第14話 サイカイⅡ

 反射的に隠れたもののさすが忍者と言ったところかすぐにバレてしまった。名前を呼ばれてしまったため諦めて忍者の前へと進む。

 湯川さんは驚く素振りを見せず至って冷静だ。俺はなぜ湯川さんがここにいるのかが不思議で質問する。


「なぜ、湯川さんがここに居るんだ?」

「何でトイレに行くと嘘をついて屋上に行ったのか気になったから」

「どうやってわかったんだよそんなこと」

「ベビー用品を含むコーナーにトイレは無いから」

「まあ、そうだよな」


 動揺していたせいか大きく単純なミスをしていたらしい。


「で、何でお前一人でそいつと一緒にいるんだ?」

「それらしい人がいるから声を掛けてた。彩科あやかなら気づいてないようなので置いてきた」

「そうか。で、あいつとは何を話したんだ?」

「何も」

「ちょっと話があるから帰ってくれ」

「いや」

「帰ってくれ」

「いや」

「帰ってくれ!」

「いや。それに必要になるって親が言ってた。わたしにする助言が間違ってたことは無い。それにあなたの力になりたい」


 そう言う湯川さんの目には確かに眼差しに覚悟というかそんな類のものが宿っていた。


(取り込んでおいたほうが良いんじゃないか?頭脳として)

(巻き込みたくないんだけどなー)

(使えるものは使った方が良いだろう。それにあの子は勘も鋭い 。あの頭脳と勘を持っているならいい魔法師になる)


 取りあえず訓練をしてから決めるか。熱意は本物だし、実力があったらその熱意に免じて関わらせよう。


「力を付けてからな、今は引いてくれ」

「わかった」


頷いた湯川さんは素直にトコトコと去って行った。そうして一対一になった途端、忍者が口を開く。


「率直に言わせてもらう。一緒に忍者を倒してくれ」

「忍者を倒せ!!?」


 どいうこと...だよ、お前も忍者じゃじゃないか。それに俺を殺そうとしてただろ。あの悪役ぶりはどこにいったんだよ!おかしいとは思うのだが何度見てもあいつの目は真面目そのもので、先の声も真摯さが篭っていた。

 俺が質問しようと口を開こうとすると何を言おうとしたのか判ったのか、手で制して忍者は言った。


「確かに演技とはいえ攻撃やあんなことを言った私が頼むのは筋違いです。それはわかってます、でも!!!」

俺は遮る様に言う。

「それはいいんだ。ただ何故、忍者のお前が忍者を倒すのを依頼するんだ??」

「そ、それはだな。忍者は国家転覆計画を遂行しようとしてる。それに君は強い。君なら出来る!」

「忍者たちが国家転覆計画か....」


 『忍者』というのは君主に仕えて君主の命令を遂行する忠実な暗殺者だったはずだ。それに相模さがみとの会話で今仕えているのが国家だというのはハッキリしている。疑問に答えてくれた。


「確かに奴が来るまでは誇り高き忍者だったのだ。それなのに来てからは私欲に溺れる奴が後を絶たず、それに、貫き通した高潔な忍者はそういった連中に消されていった。今、行動を起こそうと思っているのは私くらいだろう」

「......奴っていうのはどんな奴だ?」


「突然現れて、心の隙間に漬け込み、国家転覆計画の支持者を増やしている卑しい奴だ。性別は女でグラマラス、整った顔立ちをしているな。名前は一族の苗字に麻耶まやと名乗っている。確かに忍術は使えるが確実に奴は我が一族ではない」

「なにか理由があるのか?」

「忍術を呼び出す為の印の結び方が僅かに違うのだ」

「そうなのか....要するに妖艶な美女で、忍術が使える忍者以外か」

「それに何故か奴が忍術を使っても結界から知らせが来なかった」

「なるほどな」


ここから鑑みるにその女を倒せば計画は倒れそうだな。そしてその女は一族の人間か国家の上層部か紫藤しどう家に連なる者の可能性大だ。

国家の上層部は甘い汁を吸っているだろうし可能性は低い、一族の人間である可能性も低い、紫藤しどう家に連なる者のと考えるのが妥当か。ここから導ける方針としては地道に計画に関わっている奴から情報を聞き出すか紫藤しどう家を調べるかだな。

前者はバレる可能性が非常に高いので後者にしよう。


「ということで良いか?」

「わかった。忍びの得意分野だ。それで行こう」


情報戦が始まることとなった。

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