第10話 ヤワタと夜の町へ①

 城に戻ったオレたちは各々の部屋に戻る。オレは気になって仕方が無い。勇者はどうなってるの?魔王と勇者はセットでしょ。勇者の話をした途端、ミサキ、トキワには嫌な顔されるし、やっぱり魔王一家だからか?勇者は魔王一家にしてみればまさに天敵なのだろうか。う~ん気になる。よし、ヤワタに聞こうとするか。

 オレはヤワタの部屋に行く。ヤワタの部屋はオレのゲストルームから近い。程なく歩くとヤワタの部屋に着く。オレはノックした。

「ヤワキンいる?」

「は~い。どうぞ。」

ヤワタの声がした。オレは部屋に入る。部屋に入るとなんだこりゃ!?一面日本のアニメのポスターが貼ってあります。音楽も流れているがアニソンが流れてます。ヤワタはオタクなんだね~。オレは何事もないかのように近くの椅子に座る。

「どうしたの?シヅッチ。」

「ちょっと聞きたいことがあって…」

「何?答えられる範囲なら答えるよ。たとえばミサキ姉さんのバストサイズ?それともトキワのバストサイズ?」

「いやいや、そうじゃないよ…(ちょー聞きて~!!)」

「では何なの?」

「実は勇者の事についてなんだ…。」

「あ~勇者ね~。」

ヤワタはなるほどねという感じでオレに言った。

「シヅッチも物好きなんだね~。」

「勇者はどうしてるの?」

オレは疑問をヤワタにぶつけた。

「勇者は町の外れにいるよ。」

「今何してるの?」

「気になる?」

ヤワタはニコニコしながらオレに顔を近づけた。近い!近いよ!!

「うん。気になる。」

「よし、夜だから一緒に勇者に会いに行く?」

「本当にいいの?」

「いいよ。いいよ。準備しようか。」

「オッケー!!」

オレはいよいよ勇者に会えることでうれしかった。勇者と魔王どんなことがあったんだろう。裏話とか聞きたいな。


 夜の町にオレ、ヤワタが行く。夜だからこっそり会うのだろう。魔王と勇者は相対する関係だから堂々と会いに行けないんだろう。夜の町を歩きながらヤワタが

「いいか。シヅッチ。魔王と勇者はあまり仲良くはない。ただ、ボクと勇者はウマが合っていて、たまに会うんだ。勇者は魔王に敗れたんだ。しかも戦いをせずに。」

「そうなの!?」オレは驚いた。勇者、不戦敗なの!

「うん。で父様は勇者に町の外れにちょっとの領地をあげたんだ。詳しくは直接会って話を聞いた方が早いかな。」

ヤワタはそう言ってなぜかルンルン気分で歩いている。

町の外れまで歩く。ミサキ、トキワと歩いたときとは打って変わって町の外れの町並みは飲み屋街になっている。もしかして、勇者は魔王に負けていつも飲み屋街にはしご酒をしているのか…ちょっと悲しくなるな…。


 さらに町の外れまで歩く。どんどん暗くなっていく。オレは

「ヤワキン、大丈夫なの?めっちゃ暗いじゃん。」

「大丈夫。大丈夫。そろそろ着くよ。」

ヤワタが落ち着いた表情でニコニコしながら歩く。程なくして着いた。

「シヅッチ。ほら、ここ、ここ。ここが”キャバクラゆうしゃ”だよ。」

指をさし、オレに教える。

「何!!!」

オレはかなり驚く。またまた~ヤワタのジョークなんだろ。

「ヤワキン。嘘ついちゃって、勇者がそんなことするわけ無いじゃん。」

「いやいや、ここだよ。ここのオーナーが勇者マツドの店だよ。」

「え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」

待って~~~~!!現在、勇者は風俗店店長かよ!!すげ~ショック!!!これならミサキ、トキワもあの対応するわけだ。キャバクラゆうしゃの看板が異様に目立つ。

さらに店はとても豪華に見える。

「とりあえず、入ろ。」

ヤワタが招き催促する。オレ、キャバクラ入ったことないんだけど…よりによって人生初の夜の町デビューが魔界なんて…。

そして、オレもキャバクラゆうしゃに入店した。


入店したらすぐにボーイなるものがオレたちを迎え入れた。

「いつもご贔屓にありがとうございます。ヤワタ様。今日は二名様ですか?」

ヤワタが指を二つあげ

「二名だよ~」

そしてボーイが

「二名様ご来店です。いらっしゃいませ!」

この声で他のボーイたちが

『いらっしゃいませ!!』

キャバクラってこんな感じなの?店内はまさに豪華絢爛。ソファーも高級感漂う。客はもうこれでもかと言うぐらいたくさんいた。キャバ嬢はオレが見る限りレベルが高い。日本に行ったらアイドル、女優でいけると思うくらいだ。みんなとても楽しそうだ。(特に雄。)

オレたちもボーイの後をつけボーイが

「いつもの特別席でいいですか?」

「そうだね。案内してくれる?」

「かしこまりました。」

ボーイが特別席まで案内する。ざっと見た感じだが、一階が一般席で二階が特別席みたいだ。二階に上がると騒がしい雰囲気ではなくとても落ち着いた感じだ。客もどことなく高級な雰囲気を漂わせてる。キャバ嬢はベテラン感のオーラが半端なくすごい。お酒も高そうなボトルがあっちこっちテーブルに置いてある。お支払いはいくらぐらいなんざんしょ?


