修羅場る日

第8話 平和な戦場~帰宅修羅場~

 そんな風にため息を吐いた後、俺はすぐに端に寄せておいたバッグを背負ったあと俺は屋上のドアを開きタッタッタッタ階段を急いで下りていく。

 そして1階に着き、俺は下駄箱に向かった。下駄箱に着くとなにやら楽しげ・・ではなくちょっと険悪なムードが漂わせながらも話す。いや、言い合っている幼馴染と湯川さんが居た。


 俺はそこに近づきたくはないが俺の靴が入っている下駄箱はちょうどそこなので仕方なくそこに早足で飛び込んだ。

 そして、靴を取ろうとした瞬間一斉に二人が俺の方に向いた。湯川さんは微妙だがはっきりとわかるレベルで怒っており幼馴染は鬼の形相をしている。

 そんな風な表情をしている二人が一斉に言った。


「「「どっちが可愛い!!?」」」

「何で、それを俺に聞くんだよ!!」


 俺は全力でわざとツッコンだ。すると、今度は顔を僅かに赤らめながら湯川さんが顔を俯かせ、幼馴染は顔を真っ赤にしてフリーズしている。

 幼馴染に関しては湯気を出していてもおかしくないほどの真っ赤具合だ。そんな風にからかった結果を楽しんでいる俺に湯川さんが言った。


「恥ずかしい。愚問だった」

「そういうことかよ!!」


 今回は本当にツッコンだ。てっきり湯川さんもつい、俺にどっちを取るのかという的な質問をしたのを恥ずかしがっているのかと思ったのだが、解りきったことを聞いたことを恥じているとは思わなかった。

 やはり、天才はどっかずれているのかもしれない。そんなことを思っているとフリーズから回復した幼馴染が俺に慌てた様子で言う。


「あ、アンケートだよ」

「じゃあ、そこの男子にも聞いたらどうだ?」


すると、幼馴染が怒っているのか頬をぷくーっと膨らませていった。


「もう、終わったッ」

「じゃあ、帰るわ」


 俺はずっと手に持っていた靴を石畳になっている方の床に置き俺は靴の紐を両方結んで俺は空いているガラス扉の方に進んでいくすると、後ろから通常よりもかなりでかい声で湯川さんが声を掛けてきた。


「待って!」

「解った」


 別に急ぐ用事は特にないので俺は湯川さんの方を向き待っていると幼馴染も声を掛けてきた。


「わたしも!!」

「ああ、」


 待っている間俺はなぜ湯川さんが着いてくるかを考え始めた。まず、湯川さんは俺には恋愛的な好意はないだろう。それは「おもしろい。よろしく」といったところから解る?

 そうか、湯川さんは俺がおもしろいから着いてくるのか。そんなことに気づいた俺は右隣の湯川さんのせいで何かヤバイことが起こりそうだなとも思っていた。


 前言撤回だ。もうヤバイことが起きていた。そのヤバイこととは湯川さんと幼馴染の凄まじい視線で見つめ合っていることだ。

 それはそれは恐ろしく湯川さんの背中に般若が、幼馴染の背中の後ろに顔は良く見えないが黒髪の長髪で額に太陽を模した金色の飾りと神々しく光る着物を着けている天照大御神アマテラスオオミカミがいるように見えてしまう。

 というか、なんで幼馴染の背中の後ろに天照大御神アマテラスオオミカミが見えるんだ?


 そんなことを思っていると俺の右腕になぜか小ぶりで柔らかい二つのものに挟まれているような感触がした。そこで右を見ると有り得ないことが起こっていた。

 なんと湯川さんが俺の腕を抱くという恋人同士でもちょっとラブラブしすぎていると思うことをやっていたのだ。


 やばい、いろいろと。まず、俺の顔がすごい熱い。理由は簡単だ。女の子に胸を押し付けられるというのは非常にドキドキするからだ。そして、その次は他の人に見られてしまったということだ。

