第2話 覚醒
■2016年 4月 6日 AM 8:25
家から出るといつもの様に幼馴染が居たので俺は声を掛ける。
「よし、行くか」
「じゃあ、行こうか」
取り敢えず俺と幼馴染みを紹介しよう。
俺は、千同
「じゃあ、三角関数のsinθの値を言ってみて!!」
と言っている美人が俺と同級生で幼馴染の上堂
美人というか絶世の美女なので絶対にこれがなければ恋に落ちていただろう。
その絶世の美女の見た目だが、髪は黒髪のロングで目も黒で、対照的に肌は白い。そして足の先は細いものの太ももにはしっかりと肉が付いておりハッキリ言って艶かしい。
それにダメ押しとばかりにウエストは程よく締まっており、胸は通常よりもでかいが、大きすぎるわけでもないという感じだ。一言でまとめると残念美人のスタイル抜群、大和撫子だ。
「なめんなよ!0度のときは0。三十度の時は二分の一。四十五度のときはルートニ分の一、六十度の時は二分のルート三。んで九十度の時は一」
「120度の時からは戻るだけだからよし!!」
そしてこうやって俺とアイツが笑いながら話していると恐らく一見他愛もない話で盛り上がっている初々しい高校生カップルのように
多分、コレでも気を使ってくれているのだろう、数学の話だからな。だが、昨日まで中学生だった奴が初めて幼馴染みと高校に登校する時にする話ではないことはたぶん確かだ。
普通は、高校で友達出来るかなー?とかそんな話をして盛り上がるのだろう普通。多分な。こんなことを言うとお前、言っているそばから、盛り上がっているじゃん。
と、思うかもしれないが、別に俺は心底から盛り上がっているわけではない。いつもこれが原因で一人ぼっちの幼馴染は可哀想だからと思って話しているだけだ。
俺は要するに幼馴染のために無理やり盛り上がっている。
幼馴染とは決して同類ではない。
なぜ、幼馴染が笑っているか、というと
だから、特に悪いことをしているわけでもないので、切り捨てづらく
だが、そんなんなのに男子からは人気がある所が、男子と女子との性質の違いを表している。
「おーそろそろ高校だね。どんな勉強をするのかな?楽しみだね」
「あーそうだな」
棒読みで答えながらも(勉強のことを考えているときとしているときはコイツは生き生きとしているな)と思いつつ、高校に着いた。この高校は理数系にはとても強いが文系が普通な俺が通う特異な高校だ。
名前は国立理科高校。理数系に関してはもっぱら強く、偏差値は70オーバーのときもある。そんな高校だ。なぜ、文系が普通な俺が偏差値70オーバーに達することもあるこの高校に入れるかはこの高校の特異性が関係してくるのだが、まあ、後で良いだろう。
ちなみにこの幼馴染は俺についてきた。「幼馴染、お前のこと好きだろ」とか言われそうだが、これにはちゃんとした理由があるらしい。
幼馴染みが言うには「一人だとさびしいから」という理由だ。
それが解っているなら、その勉強しか話さないのを直せよと思うのだが、「直せるならとっくのとうに直している」とのことだ。なぜ直せないしと思ったが、それをあいつに聞いたところで仕方ないだろう。
そんなことも考えつつ、俺は有りがちな桜並木を通って学校に入った。そして下駄箱の側面に張ってあったクラス表を見て、幼馴染の名前があることを確認し、肩を落としながらクラス表に書いてあった1-Cクラスに向かう。
階段まで行き階段を上がり、橋がある真ん中まで歩き水族館のように下に照明が付いている南校舎と北校舎をつなぐ下はコンクリート、上は銀色の金属の橋を通り、一番端の教室である1-Cクラスに着いた。
クラスに入ると俺は黒板に張ってあった座席表に書いてあったところに座り、バッグを横に掛ける。すると、前の席に先に座っていった黒髪黒目のイケメンがニヤリとした笑みを浮かべながら話しかけてきた。
「よぉ!イケメンさん。俺は相模
ニヤリとして笑みを浮かべた時点でうすうす気づいていたのだが、見た目とは裏腹にチャラ男らしい。そんなでも、偏差値69の高校に入っているのだから努力はしっかりとしているのだろう。
まあ、チャラ男であることは変わらないが。あの返答にはもちろん、どの女の子が可愛いかなんてそんなことは決めていないので俺はこう返した。
「いや、わからない」
「そうか、そうか。まあ、ここに入るくらいだしまじめちゃんなのはわかっていたがね。あの、女の子とかはどうだよ」
そういってチャラ男こと相模は俺の幼馴染であるアイツを指差した。チャラ男とはいえ可哀想なので、受けるショックを減らすために言っておくことにした。