「こちらへどうぞ。」

ボーイに誘われ

「はいよ。」

ヤワタはソファーに腰掛け足を組む。オレは緊張で背筋をピンとして座る。

「シヅッチ。もっと楽にしてよ。」

「オレこういう所初めてで…」

オレはキョロキョロ周りを見る。

「そうなんだ~。けど、一度これが楽しいと感じたら抜け出せなくなるよ。」

「本当?」

「うん…ボクはこれでお金を失った魔族いっぱい見ているから。」

「気をつけないとなぁ~。」

オレはから返事みたく答える。オレは聞いたことがあるぞ。キャバクラで女に貢ぎすぎて、お金を失い、裁判所でも破産が認められず何とか個人再生で少しずつお金を返してる人がいるって…


 程なくして、頭の周りが薄毛で真ん中が光っている巨漢な男が現れた。

「いらっしゃいませ。ヤワタさん。お久しぶりですね。」

「久しぶり~。元気だった?」

「ええ…今日はお友達でもお連れになったのですか?」

巨漢の男がめずらしがっていた。

「いや~ね。今日はどうしてもあなたに会いたいと言われて来たんだよ。」

「そうなのですか?私みたいな者でいいのでしょうか?」

巨漢の男が恐縮している。

すかさず、オレは

「え!?」

ヤワタが

「え!?じゃないよ。この方がキャバクラゆうしゃのオーナーにして、元勇者マツドさんだよ。」

「ん!?」

オレはあっけにとられている。

「初めまして。お客様。私がここのオーナー、マツドです。元勇者です。」

マツドが丁寧にお辞儀をした。

「初めまして。オレは志津隆史と言う者です。現在、勇者が気になってきました。」

オレは内心、へこみながらお辞儀をした。マツドが

「もしかして、地球の人ですか?」

「そうです。」

「そうなんですかー。地球の人はお初にお目にかかります。」

オレは話を変えて

「今は勇者ではないのですか?」

「はい。現在は勇者ではありません。この魔界には勇者は不要と考えております。少し話が長くなりますが、私はこの魔界が混沌としている時に平和を望み立ち上がりました。仲間もいましたが今はどこにいるのやら…。私も悪い魔族を討伐していたのですが、そこにコウダン様が現れて、戦いを挑みましたがあっさり勇者の剣を折られ、それでも武力で対抗しましたが負けてしまいました。」

「そうなんですか…」

オレはちょっとショックですた…

「武力で対抗できず、私は死を覚悟しました。しかし、コウダン様がお話を持ちかけて、一緒にこの魔界の平和を手助けしてくれないかと言われ、二つ返事で微力ながら手伝わせて頂きました。」

オレは疑問に思ったことをマツドにぶつけた。

「それなら、今はこの魔界の要職に就いているはずでは?なぜ、ここにいるのですか?」

マツドは一呼吸おいて

「………はい。この魔界に平和が訪れて、コウダン様に要職のお誘いがありました。しかし、私はその時は勇者のはしくれです。プライドがあったのでしょう。お断りしたのです。勇者だから何とかなると思ったのでしょう。私はこの平和の魔界の町に武器屋を営みました。」

「武器屋でしかも勇者が店長なら、さぞかし売れたのではないのでしょうか?」

オレはマツドに聞いてみる。

「はい。最初は売れました。もう、それはそれはと言うほどです。その時に結婚して、子供も生まれました。これぞ裕福で、安泰だと思いました。しかし、それもつかの間で、魔界が平和になったせいとも言うべきでしょうか…武器が全く売れなくなってしまいました。一番の痛手は武器を買うのに、身分証明書の提示が義務づけになったせいで、一般の方が全く買えない状態になったため店の経営状態がボロボロになってしまいました。」

「借金とかしていたんですか?」

「その当時は店を大きくしていて、支店も四店舗ありました。大きくしていくうえで、どうしてもお金が必要で、この魔界にもお金を貸すお店があったのでたくさん借りました。その時私は返していけると考えました。けど、ダメでしたね。」

「支店とかはどうなったのですか?」

「だんだん、お金を返せず、支店をたたんでいったのですが、それでも借金は膨らむ一方でした。借金は1000万円程で利息が原因でしたね。毎月、利率は40%でした。」

オレは驚いた。

「毎月、利率40%?」

そこにヤワタが

「なんで40%で驚くの?」

「これは驚きものだよ。たとえば1000万借金していたら、利息は400万円だよ!確かに、少しずつ返していって元本1000万は減るけどそれでも利息は300万円くらいあるよ。マツドさん。毎月の支払いは利息だけで精一杯でしたね?」

