第17話 魔王一家と飲み会
今日は、魔王一家の自宅の客室で夜を過ごすことになった。オレは、椅子に腰掛け再度、魔界の法律を見直す。間違いなく、遺言の撤回の制度がある。これで勝てる…
「ふう~。」
オレはため息をついた。今日もいろんな事がありすぎ。法律家というのは大変だなぁ。つくづくオレは思う。まあ、とにかくメガネを公開処刑が楽しみだ。メガネの困った表情がとにかく見たい。想像するだけでにやけてくる…
それにしても、コウダンのおっさん、よく、もう一通、遺言書作ったものだ。遺言の撤回という制度を知らないとできない代物だ。
”トントントン”ドアの音がした。
「はい、どうぞ。」
「ごめんね、来ちゃった。」
そこに来たのはトキワだった。
「どうぞ、どうしたの?」
「………………………。」
言葉を発しないでもじもじするトキワ。あっ、そうか!オレは
「トキワ嬢、トイレに行くのが怖いのか。よし、一緒について行くぞ…」
思いっきり殴られました。
顔を真っ赤に腫らしたオレはもう一度、トキワに
「どうしたの?」
「うん。……………今日はありがと。」
「えっ。」
「だがら、ありがとうって言ってるの!」
そういえば、トキワからお礼の言葉は初めてだ。
「あっ…ああ…」
オレはあっけにとられている。まさか、トキワから感謝されるとは…
「わたし、まさかこんな事になるとは思わなかった。ノブト兄さんもこんな人だとは思わなかった…いとも簡単に家族が壊れていくとは思わなかった………。」
トキワは少し泣いているようにも見える。オレも励ましの言葉を投げかけてやりたいが時にはその励ましの言葉で傷つくこともある。だからあえて何も答えなかった。
「これから、ノブト兄さんは、どうなっていくの?」
トキワはオレに涙ながらに言う。
「正直、わからない。」
「そっか……。」
「ノブトの生き方は、自分で決めるものだよ。他の方、さらに家族でも決めることではないよ。」
「………そうだよね。」
何かに吹っ切れたトキワは涙を拭いて、
「今日はありがとう!」
「おおう!」
トキワらしくなったのでオレもお礼に答える。
そこに…
”トントントン”ドアの音がした。
「私です。ミサキです。」
「げっ。ミサキ姉さん、なんで来たの?」
「何かミサキとあったの?」
「とくには無いけど…」
トキワは困惑している。まあ、いいか。
「どうぞ。」
オレはミサキを招き入れた。
「失礼しますね。あれ、トキワ。何でいるの?」
「その言葉、そのまま返すよ、ミサキ姉さん。」
「私はお礼を言いに来たのよ。トキワは?」
「私は……私は……。」
「私は?」
「私は……私は、あっ、隆史と一緒にトレーニングする約束を今日してて、これから行うところなんだ。」
「えっ!?」
オレは驚いた。すかさずトキワが来て、オレの首に手を巻き付け
「話を合わせなさいよ。」
小さい声でオレに言う。なんか不良に絡まれてるみたいに見えるんだけど…
「オレ、トレーニングなんて興味無いよ。」
「だ・か・らあわせろって言ってんだよ。」
完全に不良じゃん。トキワ嬢…
「イエッサー。」
首をかしげているミサキが
「どうしたんですか?」
「こめん、ごめんミサキ姉さん。隆史がトレーニングのやり方がわからないって言うから…」
オレは小声で
「ただ、ミサキに自分の泣き顔見せたくないだけじゃん。」
「あら、た・か・し今すぐトレーニングしたいの?すぐにやろうね。」
十字固めされました。
オレは
「ぐあ~~~~~~~!!!」
痛すぎて叫ぶ。マジで痛い。完全にはまっている。
「隆史さん。大丈夫ですか?」
ミサキがオレを心配そうに見ている。オレは
「た・す・け…ぐあ~~~~~~~!!!」
「あら、たかし、あまりに気持ちよくて叫んでるのね。」
トキワはさらに締めにかかる。
「トキワ。隆史さんいっぱい汗をかいているわよ。大丈夫?」
「大丈夫なわけありませ…ぐあ~~~~~~~!!!」
「あら、隆史、叫ぶほど気持ちいいんだね。」
ヤバイ、痛すぎる。足がもげそうなほど痛すぎる。そこに
”トントントン”ドアの音がした。やった~助け船だ。
入ってきたのが酒とグラスを持ったヤワタだった。あっ、これダメかも。
「あれ、ミサキ姉さん。トキワちゃんじゃん。楽しそうだね。」
十字固めされているオレの横にあぐらをかいて座り、グラスに酒を注いで
「乾杯しようか。」
ニコニコしているヤワタ。乾杯なんてできるわけね~だろうが!
