第5話 忍者襲撃

 俺は、こんな時でもおいしい出し巻き卵を食べながら、湯川さんと彩科が気になっていた。だが、どちらも俺が行くと気まずいだろうし、謝れば解決。なんてことでもない。

 これは時間が有る程度たってから何とかするべき案件だ。だが、気になるものは気になるし何かしてあげたい。


(優しいな。俺なら絶対惚れてもない女は放置するぞ。面倒くさい思いしなくて済むし)

(お前は凄いな。俺なんか無視しようと思っても出来ない)

(女好きだからか?)

(なんで面白そうに言って来るんだよ。まあいいか、俺は別に女に限らず無理だぞ。しかも、自分で傷つけたんだから、それが普通だろ)

(その甘さが命取りになるかもな)


(それでも、俺は甘くいつづけたいな。何か、人間として大切なものの気がするからな)

(仕方ないな。まあ、僕と融合するようになる頃にはそれでも大丈夫な男になるだろうからな。そんな心配だけど直接会いにいけない君に便利な魔法がある。契約魔法コントラクトだ)


 契約魔法コントラクト?契約魔法コントラクトか!!それなら使い魔を作ることが出来るな。俺は、ひとまず解決策が出来たので安心したので箸を持つ手のスピードを速めた。


 いやーうまいな。確かに母は変な和食の組み合わせをたまに出したりするのだが、料理の腕はかなり良い。そして、さっきまで気づかなかったのだが、ハッシュドポテトがしなっとしてしまっている。


 たぶん、揚げたてはサクッとしてて美味かったのだろう。ちゃんと考えて弁当の献立を決めてくれ。ただ、味はおいしい。

 ベストタイミングで揚げたからか材料が良いからかは知らないが、ジャガイモの甘みが、ほどよい塩で引き立てられているのでおいしい。


 ほうれん草のおひたしはシンプルでほうれん草の甘みをしょうゆが引きたて、かつおのうまみが口を満たすというなんだか、美味さの感じがさっきの出し巻き卵とハッシュドポテトの複合みたいな感じだ。


 出し巻き卵とハッシュドポテトを食べ終わった後、俺が残しておいた一番好きなえんがわを箸で取ろうとした瞬間予鈴が鳴った。仕方ないのでしぶしぶ俺は弁当のふたを閉じ、机を元の場所に戻して、バッグに弁当箱をしまった。


 そういえば、使い魔を探しにいけなかったな。使い魔はどうしよう。ここは国立理科高校なので、都内なのに動物が校舎内に結構居る。

 田舎でも校舎内には居ないか。校舎内の動物に……いや、それだと窃盗か。まあ、ここは飛べて小さいほうがいいからスズメでいいか。


 使い魔を何するか決定した直後に置いてあるノートパソコンの画面越しに戸惑いの視線で見てくる湯川さんが見えた。


 すると同時にチャイムが鳴り授業が始まった。五時間目は英語だ。教科書とノートを取り出し、板書を写しながら先生の言っていることも大体は写していく。

 すると、突然今まで授業を真面目に受けていた相模がニヤニヤとした表情で俺に聞いてきた。


「俺が目をつけた女子達と仲良くやってるな、と思ったんだが良い気味だな。俺と同じように嫌われるとは」

「いや、幼馴染はともかく湯川さんの方は嫌われたって感じじゃないと思う」

「意外と正確な判断だな。式神が結界のせいで使えないのがこれほど残念だと思ったことはないな。いやー見てみたかった。何が起こったか」


 心底残念そうな顔をする相模に少し苛立ちながらも、先生が見てきたことを横目で確認した。俺はそのままのことを言うのは本人たち(特に俺)にかわいそうなので適当に誤魔化した。


