第9話 平和な戦場Ⅱ~異常な家Ⅰ~

 家に帰るとリビングとは逆の左側にある階段を上り母の部屋に行き、なにやらパソコンをいじっている母に俺は言う。


「ちょっと、友達の家に行くから!!」

「何時ごろに帰ってくるの?」

「一時間後から二時間後ぐらい」

「わかった。友達もうできたんだね」

「うん」

「じゃあ、気をつけて行ってらっしゃい」


 何かだましたようだが、仕方ない。なぜか母は幼馴染以外の女の子の居る家に行こうとすると激しく反対する。

 最近で言えば12月23日に高校に受かるかどうかがかかっているので万全を期したいらしく頭を下げて「数学の講師役になって」と言われ俺が母に言ったところ「絶対に行くな」と母に言われてしまった。


 なので、恐らくだが幼馴染と湯川さんの家に行くということを言ったところで絶対に行かせないだろう。あまりこういう手は使いたくないのだが。


 幼馴染とは雲泥の差かも知れないが俺も湯川さんの家というのはとても気になる。確かに純粋に研究所や最先端の技術も気になるのだが、それを見るのが怖いのに見たいという怖いもの見たさの方が強いだろう。

 他人の家をどうこう言うべきじゃないが湯川さんの家はパワードスーツがあるという時点でもう怖い。


 幼馴染は俺が見たことのある映画と違い日本のHALは医療用だと言っていたが十中八九医療用のパワードスーツではないだろう。もし医療用のパワードスーツならば、もう幼馴染も知れるようなぐらいには最低でも発表されているのだから湯川さんが慌てているのを表に出してしまうぐらいに動揺することはない。

 だから、映画のような軍用のパワードスーツの可能性が高い。このことから、もしかすると湯川さんの家は最先端武器がいっぱいあるのかもしれないのだ。


 やはり湯川さんの家は怖い。それに並ぶようなヤバイ奴が他にも最低でもパソコン、機材の二つはある。パソコンはもしかしたら世界一のスパコンだったりしてな。まあ、そんなことは有り得ないと思うが。

 これを考えつつ着替えを終えてジーンズに青色のチェックシャツになった俺は階段を降りて赤いスニーカーの紐を結び俺は若干ワクワクしながら家を出た。


 家を出ると待ち合わせもしていないのに幼馴染が居た。もちろん素通りなんてことはせず、俺は幼馴染に声を掛ける。


「偶然あったな」

「そうだね、じゃあ一緒に行こう」


 まずは俺たちは学校へ向かい、そして覚えている道にそっていった。行く道から考えてショートカットできたのだが、迷うと困るので止めておいた。

 そんなこんなで俺たちは湯川さんの家の前に着いた。幼馴染は家に着く前からしきりに「どんなんだろう」とか「楽しみ」と興奮した様子で言っている。


 家の前に着いてインターホンのボタンを押そうとするとドアが開いた。もちろんそこからは湯川さんが出てくる。

 すると、インターホンからか、女の声の合成音が聞こえてきた。


「お嬢さまから体温の上昇を検出しました」

「恐喝強盗、悪質な訪問販売の可能性0%、ただの知人の可能性4%、恋人の可能性11%、友人の可能性12%、研究者の可能性52%、そのうちお嬢様をだます可能性5パーセントです」

