第3話 家族ではない家族
俺がドアを開けると同時にパン!!目の前にある二つのクラッカーが鳴った。
そして、赤い紐やら青い紐やらがフローリングの床に落ちていく。嬉しそうに両親が揃って言った。
「「高校入学おめでとう!!!」」
「ありがとう」
あまりにもの歓迎ぶりにため息をつきそうになった俺はそう返しておいた。
左にいる周りが言うには美女のアメリカ人が母で、右にいるカッコいい日本人が父である。見ての通り厳しいどころか少なくとも俺には甘々な両親だ。
ただ、妹への教育を見るにしっかり分別がつくまでは別に甘いわけでは無いらしい。まあ、そうしないと我が儘な子に育つだろうからな。
よく、分別がつくまで我が儘を聞くのを堪えたとこの甘々な様子を見ると思う。
そんなことを思いつつ両親に着いて行くと、いつものリビングに来た。妹は母親に「そろそろ兄離れをしたら?」と怖い顔で言われてしまっているので俺の腕には家に入ってから抱きついていない。
リビングに着くと、いつもとは違いテーブルにはフライドチキン、フライドポテト、ピザなどのアメリカな感じがする健康には良くないだろうが、確実に美味しい料理が所せましと並んでいた。
テーブルの真上には『高校入学おめでとう』とカラフルな字で書いてある垂れ幕があり、イスには仲良しの御近所の上堂家夫妻とその娘が座っている。
御近所の仲良しの上堂家夫妻とその娘っていうのは要するに幼馴染とその両親ということなんだけど。アイツも苦労しているだろう。
だって俺と同じように高校の入学式の為だけにあの忙しいアイツの父親が休むぐらいは愛されているだろうから。
そんなことを考えていたら、いつのまにかいわいるお誕生日席というポジションにアイツと揃って座っていた。いや、正確に言えば座らされていた。すると、俺の母親が言った。
「二人とも高校の入学おめでとうございます。まだ、二人には早いのでお酒はないですけど、楽しみましょう!!!頂きます!!」
「頂きます!!」
アメリカ人であるものの日本的なパーティー?をすることに驚きながら、俺は目の前にあったフライドチキンを自分の取り皿に盛った。フライドチキンは母のお手製なのか外はカリッと中はジュワーっと肉汁が溢れてジューシーである。衣にはチキンに良く合うスパイスが入っていてとてもおいしい。
KF○には悪いが正直言ってこっちの方がおいしい。母の料理は上手すぎるのだ。そんな風に思いフライドチキンを食べていると母が言う。
「高校生活どう?」
「まだ解らないでしょ」
俺がそう笑いながら返すと「そうだよな」と言いながら父が笑い、笑いがわきおこった。母も「だよね」と言いながら自分も笑っている。
そんな感じでワイワイ喋りながら食べていると、俺の父親が話し掛けてきた。
「気になる女の子とかいたか?」
「いや、全然」
「まあ、そうか。こんな、綺麗な幼馴染みがいるからな。この子に比べれば他の女の子は霞んじゃうな」
そう、さり気なく父が他の女の子なんかより幼馴染みの方がいいから幼馴染みと付き合ったら?的なことを俺に言うと、「この子に比べれば他の女の子は霞んじゃう」という1文が嫌だったのか、母の表情が曇った。
だが、意図がわかっているのかそれ以上は母は何もしない。一方アイツはそのことに気づいていないのか言葉を返した。
「いえいえ、そんなことはありませんよ」
アイツは表情に表れるレベルで嬉しそうだ。まあ、そうだろう。父みたいなイケメンに「とびきりの美人だ」と言われたら誰もが喜ぶだろう。
そして、まるで事前に打ち合わせをしていたかのようなタイミングで幼馴染の父親が言う。
「仁君に引き取って貰えると安心ですね。なんてね。ハハハ」
「そうね、安心ね」
俺の両親もあちらの両親も事実そうなのだろう。俺が両親でもどこの馬の骨とも解らない男よりも、ある程度顔が良く、成績はかなり良い、理解ある幼馴染みの方が絶対に安心だ。アイツの性格のこともあるしね。
そんなことはあったもののそれ以降は特に何もなくパーティーは終了した。
パーティーが終わると、別にいつもと変わりも無くすごした。高校入学早々に宿題が出たわけでもないし、予習は幼馴染の話に合わせる為に昨日に済ましているし、いまやってもいつもやっているので変わりはない。
まあ、そう考えると今日予習をやっていないので変わっているといえば変わっているのだろう。
ただ、大しては変わっていない。高校生になったからといっても、特に変わることはないのだ。ただ、魔導師になってからはちょっと変わることがあった。
それは、意識すると視覚できる情報が増えたことだ。その増えた情報とは一人ひとりの頭に光ってるように見える魔力のこと。ちなみに、うちの家族は魔力量は妹を除きかなり多い。