「幼馴染にお前巨乳だなって言ったらああなった」

「ハハハハ。面白いな、お前。そんなこと言う奴だったけか」


すると、さすがに相模が声を大きくしすぎたからか、先生が言った。


「相模、うるさいぞ。実力があるなら授業を受けなくても良いが、周りの迷惑になるようなことは止めろ」

「わかった、わかった。悪かったよ先生」


 明らかに反省していない相模を見たのにそれ以上先生は何も言わず授業に戻った。どうやら、この学校は先生の言うとおり実力主義らしい。

 まあ、当然っちゃ当然だろう。なぜか、この学校は日本が運営しているにも関わらず日本の傾向である満遍なく勉強を出来る生徒が優秀というのに逆らっているのだ。


 道徳観念もしっかりしようという日本の傾向を無視しても不思議じゃない。それに、この国立理科高校で探しているのはさっき昼休みで言ったようにとがった天才なのだ。

 そういう奴は結構な確率で性格に問題があるので、そういうのにゆるいのだろう。


 さっきの言葉は本当だったのか相模は話しかけてきず、英語の時間が終わり六時間目の機械の授業になった。機械工作室Ⅰに入ると木で作られた机があり、その上にはとんでもないものが置かれていた。それは大砲みたいなものである。


 その周りにはいろいろな者が置かれており、はんだごてはもちろん。トランジスタ、細長い四角いのが両端についているコード、コンデンサ、そしてノートパソコンなどなどが置いてあった。

 ここから考えて大砲というのは明らかに違うものだろう。もしかしたら国立理科高校にまつわる都市伝説の中にあるレールガンというものかもしれない。


 そんなことを考えていると、一人の女子が机の中から出てきた。その少女、いや女性かもしれない女は俺を見るなり、驚いた顔を見せ、そしてすぐに元の表情に戻った。

 

あの、顔はどこかで見たことがある気がする。ちなみにその女は校章が右胸あたりに縫われている学校で統一されてる白い色の作業服を着ており、とても体型はスレンダーで驚いた顔を見せたときは大人びた雰囲気を漂わせていた。


 だが、不思議なことに今ノートパソコンにプログラムらしきものを打ち込んでいるときには高校生にしては子供らしい陽気な雰囲気を漂わせている。顔に関しては黒髪黒目だが、特に印象が残るような顔ではない。

 

その良くも悪くも無い印象の無い顔のせいか、第一印象はどこにでもいそうな手足が長いまな板女性。という感じである。それに気づいたとき俺の頬を冷汗が伝っていった。


 もしかしたら、前世の記憶とさっき見た雰囲気のギャップが無かったら他の生徒と同じように違和感無く座っていたかもしれない。

 というものの、他のクラスメートは大砲みたいなのには気づくが、全員が全員あの女の存在には一切気づかない。この国立理科高校で言うのもなんだが、まるであの女が幽霊のようである。


 ここの都市伝説に○○を開発しつづける幽霊。なんて、ものがあれば信じたかも知れない。それぐらい本当に、全員が全員、女の存在を気づかないのだ。そして前世の記憶のお陰であいつが唯の凄く影の薄い女でないのもわかってしまう。


 まあ、といっても看破したわけではなく驚いたときにあの女が一瞬気配をコントロールし損ねたお陰だが。ちなみにその気配は達人の一歩手前の洗練された雰囲気オーラだった。


 もちろん、その雰囲気オーラを「柔道かじってましたー」とか「剣道日本一を高校で取ったことがあります」程度の人間では出せない。なぜかといえばこの雰囲気オーラは最低でも十五年ぐらいは修行しないと出ない。


 だから、高確率で女性なわけだ。ちなみに達人の雰囲気オーラは最低でも三十年は修行しなきゃダメである。これらの事柄から俺の中では厄介な結論が出た。それは「あの女は忍者」だ。普通に考えればわかることだ。


 達人一歩手前の洗練された雰囲気。まるでここにいて何かを作っても当たり前のような溶け込み具合(気配を薄めているのかもしれないが)。

 そして俺を見るなり、驚いた顔。まず最初でかなりの武芸達者なことが解り、次で暗殺者を彷彿とさせる。次で高確率で魔法に精通していることがわかる。


 なぜ、魔法に精通していることがわかるのか、といえば単純な話で俺は有名でもないし、アイツと知り合いでもない(覚えてないだけかもしれないが)。

 なので、魔力量が多くてビックリしたのではないかと思う。そしてあの女は誰が魔法を使ったのかずっと見張っているのだと思った。


 なぜかといえば相模は「すぐに忍者に襲われる」とか言っていたが、魔力感知結界ではよくよく考えてみれば、使用者は割り出せないのだ。


 そんなことを考えているとゴン。女が居る方向から手裏剣が飛んできて机に刺さった。どうやらなぜかばれているらしい。


 そんな風に冷静に状況を把握することによって俺は軽い恐怖状態に陥った。俺の腕、足は小刻みに震えている。だが、むしろそれだけで済んでいることが我ながらすごいと思う。

 大げさな、と思うだろうが、まったく大げさでもなんでもない。考えてみて欲しい。


 俺はあの忍者から強者の風格というものを見ていて、明らかに俺とはそれは段違いの訓練量から来るものだ。そして、それで焦っていたが、安心できる理由を見つけたらその瞬間、その安心出来る理由は崩れ去ったのだ。