「あー。アイツはねー絶世の美女なんだが、欠点があるんだ」
期待した視線で見てくる相模にそれを告げた。
「ほとんど勉強のことしか話さないんだ」
「なんだ、そんなことか。だったら、俺が勉強して話せば良いじゃん」
「仲良くなるときはそれでもいいかもしれないが、デートのときもそうなんだぞ」
僅かに二人の間で沈黙が流れたあと、相模が言った。
「それは、無理だな」
「ああ、無理だ」
そして話題はシフトチェンジをする。
「先輩派か?同級生派か?それとも後輩派か?」
「こだわりはない」
「そうか」
そこで、入学式の説明が始まり、俺たちは会話を止めた。しっかりと説明を聞いた後、番号順に並び、入学式のために行進をして体育館に入る。その途中でなぜか唐突に今朝見たリアルな夢の内容を思い出す。
その夢の内容とは俺が子供になって、魔法を使いスライムに苦戦しながらも勝つというファンタジーな夢だ。
ただ、あまりにもリアルな夢だったので一瞬本当にあったかもとか考えたのだが(それは有り得ないだろ)とすぐにその考えを捨てた。そう考えた後、丁度俺は座った。
座った後、何やらかんやらあり、入学式で校長のありがたい話を聞いていた時だった。途中でなぜか睡魔が来たのだ。
それに俺は抗いきれず目を閉じてしまう。さっきは俺が子供になっており魔法を使いスライムに苦戦しながらも勝つという夢を見たがそれとは別のベクトルの不思議な夢を目を閉じたときに見た。
俺は白い部屋に黒髪のロングで、白いワンピースを着た10歳ぐらいの女の子と向き合っていた。そして、白い女の子(たぶん)が神々しい声を放ち白い部屋に響かせた。
「すみません。もう、時は来てしまいました。あなたに頼るしか道がないのが心苦しいですが、時が来てしまったのです。あなたに幸が訪れんことを。開放!!」
そう、少女が言うと、俺の頭から青色の光が放出を始めた。それと同時に前世の幼い時のことを思い出し始めた。夢で見ていたことは実は前世の俺の記憶だった。
そう確信したとき、俺の意識は覚醒した。「俺は神童で、天才魔導師だった」そう思わず口から漏れてしまった。すると、左隣の男子から「なにを言ってんだよ」と小声で言われながら俺は足を蹴られた。
そしてその男子が険しい顔でつぶやく。
「お前がそれを言うとシャレになんねーよ」
それを聞き俺は驚く。もしかしたら、中二病だからこんなことを言ってしまったのかもしれないが、事実だとしたらこういうことになるのだ。「この現代日本にも、魔法師が居る」それは重要な事実だった。
なぜかといえばこの現代日本、いや、現代において魔法などという技術は存在しないことになっている。
つまり、現代の日本は魔法という技術について知らないので、当然魔法を探知できず魔法師は好き放題犯罪が出来る、ということだ。そして隣の奴は魔法師で、魔力が感知できるほどの力量ということだろう。
あくまでも想像だが、あの発言は自分のことを天才魔導士という俺の保有魔力量が確かに天才魔導師といえるほどの保有魔力量を持っていたからだと考えられる。
そういえばなぜこんな冷静に分析をしているんだ?絶対前なら気づかなかったと思うが。
なぜそうなったかといえば、前には無かった思考。つまり、今から始まった思考ということだ。前と今とで変わったことといえば唯一つ。それは前世の記憶を思い出したこと。
つまり、前世の記憶を思い出したことが原因。記憶中でも、前世の俺が冷静だったこともあるので確実だろう。
一応前世の経歴と魔法についても整理しておく。
まず、俺の前世はレイン・サード・ペンサルトという名前の男だ。身分は伯爵の位の貴族。魔力量、頭脳共に幼い頃から優れていたので神童と呼ばれていて、十歳の頃に調子に乗り魔法式を作成したところ、酸素と炭素ではなく酸素と水素でやっていまい失敗。屋敷が一部崩壊してしまった。
だが、民に優しいのと、経済において優秀だった伯爵である父ガーグ・ゼド・ペンサルタントのお陰でお金はすぐに用意できてたのと、あくまでも子供だったのでたいした問題にはならなかった。
だが、俺はそれをとても悲しく思いショックを受け、冷静的な思考を心がけるようになる。その後、十二歳で従来に比べて非常に魔力消費の少ない炎を出す生活魔法を草原で試験して成功。
屋敷爆破事件の雪辱を晴らした。そして、その副産物として青い炎が一番熱効率が良いことが国中に広まった。
十三歳のころスライムが発生してしまい、街が大混乱に陥るが苦戦しながらも勝ち、英雄として街の人に認知された。十五歳のころ、親に貴族の女の子を紹介され、仲良くなり恋に落ちる。以降は不明。
