第6話 決戦

 なぜ、屋上を回り探しているかといえば簡単な話だ。アイツは俺に放課後で屋上に決闘だ、ということを伝えたもののこの学校の四つの校舎の内どれかは伝えてこなかったからだ。

 だが、それも終わる。もう次の屋上が、探して四つ目の屋上に当たるので恐らく今向かっている南校舎の屋上かそれともう片方かだろう。


 ちなみに、俺は最初は走っておらず体力を温存していたものの面倒くさくなり、すっかり今は走ってしまっている。ちなみに体力はあまり消費していないので別に問題はないだろう。

 

ちなみに、風紀委員とか先生とかが廊下を走っているからといって注意をすることはない。なぜなら校則には廊下で他人にぶつかってはいけないとなっているが、走っていけないとは決まっていない。よって走っても良いのだ。


 だが、普通は廊下は走らない。単純にみんなそう教わっているからだ。それに、相模みたいな奴は例外だがここには難しい試験があるので不良というのが入れない。


 参考にまで言うが物理基礎が始まるときの第一声が「では復習だが」だった。もう、この高校に入るには高校の受験科目の基礎ぐらいはやっているのが普通なのだ。


 基礎をやらずに入った人はどうやって問題解いたんだ?という話になる。そんなことを考えた後、屋上に着いた。だが、誰も居ない。なので、はずれかと思って帰ろうとするとヒュン、その音を聞き反射的に左半身を捻り飛んでくる何かを回避した。

 ガッ、音を立て何かは屋上の床に刺さる。どうやら何かは刃物だったらしい。となれば答えは一つだ。


「弱ると思ったんですが、回避されるとは驚きです」


 そう、忍者だと俺は思った女が言葉とは裏腹に無表情で冷静な声音で告げた。さっきの答えは相手が忍者で投げてきたということでわかるだろう。

 屋上の床に刺さっている何かというのは手裏剣だったのだ。今、忍者と俺の戦闘が始まる。


 俺はバッグを端に寄せておき早速作戦通りに対物理結界を出すために呪文スペルを早口で声に出しながら高速で綴る。


「魔力は魂の力、魂は意志の力。魔力は万物を改変できるもの、無敵の力。我の意思は防御!我が防御の意思に従ってくれ、我が意思を元に変化せよ!アンチフィジックシールド!!!」


俺の体ぴったりに対物理結界が貼られた。そして


「リンク」


 そう言うと俺の視界がさまざまな数式に埋め尽くされる。そこに殺さないような現象を引き起こす魔法式を一瞬で計算し、圧縮してそれに数字を代入。そして女の股下の床を改変して轟々と立ち上る青い炎を作り出した。


 すると、女は呪文ワードを言うわけでも、綴るわけでもなく異常な速度と飛躍力で炎を回避する。魔法式を使ったのか?それとも純粋な身体能力か?そんな風に俺の想像を絶する行動で動揺し一瞬俺が考えてしまう。


 すると、そこを突いて女はそのままのスピードで突っ込んで来る。そこで女はクナイを俺の喉元を掻っ切るように振るった。だが、結界に阻まれている。そこで女が俺との距離をすぐに取って俺に言った。


「それはそう長くは続きませんよ。残念でしたね。まあ魔法を使うというバカなことをする男だから仕方ないですね。もしかして、忍者と戦いたかったんですか?」


女は俺を嘲笑いながら聞いてきたので俺は答えた。


「俺は平和に暮らしたかったんだよ!!何でいつもこういうことになるんだ!」

「知りませんよ」


と、ここに戻るわけだ。なぜか一瞬にそんな回想をし終えることが出来た直後、魔力感知のスイッチをオンにして俺は言う。


「じゃあ、行くぞ!!」


 そして、相手の身体能力の種を探るためもう一回同じような魔法式を一瞬で圧縮して同じ数字を代入し、女の股下に青い炎を作り出した。そして、女は


「無駄なことを」


 と言いつつ再び跳躍して回避した。驚いたことに、その瞬間、ピカッ忍者の全身が水色に光る。

 なぜ、驚くべきことかといえば魔力というのは確かに全身をめぐらせることの出来るものだが、綴ることによって発動する魔法や魔法式による発動では魔力が全身にめぐったりはしない。もちろん、自然に魔力がめぐるなんてこともない。


 つまり、意識的に全身に魔力をめぐらせたということになる。ということはあの丸焼きに成りかねない危険な状況でわざわざ魔力を全身にめぐらせたということだろう。

 じゃあ、なぜそんなことをやったのかといえば一つしか考えられない。身体強化をしたいからということだろう。そこに行き着いた俺はそんなことで身体強化できたことに驚いたのだ。


 そう考えている間に今度はクナイが喉元に投げれられる。すると、魔力感知を切っていなかったので俺の体に張り付いている水色の結界の破片が飛び散るという幻想的な風景が見える。

 強い衝撃だったのでヒヤヒヤしたが見るところ大丈夫なようだ。


 俺は魔力感知のスイッチをオフにして女への対策を一瞬で考えた。そして、それを実行する。俺は魔法式をさっきとは違い5秒もかけて圧縮、数字を代入。すると、忍者の周りに俺の想像通り炎の壁が出来た。

 そして、それを維持するための処理をしつつ俺は身体強化魔法を行使するために呪文ワードを早口で言いながら高速で綴る。


「ああ、女神よ。美しき女神よ。そなたの力の一部を貸しておくれ。我は神の子の人なり。神の子なり。女神よそなたが慈悲深い女神だと信じ我は望む。我に山河を打ち砕く力を。馬のような速さを。神体強化レフィレンス


 俺は自分で綴った魔法名に若干引きながら女の居る炎に突撃していく。炎で囲い俺は両手両足を折るか押さえ込むという作戦を立てた。なので俺は疾風になったかのように錯覚するぐらいの速さで炎の中に突っ込んだ。

 だが、対物理結界のおかげで熱くはない。


 中に入ると女が表情を変え笑う。すると女が消え女のいるところに校庭にでもありそうな非常に小さい石が出てきた。炎を解除し見回したものの屋上には女の姿はない。

 恐らく身代わりの術を使われたのだろう。そう考えて屋上から校門を見ると校門を有り得ないスピードで駆け抜けていく女の姿を俺は見た。


どうやら逃げられたらしい。


(これはマズイな。このままだと女と交戦した男とどっかに報告されてしまうだろう)

(まあ、仕方ないな。アイツを仕留めていたらそっちの方がヤバイことになっただろうからな。それに俺達俺と仁は人を殺す覚悟などないのだから)

(俺はそんな人間にはなりたくないからな)

(いずれは、ならなきゃいけないだろうな)

(そうだろうな)

俺はこれから始まるトラブルを想像してハァとため息をついた

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