 むしろ、安心出来る理由を見つけずに身構えていれば、こんなにも恐怖することはなかっただろう。


 いまさらになって、先生が気づいていないか確認し、俺はこれを刺さったままにするとバレる恐れがあるので、引き抜こうとした。すると、恐怖で手が震えているせいか、手汗がすごいせいかなかなか抜けない。

 そんなことをしていると、自由時間になったらしい。生徒がそれぞれの設備を見て回っていた。


 すこし、落ち着い俺は手と手裏剣をハンカチで拭き、リトライする。すると、あっさり抜けて俺の手を傷つけた。といったものの、表皮が切れるくらいだ、肉が切られたわけではない。

 そして、手裏剣に付いた俺の血を拭こうとしたときに俺は気づいた。


 手裏剣にはマーカーペンで、大きい字で「放課後屋上決闘」の七文字が書かれていることに。俺はまた手汗のせいか手が震えてしまったからか、カーン手裏剣が俺の手からすべり落ちた。

 (おい!!大丈夫か!緊張しすぎだ。俺が手を使えたら頬をはたいてやりたいぐらいに情けないな。まあ、死とは無縁の日本に生きてきたら普通なのか?)


(でも、もう結構合成は進んでいるはずだ。なにせ、俺が住んでいた世界の常識と混同してしまうぐらいだからな。俺たちが住んでいた世界では、死なんて身近なものだっただろ?)

(ああ)

(確かに俺も互角の相手とすら戦うのは怖かった。ただ、俺は戦わないといけなかったときは、お前みたいに、震えるだけだったか?)


(いや、しっかりそういうときこそ念入りに相手の弱点を調べ、策を弄していた)(ああ、そうだ。戦わないといけないのにそのときまで震えていたら時間がもったいないし、勝てるもんも勝てないだろ?)

(ああ、そうだな)

(落ち着いたか?)

(ああ)


(よし、じゃあ)

(策を弄することにするよ)


 落ち着きを取り戻した俺は自分が一人だけ設備を見て回ってないことに気づき、適当に設備を回りながら思い出す。


 まず、相手を知る、だったな。まず、相手は忍者だ。それは手裏剣を投げてきたことや相模の情報提供でそれはほぼ確定しているといっても過言ではない。


 この情報や相模が俺が勝てると言い切ったこと、俺が目に余る強力な魔導師であること、手裏剣を矢文の代わりにするのは忍者だといっているようなこと、相模が親切すぎることなどとそして相手が達人一歩手前の洗練された雰囲気を持つことを考慮すると、一見相模が仲間を使い目障りな俺をだまして殺させる。つまり、忍者ではないように見える。


 だが、それは大きな勘違いだ。確かに、一般的に忍者は速い一撃や索敵用の隠密にやることに特化しているとされているため、普通の魔法師を忍者と勘違いしてしまい作戦を立ててしてしまう。


 すると、無駄に索敵用の魔法を多用したりして魔力を無駄に消費したり、反撃を受けないように先に魔法を使うために、威力低めだが早い魔法を使ったら魔力障壁にはじかれたりしてしまうなんてことになる。

 なので、忍者だとだますと確かに相手を殺す難易度を下げることが可能だ。


 ただ、あくまでも難易度を下げるだけだし、もしも俺たちと同じような普通に魔法を使えるのにあの達人一歩手前の洗練された雰囲気を出せるのなら、そもそもそんな周りくどいことはする必要は無い。

 今の俺ならあの女が並みの魔法師なのだとしたら、確実に負ける。


 それを見抜けないほどのアホならば、こんな何重にも丁寧にトラップを仕込んでおいたりはしない。それに、実は一回会っているのだ。さっき、思い出したのだが、補助魔法を使った後に、妹帰っているときに全身黒スーツ姿であの女が俺たちを見て、いや、俺を見て顔を引きつった表情を浮かべた人だ。


