな」


 勝った!この舌戦勝ったぞ!!


  俺たちが何とか舌戦に勝利し、幼馴染は渋々といった感じで納得をしてくれた。まあ、「仁のことだから危ないことに首を突っ込んでいるだろうけど。自分を大切にね」と言われてしまったけどな。

 危ないことをしている、という漠然としたことしかバレていないなら何の問題もない。俺はそんな風に開き直りつつ、湯川さんに聴く。


「湯川さん、迎えの車はいつ来るの?」

「後、1時間くらいかな。勉強の時間が必要だし」


 帰りも湯川さんに送って貰うことになっていた。湯川さん、悪いな......ご厚意に甘えて。

 まあ、そんなことを湯川さんに行ってもはぐらかされるのは目に見えているから言わないけどな。


「湯川さんって高校の勉強をしないと、付いていけないのか?俺は付いていけないけどさ。湯川さんがそうだとは思えない」

「紗理奈は生物学が天才的なだけだからね。でも、生物学では高校生のレベルとは思えない、超高校級だ!!という人も居る暗い!!!他が出来なくても勉強する必要はないよ。生物学で頑張れば落第はないからね」

「そうだけど、他の分野も頑張りたい」


 そういえばそうだった。国立理科高校では成績で上限があるのはおかしいということで、5以上があるんだよな。

 特定分野に秀でる人のために5以上を取れば1ごとに落第を1つ回避出来る。おかしな制度だよ、全く。過去最高の成績は14とかいう噂だ。何をしたらそこまで取れるんだろうか。

 ちなみに、パーセントで成績を決めているわけではないらしい。加算式で、ある点数を超えると2みたいに決めているようだ。

 課外活動でも、申請すれば点数が取れる。


「やっぱり異質だよな。理科高校は」

「まあね、よく高校と認められたと思うよ」

「それには、同意する」


 まだ時間はあるようなので、友達訓練を続行するべきだな。俺はそんなことを考えて言った。


「じゃあ、再開するか」

「うん」

「そうだね」


 俺達は再び歩き出す。そういえば今、何をしてたっけ?あの件強烈過ぎて何をしてたか覚えてないぞ...じゃあ、聞くかってそれはタブーだったっけ?彼女たちにタブーを教えることにして聞こう。

 いや、潔くないな。普通に聞こう。


「失礼を承知で聞くが、今、俺達は何をしてたんだ?」

「そういえばなんだっけ?」

「わからない。ただ、このフロアで何かをしていたのは紛れもない事実だと思う」


 全員わからないらしい。湯川さんはともかく、なんでアイツは忘れてんだ?だいじょうぶだろうか。ヘマをやらかさないか不安である。

 俺は一抹の不安を抱いた。なんか、腹が減ったな。


「小腹が空いたんだがフードコートとやらに行かないか?」

「そうだね。腹が減ったよ」

「私も」


 満場一致で行くことになった。俺は生まれてこの方フードコートに行ったことがないからな。結構ワクワクしている。どんなところなんだろう。

 俺たちがフードコートに着くと、驚きの光景が広がっていた。


 なんと、カウンターしかない店がずらりと立ち並び、そこで食事を貰い数多ある机で食べていたのだ。店で机をシェアすることによって、店の敷地の縮小を行なっているのだろう。

 だが、店側にはメリットが少ない気がする。得をするのは客とこのデパートだけな気がするぞ。まあ、何はともあれ客としては便利である。


「わたし、チキンカツ食べたいな~」「わたしは牛丼が食べたい」「私はアイス食べたいんだけど」となったとき、普通は妥協をすることになるだろう。だが、フードコードならばそんなことは起きない。

 全員の希望を叶えつつ、みんなでワイワイと食べることが可能なのだ。デパートは大抵なんでもあるし、大勢で行く所としてはとても良いところだろう。

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俺って天才魔導師なのか!?~前世は天才魔導師の高校生~ 龍虎 @Ryuko1

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