といったところだ。だからといって死んだという記憶は無い。それに体内に感じる魔力はそのときの記憶のよりもだいぶ高いためそれ以降も人生を歩んでいたのは間違いないだろう。次は魔法について整理しよう。
魔法とは、魔力を何らかの方法を使って世界に奇跡を起こさせること。この世界では魔術とも呼ばれるものでもある。
魔法を発動させる、言い換えれば魔術を発動するのには大まかに三種類あり、一番スタンダードなのが
これは曖昧なイメージによる発動ができるため、お手軽で誰にも出来る。
一方、相手にバレてしまう危険性があり、種類もどうやって開発したかは不明なため、前世の世界では増えることがなく種類は少なかった。
次は、魔法式による方法だ。この方法については前世では議論中だった。ちなみに、解っていることを説明すると、魂につながりがあるのを強くイメージして「リンク」と言って何かに接続し、魔力を代償にしてそこに何かに書いてある式を付け加えるなり、削除するなりすることによって望む現象が発現するというものだ。
あくまでも勝手な想像だが、恐らく世界の中枢に魂のつながりを利用してアクセスしてそこに書いてある?数式を魔力という消しゴムとも鉛筆ともなるもので消したり付け足したりしているということかもしれない。
ちなみに数式は物質が単純であれば、単純に、複雑であれば複雑になる。
そして燃える、凍る、移動する、といった現象は単体であっても複雑だが、他の現象が絡み合うとさらに複雑になる。どちらもどんな数を入力するかによって大きさ、規模、数、位置が決まるため正確に目測をしないと戦闘では相手に当てられない。
だが、それ以外ではあらかじめ入れる式、削除する式、書き換える式の数を固定すれば問題はない。なので、生活魔法などに向いていると思う。
式を探すときだが、素のままで放置されている場合、圧縮されている場合もあり、戦闘においては高い計算力、暗算力、冷静にいられるかが重要である。
さらに、改変する文字数によって魔力消費量が変わるためなおのこと計算力は重要である。
三つ目は、魔方陣を用いる方法だ。魔方陣に関しては前世では解らない。と匙を投げられていた。現代の知識を持つ俺でもコレに関してはさっぱりわからない。
なので魔方陣に関しては、前世のときはすでにあるものの流用でしかなかった。主に使われるのは召喚魔法陣と結界ようので、それ以外は大して使われず研究していたのは一部の物好き程度だ。
こうして整理してみると、どれもこれもわからないのに使っていた。これからは、真相究明に努めてみるのも良いのかもしれない。
世界の中枢があるとか、そんなのを論理的に解明しても、「そんなのはありえるはずがないだろう」って一蹴りされそうだがな。
そんな結論を出した後、俺は考えていた。何のことかについてかというと、あの冷静な思考をしたときの俺自身についてだ。
いつもの俺なら絶対に「お前がそれを言うとシャレになんねーよ」という一文を聞いたとしても、魔法師である。などと瞬時には思いつかないだろう。
(そりゃ、そうだろうな。日本は平和だから、そういう他人を疑うとか言葉から情報を多く取ろうとかいう考えはないだろう)
俺の心の中でそんな幼い声がした。俺は確信した。(二重人格、(正解だ。俺は、十五歳のレインだ。短い時間だろうけどよろしく)
(よろしく) で、多重人格になるのは必然だ。人格とは、人生の記憶から形成されるものだ。そして、俺は完璧にその記憶を吸収しきれてない。
だからまだもう一人の俺の人生の記憶を吸収しきれてない俺は、二つの人格を有することになる。
といっても一生、二重人格か?というとそういうわけもでもない。さっき言ったように、人生の記憶から形成されるものだ。
だから、俺が記憶の中にあるもう一つのレインとしての人生の経験をなじませて吸収していく。そうすれば、一つの人格になるだろう。だから、レインは『短い時間だろうけど』と、言ったのだ。
それで完成された人格はレインよりの少々冷静な人格に収まるはず。なぜ、レインよりの人格になるかといえばレインの人生の方が重みがあるし、感情が深く残っているからだ。
確かに俺は自身の不幸で苦労をしているものの、家を間違えてぶっ壊したり、街がスライムに襲われたりとしているのでレインの方が人生に重みがあるだろう。
そんなことを考え終わると、俺はボーっと入学式終了直後まで過ごしていた。だが、俺は重要な事実に気づいた。(隣の男子って相模じゃねーか!)