 あの時は俺の妹を知っていてる近所のお姉さんだから俺の妹がベタベタしているのを見て顔が引きつらさせているのかと思っていたが、ただたんに俺のあまりにも多い魔力量に顔を引きつっているだけだったようだ。

 もしかしたら、たまたま魔法を使ったことがあるいけない人である俺を見て引きつらさせていたのかもしれない。


 これが忍者であるのに関係あるのか、といえば簡単で、見つけたら即刻殺すはずだからだ。というものの、相模の仲間で、相模が強力な魔法師を殺すのを目的としているならば、早く芽を摘み取りたいはずである。だったら、相模がわかった後にパソコンなり携帯電話で仲間に伝えてるはずだ。


 それに、並みの魔法師ならば魔力感知はできる。つまり、俺の魔力が以上に多いのと魔力が回復していくのが一目瞭然だったはずだ。それならば、相模が基本の方針としている強力な魔法師を殺すをすればよかったのだ。


 ということで、相手はやはり外国の人達に人気で有名なニンジャと見て間違いないな。相手を知った後には弱点を突くような作戦を建てる。忍者の弱点、それはすなわち火力不足、という一点だろう。

 忍者は伝承と変わってるのでは?という疑問も解らないことはない。ただ、ここで出すのもおかしいのかも知れないが、あの少女の存在だ。


 あの少女には未来のヤバイことを察知できる能力がある。それに過去に戻れる可能性も高い。「頼るしか道がない」と言っているのだからほかの道を試したはず。という推理から考えると、忍者である可能性がもっとも高いのだ。


 なぜか、といえば簡単だ。悲しいことに今の技量の俺とアイツが戦った場合、普通の魔法師並みにアイツが魔法を使えるのならば、俺が負ける。だが、伝承どおり影分身の術や影縫いの術、口寄せの術などしかないのなら、勝機はある。

 だから、必然的に俺が勝てる可能性がある伝承に通りの忍者ということになる。


 さっきのあの少女のことを出すと、だったら策を練らなくてもいいのでは?ということになる。だが、作戦を練るということはただ単に勝つ確率を上げるためだけの行為ではない。

 実は、恐怖を和らげるという意味と恐怖を和らげるという意味があるのだ。


 思考がそれたが、伝承通りの忍者ということになるので、アイツの弱点は火力不足ということになるだろう。火力が低いということは対物理結界で充分に防げる。

 ただ、アイツは手練なので普通の人が使うと1分もつかどうかぐらいの対物理結界ならば大丈夫だったかも知れない。


 ただ、俺は一般人の魔力量を大きく逸脱しているため単純計算で考えても対物理結界を一時間維持することが出来る。そのため一時間もの間は俺に一方的に攻撃をゆるすことになる。

 要するに今までは致命的な弱点ではなかったかも知れないが俺と戦うとなると致命的な弱点になる。


 そこで俺は対物理結界を維持しつつ相手をボコればいい。簡単な作戦だが、とても有効的な作戦である。口寄せの術が厄介なので、キーンコーンカンコーンキーンコンカーンコーン。


「授業は終了だ」


 そう先生が言うと、同時に湯川さんが寄ってきた。恐らく大事な話になるのだろうと予想した俺は考えを断ち切って、無表情ながらも僅かに頬を赤らめる湯川さんの言葉をしっかりと聞いた。


「本当に可愛いと思ったの?」

「あーー・・・はい」


 予想外の質問だったため俺は本当のことを言うべきか迷ったが、俺は本当のことを答えた。それにしても、相手の、つまり湯川さんの表情がまったく解らない。

 それに、恥ずかしげなく湯川さんがそう聞くのでなんか不思議だ。普通の人なら言い淀んでいえるかどうかだ。


 言い淀みすらしない、ということはナルシストかそれとも相手がそう発言したことを自分の容姿に対する信用とは別の理由で確固たる自信を持つものだろう。顔を赤らめている、決めてかからないということは後者で、自信が少しないということだろう。