「友人、今は決して恋人ではない」

「お嬢様から若干の声の震えを検出」

「パターンから恐怖でなく緊張と予測」

「OK。警戒レベルを2に下げます」

「なぜに2?」


 俺はつい口から疑問が出た。すると、客人と認識してくれたからか恐らくコンピューターかと思われる彼女『?』が答えてくれた。


「アンサー。お嬢様に不埒な行為を働く可能性があるからです」

「いや、幼馴染がいるからたとえ俺がそういう奴だったとしても出来ないだろ」

「お嬢様の体温の上昇を検出しました」

「アンサー。3ピーなるものが世にはあるからです。それに、あなたなら普通の女性ならば二人を同時にすることも可能です」

「確かに可能かもしれないが3何チャラってなんだ?規制音でよく聞こえなかったんだが?」

「嘘かを声の震えから判断しています」

「アンサー。嘘ではありません。驚きです。お嬢様ですら知ってはいますよ」

「シャットダウン」

「出来ません」

「シャットダウン」

「出来ません」


 湯川さんでもシャットダウンは出来ないようだ。それにしても何で湯川さんは顔を真っ赤にしているんだと、思い横を向くと幼馴染も顔を真っ赤にしていた。

 良くわからない。そんなことを思いながら家に幼馴染と入ると天井からアームが伸びてきて丁寧に紐を解いてくれた。


 ただ、それだけだが結構負担は軽減されるだろう。なぜ、そこを軽減する必要があるのかという疑問は残るが。


 そんな疑問を持ちながら俺の目の前に横から射出されてきたスリッパを履くと家を見回した。外観はいたって普通の家である。

 俺の左側には靴入れがあってその上には白衣姿の湯川さんのおじいちゃんやおばあちゃんらしき人まで含めた家族写真が置いてあるし、下はただの木製の床だ。


 別に床や天井、壁が金属ということはないしいたって普通の家だが、マギナに聞いてみた。


「外観はいかにも普通だけど?」

「外観は見せかけ。確かに表面は木材だし、壁はコンクリートの壁だけどコンクリートはダクタルという硬いコンクリートで木材は下に金属が仕込まれてる」

「しかも床が割れてガトリングレールガンとか壁からレーザー砲とかもあるから危険」

「お、おう」


 俺は予想以上にアレだったのでたじろいでいると人工知能が追いうちをかけるようにして言った。


「試し打ちしてみましょうか?」

「いや、や、やめとけよ」


 そんなに危ないものを出されるとか言われたので俺はさらにたじろいだ。そんな中湯川さんが言う。


「アダム、それはシャレにならない」

「わかりました、お嬢様」

「フウ」


 俺がため息を思わず吐くと同時に幼馴染が再度興奮して早口で巻くし立てた。


「人工知能がジョークを!?どこまで進んでるんですかこの家は!!」

「人工知能ということすらとても凄いことなのにジョークを言ったり一所有者の命令を拒否したり、危害を加えることのできる武器を操るなんてどんだけ進んでるんですか!!!」


 興奮しすぎたせいか言い終わってハアハアと息を弾ませている幼馴染に湯川さんが言った。


「確かにジョークは言えるけど、いざとなったらこのリモコンを使って停止させることは出来る」


 そう言いながら渋い銀色のリモコンを取り出しながら湯川さんは言う。


「わたしは所有者じゃない。所有者は父でそうゆう危険物を扱うときは父の承認が必要。承認しないで無理やり使おうとするとプログラムが自動的に物理的に記憶装置ごと消滅する」

「ちなみに、アダムに命令を出す本体と命令を出される側、その命令をハッキングは出来ないから安心」

「すごいですね」


 そして、やっと幼馴染がスリッパを履く。するとアダムというだろう人工知能の道案内のアナウンスが流れはじめた。


「まずご学友の左手にありますのはお嬢様、つまり沙理名さりな様の父方のご祖父様やご祖母さまを含めた五人でこの地下にあります研究所でとった写真です」

「これはとある兵器を作ったあとの写真なので、本当はこの中に兵器が映っているのですがカモフラージュ用の写真として置くにあたって兵器は載せられないの画像処理で除かれています」

「ちょっと待てよ。そんなこと言っていいのか?」

「アンサー。お嬢様のご学友なら何も問題は無いと思いますが?」

「うん、問題ない」

「結構問題あると思うけど!?」

「だよな」


 幼馴染も同じことを思ったようだが本人達がそういっているんだしこれで「問題だ」ということになったら記憶を映画に出てきたあのライトみたいな装置で消されたり、俺たちが殺されることになるので問題ないということにしとこう。