 男子から怨みのこもった視線が感じられるし女子からは怨みのこもった視線とニヤニヤとした笑顔と羨望の視線、そして、ほんわかな視線を向けている人がいる。


 ただ、例外なく俺に哀れな視線を向けてきたり無関心な人がいないことからほかの人は俺と湯川さんが人前で見境なくイチャイチャするカップルに見えているのだろう。

 そして、その怨みのこもった視線を向けている男子の中にあのチャラ男も混ざっていることだ。


 こんなところでも面倒くさいのかよ。せめて日常ぐらいは平穏に送らせてほしいものだ。フゥまた俺はため息をついた。

 そんなことを考えているともっとマズイ事態になった。それは何かといえば左上に柔らかくて大きくて柔らかいものが俺の左腕を挟んでいることだ。


そして、俺は突っ込む。


「なんで二人は俺の腕に抱きついてんだよ!!」


 すると、ツッコむと二人は慌てて急に腕から離れた。すると、幼馴染は顔を真っ赤にしてフリーズして、湯川さんは顔を僅かに赤らめながら顔を俯く。

 激しいデジャブ感を俺は覚えながら次くるだろう湯川さんの言葉を待った。すると、案の定湯川さんは言う。


「恥ずかしい。もしかしたらと思ってたけどわたしにドキドキされるのがこんなに恥ずかしいとは」

「何でだよ!」


 またしても俺は本当にツッコんだ。意味が解らないよ。なんでドキドキされるのが恥ずかしいのかが。そして、本人は茶番をやっているつもりは無いのかも知れないがあきらかに茶番に見える三回目を起こす。

 と、俺は他の遅く帰る生徒に迷惑なので二人の腕を掴みガラス扉の空いているところから下駄箱を出た。


 俺たちは下駄箱から出て取り合えずそのまま校門を出る。ちなみに、国立理科高校の都市伝説にこういうものがある。


『危険なウィルスが漏れでる恐れがあるのでこの学校の柵は学校を隠すほどの高さにのびて屋上からはちょうど立体の上の面になる金属の板がのびていき学校は密閉され校門はその立体のドアになる』


「なんで?」

「お、幼馴染だから!!」


 おっと、つい意識がアイツ等の方に。これはさすがに国立理科高校といえど無理だろう。百歩譲ってあの柵といえるかどうか微妙な、いや、柵ではないアルミニウム『推定』の板が縦にのびた。

 としてもあれと同じようなものが横にはのびれないだろう。なぜかといえば簡単でこの世には重力というものがあるからだ。


 第一、どうやって板と板をつけるというのか、別に板は先端がぼこっと?もしかして電気磁石が仕掛けられたりして。まさかな。


「痛い、痛い!!!」


 そんなことを考えていると、現実に引き戻されてしまった。今の状況は非常にマズイ状況だ。主に俺の外聞と腕が。


 で、どんな状況か、というと俺の右腕はいつもの通りのルートである右に行こうと幼馴染に抱きつかれながら引っ張られ、一方左腕は帰る方向が真反対なのか左に湯川さんに抱きつかれながら引っ張られているという状況だ。

 そして、これが痛い。火事場の馬鹿力なのかなんだか知らないが二人はその柔らかい腕の感触からは想像できないような力で引っ張っているのだ。


 もしかしたら、足腰を頑張って鍛えているのかもしれないが。ただ、見た目では普通の女の子と変わらず柔らかそうではある。

 そんなことを考えていると徐々に体が湯川さんが劣勢なのか幼馴染の方、すなわち右側に引っ張られていく。劣勢のほうである左側に居る湯川さんを見ると一生懸命に俺の腕を引っ張っていた。


 面白いからという理由でそれほど頑張るものなのか?と思ったのだが湯川さんはそれのためにそれほど頑張るということなんだろう。

 そんな湯川さんが可哀想になったので俺はそこそこ大きい声で言った。


「痛いからちょっと止めてくれ」

「わかった」

「わかったけど普通に帰るでしょ?」


 そう言う幼馴染に俺は自分でも顔が赤いだろうなと思えるほど顔を熱くして声音と態度は何気ない感じで耳打ちした。


「反対方向で行った方が久しぶりに長く喋れるけど」

「うん、そうだね」


 幼馴染は顔を赤くして小声で言う。恐らくは俺に言外に長く喋りたいといわれて顔を赤くしているのだろう。

 騙したことによるちょっとした罪悪感と恥ずかしいセリフ言ったことによって俺は恥ずかしさを感じていた。


 そんなこんなで俺たちはわざわざ遠回りして湯川さんと一緒に帰ることにした。というか湯川さん、俺たち二人が右側に行こうとしているんだから普通はあんたがついてくるほうではないのか?