 そんなことを考えていると湯川さんが僅かに笑顔を見せたような気がした。すると、湯川さんが頬を赤らめたまま俺に言った。


「おもしろい。よろしく」

「こちらこそ」


 そうしてなぜか俺は湯川さんと握手をし、女の子の手が柔らかいことを再発見すると俺はたぶん湯川さんと友達になった。

 俺的にはある程度話していた気分だったので友達候補ぐらいの気分だったのだが湯川さんとはそういえば話していなかった。なのでこれで友達になったのだろう。たぶん。


 微妙に満足ぎみな感じのする湯川さんと別れ俺は中断していた口寄せの術の対策について考えることにした。

 口寄せの術とは確か友達に見せてもらったマンガでは自分の血を巻物(恐らく魔方陣)にたらして契約している動物を召喚する魔法だったはずだ。


 ただ、魔方陣に血を垂らすかどうかは不明だ。なぜか、といえば前世の世界では魔方陣に血を垂らす、という方式は無かった。

 もしかしたら、モンスターテイマーなら知っているかもしれないが、少なくとも俺は知らない。考えてみて思ったのだが、マンガの術が出てくるのか?


 確か、怪しげな心霊番組でも聴いたことがあるのだ。口寄せの術、という言葉を。思い出せ、思い出せ。心霊番組、口寄せの術・・・・思い出した!!あれは霊を自分に憑依させて偉人に聞こう!!てきな番組だったはずだ。ようするに口寄せは降霊術だ!!だが、あれは嘘っぱちである。


 なぜか?といえば前世の世界にはゴーストというモンスターずなわち幽霊がいたが、それの構成成分は魔力、そして自我を持ったゴーストは存在しなかったのだ。要するに口寄せの術は忍者が使えないのでこのままの作戦でいいだろう。


 そこで思考を終了すると、手汗や冷や汗が僅かににじみ出てきた。ただ、さっきとは違い手足が震えたりはまったくしていないので前よりはかなりマシになったことは間違いない。

 こんなことを考えているからマシになったのだろうか?そんなことを思うが、これは思考をわざと無意識的に自分で長引かせているのだろうと思いつき俺は考えることを放棄した。


 すると、数十秒後には1-Cというのが表示されているディスプレイが壁にはっついている教室、すなわち俺が所属しているクラスに着いた。やはり大きな緊張と僅かばかりの恐怖に耐えられないので考えることにする。

 というか、今までスルーしてきたがこのディスプレイがあの上の窓の枠についている看板変わりのはおかしくないか!?


 確かに、科学力は国立理科高校の大きく他の高校を引き離している教科だけどそこをディスプレイにする必要は無かったのではないか?せめてだったら電子黒板にしろよ、なんでそこはただの黒板なんだよ。まったくわからないよ!!そうやって気を紛らわせながら俺はイスにたどり着きそのまま気を紛らわす。


 気を紛らわすというとちょっと良く聞こえるかもしれないがようするに現実逃避だ。ただ、もう作戦は組み終わっているし、ただ戦いが終わるまで緊張しているのも損なので現実逃避も時には必要ではないかと俺は思う。


 なので、心の中で気を紛らわす題材を出した。その題材は幼馴染と今後どうすればいいかだ。俺は、取り合えず第三者?ことレインに聞くことにした。レイン、どうすればいい?(俺に聞いてどうする、俺はギリギリ十五歳だぞ!)でも、絶対レインの方が人生経験は上だろ。


(まあな。残念ながら上だ)

(じゃあ、アドバイスを頼む)

(簡単だ。アイツに思っていることをそのままありのままのことを話せばいい。そうすれば恋仲になれ、関係もギクシャクどころかラブラブだ)

(いや、ちょっとおかしいだろ。というか今お前顔あったら先輩が後輩をからかいながらも後押ししているみたいな顔になっていたな。確信を持って言える)


(そうかもしれないな。別に戦うからといって恋仲になることは悪いことじゃない。むしろモチベーションが上がって良いだろう?)

(いや、それって幼馴染がアキレス腱になるだろ。だから止めといたほうが良いと思うが)

(いや、仲間に出来るだろ)


(な、仲間!そうか、俺が魔法を教えてやれば良いのか)

(お前は気づいていないだろうが、お前の幼馴染は魔法師だ)

(そんなわけないだろう?)

(いや、あの子は魔法師だ)

(理由は?)

(勘だ)

(お前らしくないな)

(勘とはあてずっぽうとは訳が違う。勘は重要だ)

(まあ、それは解らないから、やっぱり無理だな)

(そうか、残念だな)


(でも、考えとく)

(ツンデレ、というやつか?)