まあ、だからといって俺並みの魔力を持っているわけではない。俺が化け物感がする。悲しい。まあ、実際に魔力量は化け物なわけだが。はぁ、そんなことでショックを受けつつ、ダラダラ過ごした。
夜になり、ご飯をワイワイしながら食べ俺は俺の部屋に入る。すると、誰も入っていないはずの布団が僅かに上下した。前には解らなかったが、前世を思い出した影響か、上下しているのが解る。恐らく掛け布団が上下するのは十中八九妹が入っているからだろう。
この妹が布団に入っているという状況は二日に一回は必ず起きる。そういえば、コレは二日に一回しか起きない。恐らく妹は二日に一回で我慢するのが限界かもしくは二日に一回が精一杯なのだろう。
個人的にはまだ、後者の方がマシなので後者であって欲しい。
そんな俺の願いを無視するかのようにフンフンフン、という明らかに掛け布団のにおいをかいでいるだろう妹の音を聞いた。そして、俺はおもいっきり聴いた瞬間に布団を捲った。
バッ、という音と共にバツが悪そうな表情をしている、わけではなく、
フンフンフン、という音を鳴らしながら妹がクンカクンカとやるとニオイが無くなったことに気づいたのか、恍惚とした表情からニヤケた表情に戻ると、「じゃ」といって、俺が文句を言う前に去ってしまう。
仮に、ブラコンを認めるとしてもあれは酷いと思う。さすがに、いくら好きでも堂々とその人の持ち物をクンカクンカとは絶対に普通の人ならやらないだろう。
だから、恐らく変態という人種なのだろう。妹は。ただ、もしかしたら俺が普通の人がやっているのを知らないだけかもしれない。だがそういうマンガでしか、クンカクンカをやっている人は見たことない。
まあ、そのマンガではかぎながら自分を慰めていたが。それに比べればマシかもしれない。部屋に帰ってから思い出しながらするとかなら、弁護の余地がないが。
考えてみれば、あいつのブラコンというのは異常ではないかもしれない。
というのも、別に俺がブラコンであることは異常ではないとか、あの痴態は実は普通なのではないかとか思ったわけではない。正確にはブラコンではないのではないかと思っただけである。
なぜなら、俺の血が家族とつながっていない可能性があるからだ。思い出してみれば前世でも同じ容姿なのだ。しかも、前世ではしっかりと両親に顔が似ていた。
まあ、偶然だとか、そうだから俺にその前世がある。というのも考えられなくはない。
だが、不自然なことに黒い目の父親を持っているにも関わらず俺は青い目だ。それに加えて、俺の顔立ちはハーフという感じはまったくせずイギリス人の顔立ちである。
なぜ、目が青いのがおかしいのか、というと公立の学校だと中学生三年生で習う内容で、遺伝子の優性と劣性というのがある。その中で優性の法則というのを習うのだが、その意味は。
親の性質の現れやすいほう(優性)と現れにくいほう(劣性)があり、それぞれの遺伝子が同一個体に共存した場合、優性の側の形質のみが表現、すなわち性質や特徴に出るという意味だ。
そして、暗い色である黒が優性で明るい色である青は劣性だ。つまり、俺の目はこの法則上本来は黒でなければならない。なのに、俺の目は青だ。だが、別に確実に血がつながっていないと決まった訳ではない。
黒い目を持つ父が劣性である青い目の遺伝子を持っていた場合、黒い目の遺伝子が俺に伝わらず青い目の遺伝子を伝えた場合俺は青い目の可能性はある。
それも残念ながらそれも非常に確立が低い。
なぜなら、千同家とは日本の由緒正しき名家の分家であるらしいので、この時代に血筋を気にしている。それで、外国人である母との結婚に猛反対されたのでうんたらこうたらと以前、父が言っていたからだ。要するに青い目を持っている人と混じりあっている可能性は低い。
全く関係ないが母がそれを聞きながらうっとりしていた。
というわけなのでかなり高確率で俺は家族と血がつながっていない。まあ、だからといって何か思うところがあるわけではないが。
それが事実だとすれば妹の痴態にも少し納得できる。人間のニオイにはフェロモンというのが含まれていて、遺伝子的に相性が良い人だとそのフェロモンは良いニオイに感じるらしい。
つまり、妹にとっては俺が遺伝的に相性が超良かったので、とても俺からは良いニオイがするのだろう。だから、俺の掛け布団の嗅いでいたのだ。
そして、俺にとっては残念なことに良いニオイがする人には惹かれるのだ。当たり前だろう。だって、遺伝的に相性がいいのだから。
だが、だからといって俺が妹が好きになったわけではないし、あの痴態を認めたわけでもないが。そんなことを思いながら俺は目を閉じて眠った。
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