 俺はそう問いかけようとしたが、湯川さんのどことなく不機嫌そうなオーラに気づき止めた。


 なぜ、無理を通せた湯川さんが不機嫌になっているんだ?女子に関しては少しは解るものだが、湯川さんに関してはさっぱり解らない。やはり、天才というのは俺みたいな頭が凡人並みの人には解らないのだろう。

 そんなことを考えるていると幼馴染が喋りだした。雷にでも打たれたのかなんと勉強の話ではなく休日に遊びに行こうという話だ。


 ちなみに言うが幼馴染と休日に遊ぶというか会うのは幼馴染の部屋でしかも勉強だけしかしたことが無い。これを聞けばこの話をする異常さがわかるだろう。


「仁、次の日曜日にデ、デパートに行かない?」


 もちろんこのセリフを聞いた俺は心底驚き思わず口から確認の言葉が出る。


「もう一回言ってみて!!」

「仁、次の日曜日にデパートに行かないか?と言ったけど?」

「病院にいったほうが良いんじゃないか?」


 俺はほとんど本心からそう言った。すると、幼馴染は慌てふためきながら理由を言う。


「今ままでそういうことはなかったけど友達も出来たし、そういうことが友達が増えるとありそうでしょ?」

「確かに」

「だから、予行練習をしようと思って」

「なるほど」


 確かに筋が通っている、と納得すると同時に俺はものすごい恥ずかしさを覚えた。予行練習という名目があるもののこれはデートでもあるのだ。というか、相手もデートと思っているだろう。

 なぜかといえばさっきはあまりにも大きい衝撃を受けていたから気づかなかったが提案者である幼馴染は頬を朱色にしていたからだ。


 無視されて話をされているからか湯川さんから漂ってきている不機嫌な雰囲気が徐々に濃くなってきている。そして、その発生源である湯川さんが言った。


「だったら、わたしが行けばいい」


 すると、幼馴染はこういう風に言われる可能性を解っていたのかすぐに湯川さんに返した。


「友達が一緒に言ったら予行練習の意味が無いでしょ?」

「じゃあ、二人で行くよりも緊張しないと思うからわたしも行こうか?」


 幼馴染が顔を真っ赤にしながら俯いてしまった。すると、それを本当に肯定のうなずきと取ったのかはたまたわざとかは解らないがそれを肯定と受け取り湯川さんが言った。


「じゃあ、日曜日にわたしの家の前で十時に来てね」

「わかった」


 幼馴染はさっきの「二人で行くよりも緊張しないと思うから」という一文で俺のことを異性と意識していることが湯川さんにバレてものすごい恥ずかしいのか肯定や否定の声がでなかった。


 そんな中歩いて行くとまるで鉛筆みたいな形をしていてその斜面に太陽光パネルがはっついているビルやこげ茶色のビルなどを通り過ぎいつも登校中。

 いや、いつも流れている車のエンジン音や通り過ぎる音を聞きながら俺たちは喋ることがないので無言で歩いていた。そんなか奇妙な家が二つあった。


 いや、ビルではなく普通の家があること事態が奇妙だろう。そんな中湯川さんが口を開いた。


「この一見普通そうに見える家がわたしの家でお隣のいかにも金持ちな家は母の実家」

「その一見普通そうに見えるというのはどういう意味だ?」


 俺はそこが妙に引っかかった。国の推薦を受けられるほどの研究というのはあんな普通そうな家では出来ない。それは素人である俺ですらわかることだ。つまり、見た目とは裏腹に何かヤバイのだろう。

 スパコンが置いてあるとか地下にパワードスーツが隠されていたりとか。まあ、そんなことはさすがに無いだろうが。そんなことを考え終える頃に湯川さんが言った。


「この中には科学の最先端が詰まってるし研究所もかねてる」

「ま、まさか。あの湯川家ですか!?」


 幼馴染はかなり歩いたので時間が経ったから復活したのか凄い驚いている。ちなみに湯川家というののどこが凄いのかはさっぱり俺にはわからない。

 そんなことを思っていると湯川さんが答えた。


「そうだけど」

「え、あの教科書にも載る超有名人の湯川秀樹や半導体内および超伝導体内の各々におけるトンネル効果の実験的発見をした一員の湯川純一、そして核磁気共鳴画像法を考えだした湯川秀信などが同じ家から出てるというあの噂は本物だったんですか!?」