そこで俺は疑問に思う(俺が気づかなかったのはまだしもなんで、もう一人の俺ことレインさんが気づかなかったのだろうか?)そんなことを思ったらレインさんが話してくれた。
(いや、だって友達なんだろう。知らせたら後々気まずくなったりするかも知れないじゃないか。だから、伝えないほうがいいんじゃないかな。と思ってな)
コレはうそだ。なぜ解るかというとなぜだか相手の感情がこちらに伝わってくるから。ちなみに、今のレインさんの感情は焦り。
所詮は十五歳の思春期の少年なので、こういう抜けたところもあるのだろう。ふと、思ったのだが人格とは人生の記憶から形成されるものである。
もしも、十五歳以上の記憶を思い出したときにレインさんがこの性格ではなかったらどうなるのだろうか。
まあ、あの幼女だって封印をわざわざ最低限にする必要などないので、これ以上思い出すことはないのだろうが。そんなことを思っていると、俺たちの退場のときが来た。
俺たちは拍手の中退場した後、教室の中に入った。全員が席に座ると、先生がまた説明を始めた。
「この後、十分になったら校庭に行って、集合写真を撮るぞ」
「解ったか!」
「解りました」
おっとりした感じの子が答えた。ちなみに、この「解ったか!」とヤンキー口調で言ったのは女教師は坂上 恵美である。
見た目は貧乳メガネの背が高いスレンダーな知的理系女子という感じなのだが、聞いての通りヤンキー口調で話す。といっても、ヤンキーなわけではないだろう。
確かに『近年、教師の質が低下している』などといわれているが、さすがにヤンキーを雇うわけはない。しかも、ここは国立の高校なのだ。たとえ雇っていたとしても、ここに配属をされることはないだろう。
たぶん。なぜたぶんというのが付いたかというと、さっきヤンキー的なセリフを聞いたからである。そのセリフとはこうだ。「間に合わなかった奴は、うさぎ跳びで十週な」である。
いや、別にヤンキーであるわけではない。ただたんに、体育会系なだけだ。たぶん体育教師なのだろう。大抵勉強が出来る奴は、スポーツは得意なわけではない。だから、まず基礎体力からつけようとしたに違いない。
そんなことを考え終え暇だなーなんて三分経った頃に早速思っていると、相模が話しかけてきた。
(魔法協会関連かもしれない気を付けろよ)(ああ。わかっているさ)
「あの、茶髪のメガネっ子。良いとは思わないか?しかも、いろいろな科学コンクールで優秀な成績を収めているらしい。特に生物学だとか」
「へー。でも、ちょっと起伏が無くないか?」
「まな板だから悪いって言うのか!貧乳はステータスだぞ!」
俺は、アイツにこれ以上貧乳、貧乳連呼されるとあの子が可哀想なので小声で耳打ちで注意する
「おい!あまり大きな声で言うな。聞こえていたら本人が可哀想だし、何よりあの子にお前、嫌われるぞ」
「え、別に俺は褒めているだけだが?」
「いや、いくら褒められたって大体の女子は貧乳というのがコンプレックスだ。コンプレックスを言われたら傷付くだろ」
俺はそう、さも当たり前のようにそう返すチャラ男なのに、女心がわかっていないチャラ男に返した。お前、本当に魔法師か。
(おい、お前の幼馴染とあの女のこの魔力量が普通よりも高いぞ)
(ということは、アイツは魔力が高い奴を狙っているのか)
そんなことを思った瞬間にそれを覆す言動をアイツはした。
「やっぱり、ボインがいいな。ほら、あのおっとりしそうな巨乳っ子を見ろよ。すごいぞ」
「へーそうだな」
そんなことでがっかりしていると、遂に十分になった。よっこらしょと立ち上がろうとするとそこらじゅうからうるさく{ガタン}{バタン}{ズー}{カッカッカ}というのが聞こえてくる。
俺が足音がする反射的に右に振り返ると、まるで競っているかのように我先にと他人を押しのけたり、足を引っ掛けたりして他人を妨害しながらすさまじいスピードで
もちろん、
何かはわからないが、とにかく走った良いことはわかる。なぜなら、男子の一部生徒はともかく、女子生徒までもが走っていたからだ。
最初は女子も男子も欲しがるものか欲しい権利が一位だともらえるのかと思ったのだが、これだと足が遅い奴が同じ足が遅い奴を妨害する理由がわからない。
だとすると、最下位に近づくにつれて何かもらえるものが減るだとか、最下位に近づくにつれて、罰が増えるとかそんな感じの類だろう。