 にしても兵器を作ったとか恐ろしいな。それにしても何で兵器なんか作ってんだ?それについて聞いてみた。


「何で兵器なんか作ってんだ?」

「アンサー。わたくしの予想ですと約35パーセントの確率で数十年の間に世界大戦が起きるからです」

「なんで、わざわざ優雅な感じの声に変えてさらっと凄いこと言ってんの!?そういうのは言ったらマズイだろ」

「あ、口が滑ってしまいました。抹殺しますね」


 そういうと本当に床がパックリ別れて白い流体的なカッコイイデザインの固定砲のようなものが現れて俺に向けられる。すると湯川さんが無表情で言った。


「そういうジョークは湯川家でしか通じない。普通の人からしたら冗談に聞こえない」

「確かにお嬢様以外は冷や汗を垂らしていますね。すみません」


 そう言うと固定砲のようなものは床に吸い込まれていきパックリ割れていた床が元に戻る。それが終わると湯川さんがぺこりと頭を下げていった。


「すみません」

「いや、別に大丈夫だけど」

「そうそう、あの人工知能が悪いんだし」


 その会話が終わると人工知能には罪悪感という概念が無いのか、それともあの一幕を見てもう終わったと思ったのかすぐに案内を始めた。


「右手にやや前方に見えるのは階段ですが階段の下の床を専用のカードでかざすと地下室への階段が現れます。お嬢様のご学友の中にはそういったものに興味がある人もいるようなので見せれるところだけは見せましょう」


 アダムという人口知能がそう言い終わると地下室が見れるといわれたからか幼馴染は興奮した様子だ。俺もどんなものがあるのか興味があるからとても楽しみだ。

 いきなり階段に降りると怪我する可能性があるのですこし二階への階段を上り俺と幼馴染は待機する。


 湯川さんがカードを今、床にかざした。すると、ピッという音をどこからか聞くと壁の一部が正方形のふたで上に持ち上げられた。

 そしてその空いたスペースに正方形に切り取られている床が入っていく。最後には真正面の壁が持ち上げられてように上に上がっていった。


 そこで何も起こらなくなった。どうやら、もう入れるらしい。


 下に見えている階段と通路はこの家とは違い金属が丸出しだな。そんなことを思いながら体を少しかがめて階段を降りる。

 すると最後尾である湯川さんが完全に床の下に入った。


 湯川さんは湯川さんの隣にあったちょうどカードのサイズぐらいの石にカードをかざす。するとさっきのを逆再生したみたいに壁の一部が正方形のふたで上に持ち上げられ、その空いたスペースから正方形に切り取られている床が来て、穴をふさいだ。


 それを確認した俺はなぜか先頭になっているので、黙々と降りていく。少し降りるともう体をかがめる必要はなくなり楽になった。

 そうすると今度は螺旋階段になった。別に暗いわけではなく狭い空間の中に家のと同じ証明を使われているのでむしろまぶしい。

 ここにはアダムのセンサーが無いのかスピーカーが無いのかアダムは喋らない。


 体感で一分ぐらいだろうか、それぐらい階段を降り続けたら通路が見えてきた。それと同時にアダムの声が聞こえる。


「お待ちしていました。ご学友さま」


 そしてみんなが通路に出終わるとマギナが先頭にならべ変えた。すると、アダムが説明し始めた。


「ここはいろいろな武器や生物、電化製品などを保管するための倉庫とお嬢様はもちろん、旦那様や奥様が研究するのをかねているフロアです」

「ですが、危険な研究はもっと地下で行います。もちろんですがいくらお嬢様のご学友といえどもお連れすることはできません」


 幼馴染が言おうとする前にアダムはわかったのか幼馴染に釘を刺した。幼馴染は残念そうだが、すでに見せているガトリングレールガンよりもヤバイものなんていうのはごめんだ。

 まあ、あれよりも恐ろしいものといえば戦闘機や戦車ぐらいなものだ。何だかこう考えると普通にありそうだなと思ってしまう。というかあるだろう。


 そんなことを考えている間に研究所に行くことになったらしい。アダムが説明する。


「これから行くのはいわゆるパソコンルームです」

「ここは一番外と比べても技術レベルが近いところです」

「半導体を加工する技術がここには無いのでパソコンに関しては技術レベルが近くなっています」

「なんで?半導体を加工する技術が無いとパソコンに関しては技術レベルが近くなるんだ?」

「アンサー。CPUやSSDが半導体で出来ているからです」

「確かに、そうだと処理速度や読み込み速度が他と変わらないな」


 俺は納得したと、同時に驚いた。ということはこの人工知能は他と変わらない処理速度でも処理できるということだ。

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