「ただ、湯川秀樹は違う」

「そうなんですか」


 湯川さんがそう言うと興奮していた幼馴染は興奮が収まった。ただ、この説明じみたセリフは無知な俺には助かる。

 つまり、湯川さんは天才一族の湯川家の一員ということだろう。なんと恐ろしい。そんななか湯川さんが言った。


「わたしの家は物理系に強くて大抵はこの例から解るように研究が機械系に組み込まれる人たちなんだけどわたしは例外。お父さん、すなわち湯川秀信みたいに最終的には生物でも機械系に組み込まれたりはたぶんしない」

「つまり、この家の中の異常な機材やパソコン、パワードスーツと関係ない」


 そう最後に慌てたように見えないことも無い湯川さんが付け足した。恐らく、この家の中はテクノロジーが飛躍的に進歩しているのだろう。そして、湯川さんはこれらを作った人たちのように頭がおかしいとか言われたくないので最後の言葉はつけたしたに違いない。

 でも、俺と幼馴染は中を見ないから言わなくてもいいような気がするが。


 そんなことを考えるとその考えの前提を覆すようなことを湯川さんが言った。


「じゃあ、行こう」

「どこに?」


 幼馴染が困惑した顔でそう尋ねるのも当たり前だろう。この話の流れで行けば湯川さんの家であることが七割、隣の湯川さんの母親の家に行くことが二割、湯川さんが常人と逸脱していることを考えて一割はその他という内訳だ。

 ただ、常識から考えて相手の親にも断りをいれず、下校途中で拘束時間が長くなるであろう家に誘うというのは有り得ない。


 だから、幼馴染は他の場所に行く可能性が高いと考えて何処に行くのか聞いたのだろう。

 まあ、湯川さんは自分の家に招く気なのだろうが。やはり常識知らずなのか俺の予想通り湯川さんは答える。


「わたしの家だけど?」

「ということは湯川さんの家に結構な時間いることになるだろ?」

「うん、そのつもりだけど?」


 やはり、研究者一族の家庭だからか俺の言わんとするところがわからないらしい。そんな湯川さんに説明した。


「大体の下校する時間は親が知っているんだから、その時間になっても帰ってこなかったら親が心配するんだ。だから、一旦帰って湯川さんの家に行くってことで良いか?」

「わかった」

「ていうことで帰るぞ」

「うん」


 こうして、ひとまず俺たちは湯川さんと別れて来た道をたどって行く。そして、もうすぐで高校の前か、というところでなぜか今まで恥ずかしそうにしてうつむき、黙っていた幼馴染が喋りだした。


「あの湯川家の中はどうなってるんだろうね」

「ただ、湯川さんがパワードスーツとか言ってたしすごいんだろうなあの家の中は」

「そうだね」


 そして会話は終わりまた沈黙のままもくもくと家へ向かって歩き続けた。俺はそのことに疑問を感じていた。当たり前だ、いつもだったらあの流れで絶対にパワードスーツについてとか、湯川家の功績となにがすごいのかを永遠と喋っていただろう。

 なのに今はなぜかうつむき、黙っているのだ。


 さっきは恥ずかしそうだったけどなぜ恥ずかしいんだ?同じく恥ずかしそうにしていた場面といえば「二人で行くよりも緊張しないと思うから」といった場面だ。

 あれは湯川さんにバレて、いや、俺にもバレていたな。ということは俺にバレてるのも恥ずかしいのかもしれない。というかそっちの方がはるかに恥ずかしいだろう。


そんな幼馴染にかければいいのはこれだろう。


「なんで、さっきからお前は黙ってるんだ?」

「え、な、なんでもないよ」

「そうか」

「パワードスーツというのはもう実用化されてるんだよ」

「へえ」

「HAL・・・・・・」


こうしてパワードスーツについての話を帰宅するまで聞きながら帰った。

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