(いや、違うから)そんなことをやっているとホームルームが終わった。ちなみに、後ろの黒板に明日の日程は書いてあるのでホームルームを聞いてなくても問題は無い。


 明日の日程を書いた後、屋上へ向かいながら過去にも勇気を要求された出来事を思い出していた。それを思い出せばあの頃の勇気がもらえる気がして。


「いこうよー」

「ダメだよ、まちに出たらあぶないよ。こわーい大人の人もいるんだ」

「だいじょうぶ、わるいおとななんてやっつけられるんだから」


 俺は幼い頃は幼馴染のいわばお目付け役だった。でも、俺もあの時は立派な幼稚園生だ。しっかりしているといっても限度があったのだ。俺はあの時、そんな人たちは昼には出ないからと考えて言ってしまった。


「しかたないなー行くぞ」

「うん!!」


 こうして、俺はビル郡の中を幼馴染と突き進んだ。幼馴染は興味津々にビルの窓に触れたり、自動ドアにビックリしていた。かく言う俺も幼馴染と同じようなものだったが。すると、幼馴染が言ってきた。


「3たす2ってなんだっけ?」

「なんで、そんなこときくんだ?」

「だってむこうにあるおみせが2つでこっちにあるおみせが3つでしょ?」

「そうだな。ちなみに、3+2は4だ」

「あれー?かぞえても5になるよ?」

「バレたか」

「そういうの止めてよ。フン」


 そうプクッと頬を膨らませながら幼馴染は俺から逃げていく。あの頃の俺はわからなかった。からかったのが原因であんなことになるとは。まあそうして、街探索から一転して追いかけっこになった。


 最初に持っていた迷ったらどうしようという懸念は追いかけっこを始めて数分で幼い俺の頭の中からは消えていた。なので幼い頃の俺はただひたすら幼馴染を追いかける。

 すると、暗いくらい路地に入った。すると、暗い向こう側からヤンキーたちが歩いてきた。


 その頃の俺はそのヤンキーたちに酷くおびえていた。仕方ないだろう、未知の存在、怖そうな顔、悪そうな表情そして確実に倒すことは出来ない。ここまで揃っていて怖がらないわけがない。それにあの頃の俺は幼稚園生だ。恐怖をコントロールなんてことも出来ない。


 お漏らしこそはなかったものの全身が震え体が動かない。そんな中ヤンキーの一人が口を開いた。


「おい、ガキじゃねぇか。おい、そこの嬢ちゃん。遊ぼうぜ」

「ひ、ひぃ」


 アイツからは悲鳴しか出ない。俺の場合はなにもいえなかった。今思えばあのヤンキーはロリコンだったのだろう。そう考えてみるともっと怖くなるな。いろんな意味で。

 もちろん俺はそんなことは知らず、純粋に俺は怖くて硬直している。幼馴染はそのヤンキーに連れてかれた。


 幼馴染は悲鳴をあげれないのだろうか。悲鳴をあげない。でも、周りのヤンキーにはいい見世物なのか、ロリコンヤンキーの周りに集まって同じ下卑た笑みを浮かべていた。


 そして、幼馴染のリボンが今解かれた。俺は相変わらず心の中は怖い一色だ。すると次はゆっくりゆっくり幼馴染のボタンが解かれていく。一つ・・・・二・すると俺の心の中に怒りがフツフツと湧き上がってくる。三つ・・・四・・・最後のボタンが解かれようとしたとき怒りが恐怖を上回った。俺は叫んだ。


「やめろーー!!傷つけるなー!!!」


 すると、俺の体に不思議な力が湧き上がってくる。そんなことどうでもいい。と思いながら俺はまず、ロリコンヤンキーに殴りかかった。ロリコンヤンキーは何が起きたか解らないまま少し吹っ飛びながら体が5分の一回転し気絶した。すると、ヤンキーたちは気づいて戦闘体制を整えた。


「ガキが調子乗ってんじゃねーぞ!!!!」


 今、思えば怒っているのではなく自分を奮い立たせるための言葉だったのだろう。そのヤンキーが殴ってくるが、俺はなぜかその道筋が見えてすぐにかわしそのヤンキーにカウンターをぶちかました。またしてもヤンキーは少し吹っ飛び気絶する。


すると、ヤンキーは怖くなってしまったのか退散した。


 今、思い出せば勇気関係ないじゃねーか。そんなことを思いながらどの屋上だろうと思いながら屋上を回り探していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る