「はい。その通りです。元本1000万円は減っていなかったです。しかも組み入れがありました。」

「本当ですか!?」さらにオレは驚く。

ヤワタが

「何それ?」

「組み入れって、元本組み入れのことで、毎月の支払いが利息だけ、たまに借金を返さなかったとする、これが長く続くと貸した側が返せなかった利息を元本1000万円の中に組入れる。つまり、元本が増えるんだ。そうなると毎月の利息は400万じゃあ済まない。」

「シヅッチ?それって元本1000万円プラス返せなかった利息分と言うことで、例えば200万円利息分が返せなかったら元本1200万円と言うこと?」

「ヤワキン、そのとおり。これで毎月の支払いが480万円ってことになる。っていうか、そもそも、この利息がいけないよ。絶対に返せない。日本では利息制限法があって少し前まで最大29.2%で今はどんなに最大でも100万円以上の借金なら年率15%だよ。多分だけど、お金が返せない以上、さらに利息の他に遅延損害金も発生しているからこれでもてんてこ舞いだと思う。」

マツドは感心して

「よくご存じで。その通りです。借金まみれになった私を見かねて、家内とは離婚をしました。子供は家内は育てたくないとのことで、私が引き取りました。」

 オレは心の中でこう言いたかった。ゲスの極みだな。勇者の元奥さん。

「で、どうしました?」

オレはマツドに質問する。

「さすがに返せないと思いまして、コウダン様の所に行きました。そうしたら、隆史様の同じ事を仰ってました。そこで、コウダン様が借金を0にしてくれる手続きをするとも事で手配してくれました。」

「もしかして、破産ですね。」

「はい。私は借金を0にしてくれるならうれしいと思いましたが、とても大変でした。」

ヤワタが

「何で大変なの?」

オレは

「大変なのは自分の資産価値ある物はすべて没収ということだと思う。例えば家、高級な物、生活に必要最低限の物しか残らない。」

「隆史様、本当によくご存じで。破産はしましたが必要最低限の生活しかできなくなりました。これからどうしよう…子供をどう養おうと考え込んでいました。さまよって歩いているうちに、林の中だったでしょうか?そこに、地球の本が落ちていました。それは俗に言うエロ本でした。」

「んんん!?」オレはハテナになる。

「そのエロ本には女性が男性を接待するお店が紹介されていました。当時、魔界はそういうものがなく、弱い女性が蹂躙されたりと大変でした。私は思いました。堂々とお金を払って、楽しく女性とお話ができるお店があればいいのではないか?と…そこでコウダン様にお話しました。雄のはけ口を楽しくできる場所を提供したいと。」

「反対されたのでは?」

オレは段々、こいつおかしいぞと思いつつも…

「最初、反対されました。しかし、手助けしたのがヤワタ様でした。」

ヤワタが

「いえ~い」とピースしている。

「ヤワタ様がスポンサーになって頂き、店の設営、女性のスカウト、給与面など支援して頂きました。そうして、店がこのように大きくなりました。その時からですか…私も段々、太ってしまって…この有様になってしまいました。」

勇者マツドが大きいお腹を”ポン”とたたく。そこにヤワタが

「そうだったね~。前は痩せててかっこよくワイルドな顔だったね~。」

「そうなの?ヤワキン。マツドさん当時の写真とかあります?」

「ありますよ。お恥ずかしいのですが…」

マツドは当時の写真を持ってくる。

「どうぞ。こちらになります。」

オレは驚いた。当時の勇者、マジでかっけ~。まさに勇者の服を着ていて、髪はロングヘアで顔は軽く無精ひげを生やしていた。う~ん。どう表現しよう…あっ!伝説のロックバンド、ニルバーナのカート・コバーンとそっくりだ!!

「当時、本当にかっこいいですね…。」

「ありがとうございます。」

マツドが話を続ける。

「そうして、このことがコウダン様に知れ渡り、コウダン様を招待したら、いたく気に入って頂き風俗の許可を特別に許して頂きました。そして、今に至ります。」

「そうなんですか…もしかして、そのエロ本は?」

ヤワタが頭をかきながら

「もちろん、ボクの物だよ、いらなくなって林に捨てた。そうしたら、まさか勇者が拾うなんて思っても見なかったよ!あはははは。」

「あははははは…」

勇者笑ってるよ…

「よくわかりました。結構大変でしたね。」

「いえいえいえ。あっ、せっかくなんだし、当店、ナンバーワンの子とおすすめの女の子用意しますね。」

「よろぴく。」ヤワタが手を上げる。

そして、ナンバーワンの子とおすすめの女の子が来た。ナンバーワンの子が

「いらっしゃいませ。サキです。よろしくお願いします。」深々とお辞儀をする。

同様に、マツドおすすめの女の子もお辞儀をする。

そこに、ヤワタが


「オーナーのおすすめの子はオーナーのお子さんだよ。」


オレはすかさず


「ゲスじゃね~か!!!勇者マツドは!!!」


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