そうするとヤバイなと思いながら席を立ち、俺は全力疾走を始めた。すると、予想通り体育科の先生なのか坂上先生は現役男子高校生の俺のスピードについてきながら言った。
「間違いなく、お前が最下位決定だな」
そういい終えると坂上先生はスーツから竹刀を取り出しながら言い放つ。
「かーーーつ!!!お前はグランド二十週だ!!」
竹刀でたたかれながら俺は思った。教師の質の低下どころの騒ぎじゃない。なんで平然と法を犯している先生がいるんだ?日本はヤバイのか?崩壊しちゃうのか?そんなことを誰かに心の中で聞きながら俺は竹刀から逃れるために精一杯走る。
さすがに、グランド二十週と竹刀を叩かれ続けるのはキツイ。なので魔力探知で、まだ抜かせる位置に人がいることを確認しつつ俺は補助魔法の
[ああ、女神よ。美しき女神よ。そなたの力の一部を貸しておくれ。我は神の子の人なり。神の子なり。女神よそなたが慈悲深い女神だと信じ我は望む。我に山河を打ち砕く力を。馬のような速さを]
そうして魔力をこめると、成功したので内心ほっとした。なぜなら、今の
もちろん、体育科の先生とはいえ先生がボルト並みの速度で走れるわけではないので先生と俺との距離が離れて行く。
なにげなく振り返ると先生は悲しそうな表情をしていた。ドSなのかよ。そして、下駄箱前で太っているめがね男子を抜かし、無事俺はグランド二十週を走ることから逃れた。
「最後の追い上げは良かったぞー」
「ありがとうございます」
俺は、やけににこやかに話しかけてくるヤンキー先生こと恵美先生にそう返した。すると、変わらぬ温かい笑顔で先生が告げた。
「でも、ワースト二位だから明日グランド十週ね」
「え、」
「ほらほら!!いけ!!遅れるぞー」
( ドンマイ。だがな、戦う魔導師は魔導だけを鍛え続ければ良いわけじゃない。前衛職までは行かなくとも、体も鍛えなくちゃいけない。
そうしないと、前衛職がやられたときに接近戦に持ち込まれるとまずいし、そもそもソロのときは前衛職が居ないから接近戦も対応できるようにしないとまずい)
(だから、無駄になるわけじゃない)
(いや、戦うつもりとかないし。第一戦う相手が居ないだろ)
(いるじゃないか隣に)
(いやいやいやいや、戦う可能性がほとんどないだろ)
(戦わないとは限らないぞ、こいつが自分の仲間に入れたいと思ったら魔導を行使してくるかもしれない)
(その前に、言葉で勧誘してくるだろ)
(そりゃ、そうだろう。だが、アイツが犯罪活動をする組織に属していたらどうする。魔導師協会にもいろいろあるんだぞ)
(そんな可能性は低くないか)
(可能性は低いが、少なくとも数パーセントはある。用心に越したことはない)
(まあ、そうか)
そんなことを思っていたら、集合写真は撮れたらしい。後で、見たら議論をしている人のような険しい顔と疑うような表情をする顔が撮れていた。おかげで友達に笑われてしまった。おのれレイン。
集合写真が撮り終わると各自解散になった。明日の学校は休もっかななんてことを考えながら校門を出て帰ろうとするといきなり、誰かが腕に抱きついてきた。実は幼馴染じゃないかなと思い一瞬ドキドキしたのだが、やはり妹だったようだ。
今右腕に抱きついているのは、仙道
「お兄ちゃん。にゅーがくおめでとう」
「ありがとう。だが、中学生になっても腕に抱きつくのは勘弁して欲しいんだけど」
「別にいいじゃん。高校生になるまでならセーフだよ!」
指をピシッと俺の前に立てて急に真面目に語りかけてくる妹に俺はため息をついた。まあ妹は見ての通りのお兄ちゃんっ子である。
俺としては困るわけだ。何故かといえば(俺が不快感を感じるこ)と、そして一番大きな要因である(世間の目線が痛い)からだ。
小学三年生ぐらいまでは微笑ましいという感じで近所の皆さんも見てくれていたのだが、今通りすがった全身黒いスーツを着ている女のように引きつった表情で見てくることが多々ある。
ちなみに、妹はまるで血がつながっていないかのように美人だ。ハーフなせいか目が黒く金髪である。母譲りなのかスタイルは中学一年生にしてはとても良く、少し胸が小さめの高校生でも充分通じそうだ。
俺はいつものように妹にお前がブラコンだから直せという話をしながら俺たちは帰宅した。
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