「ヤワキン、た・す・け・て…」
「なに?グラスが不満?さすがシヅッチ。このまま飲ませるね。」
ボトルをオレの口につっこんだ。酒を飲むオレ。何これ?強いお酒?十字固めよりもきついぞ。
「うぼぼぼぼぼぼ。」
「なに?ウマイの?さすがシヅッチ。この魔界の中で一番アルコールが高い酒でうまさがわかるとはさすがだね~。」
「(うまくね~よ!!!オレは酒が苦手なんだ!)うぼぼぼぼ~ぼ。うぼぼぼっぼぼぼぼ。」
頭がくらくらする。しかも、十字固めされていて痛い…。最悪のコンボだ。やばい…意識が朦朧としていく。それを察知してかトキワは十字固めをといた。
「助かった……。」
オレは安堵する。しかし、ヤワタは止めない。
「シヅッチ。まだ飲めるでしょ。」
「いいえ、飲めませ…」
また、ヤワタがオレの口にボトルのまま突っ込む。そしてヤワタが
「今日は、ありがとうね…」
オレはふっとヤワタを見た。ヤワタもどこか寂しそうだ。そうか、ヤワタは酒で気を紛らわしているのか。ノブトのことで今後どうなるか心配しているのか…多分、ノブトはこの一件で周りを迷惑かけているはずだ。魔界の追放とか考えているだろう。
「なに…いいって事よ!」
オレは寂しそうなヤワタを元気づけるかのように言った。ヤワタは察知してか
「なに偉そうなこと言っての?ほら、飲め、飲め。」
「いや…もういい…」
本当にいらないです。
また、”トントントン”ドアの音がした。今度はあの人か?
「あら、みんないるの?」
やっぱり、ミノリだった。
「お母様もいらしたんですね。」
ミサキもお酒を少しもらい、ちびちび飲みながら言った。
「ええ、今日は隆史さんにいいお酒を持って一緒に飲もうと思ったのだけど、ヤワタに先に越されたみたいね。」
「お母様、一緒に飲みましょう!ほら、このお酒好きでしょ!」
ヤワタはほろ酔いながらミノリに催促する。
「あら、いいわね。私も頂こうかしら。私からも、お父さんが好きだった地球の日本の焼酎を持ってきたわよ。」
「何なんです?」
ミサキが質問する。
「それわね……このお酒よ!!」
オレは、それを見てびっくりした。あまりお目にかからないお酒だ。あったとしてもプレミア価格する代物だ。光り輝いていて、ミサキ、ヤワタも驚いた。それは…
”魔王”でした。
おいおいおい。ダジャレかよ。飲みやすくてウマイとしか聞いたことのないお酒だがなんてチョイスするんだこの御方は。
「さっさっ、飲みましょう!ただし、トキワはダメよ。」
「え~!!トキワも飲みたい!」
トキワは不満そうだ。
「もう少し大人になってからね。」
「お母様、何言っての?トキワは心は子供でも体はお・と・なよ!」
セクシーに体のラインを見せながら言った。確かにオレから言わせてもらいたい。
お・と・なだ!そこにヤワタが
「トキワちゃんセクシー。でもダメ~。」
「え~!!」
「トキワ、ダメよ。」ミサキもトキワに静止する。ミノリがトキワに対して
「ほら、トキワ。トキワが好きな飲み物持ってきたわよ。」
「本当だ。ありがとうお母様。」
「ええ。」
魔王一家(ノブトを除く)とオレは一緒に飲んだ。和やかな感じがする。みんながたわいのない話をする。笑い声がする。みんなの笑顔が見える。これが家族なんだなぁとつくづく思う。本当はここに、魔王コウダン、ノブトも入るべきでオレはここにいるべきでないと思う。
それはいつか叶うのか?難しいかもしれない。けど、入れてやりたい……………。
あれ?意識が遠のいていく……。
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