第14話 魔王の死亡
ミサキが急いで魔王コウダンの所へ行く。オレ、トキワもついて行く。トキワは半分泣いているように見える。確かに家族の死はつらいものがある。もし、おれが同じ立場なら同じ行動をしているはずだ。そして、魔王の部屋に着く。部屋にはミノリ、ノブト、ヤワタもいた。三人とも疲れた様子だが、何より、心配している感が強い。
「お父様…」
ミサキが今にも泣きそうな声で…
「コウダンさんの容体はどうなの?」
オレはミノリに聞く。
「隆史さん、わざわざ来てくれてありがとうね。」
「そんなことより、どうなんですか?」
「ごめんなさい。どんどん悪なる一方で…」
「お父様、大丈夫ですか!?」
ミサキがコウダンに問いかける。
魔王の意識はうつろうつろという感じだ。息づかいも荒い。
………
「おお、ミサキか…」
なんとかコウダンがしゃべる。
「お父様!!」ミサキはコウダンの手を握る。
「ありがとう…ミサキ…みんないるんだな…みんなに会えることがこんなにいい事なんて…私は幸せ者だな…」
ミノリ、ノブト、ヤワタ、トキワみんなが泣いている。オレももらい泣きしそうだ。
「隆史君も来てくれてありがとう…ちょっといいかな…」
「はい…」
「ミサキ…手を離してくれないかな…」
ミサキはそっと手を離す。
そして、コウダンは隆史に耳打ちをする。
「相続の章、よんでくれたかな?」
「はい。読みました。みんなに知らせたほうが良いかと思いますが…」
「いいや、話さなくて良い。これが知ると言う大切さを身にしみるだろうから…これは魔界全体にも通じることだ…これからを頼むよ…」
「はい。一端、お任せください。」
「ありがとう…」
オレは魔王から離れる。魔王は知ると言う重要性を魔界全体に浸透させたみたいだ。
「みんなに最後に話したい事がある…」
魔王一家全員が集まる。
「ノブト…おまえは急ぐ癖がある。ゆっくり着実に歩んでほしい…」
「はい…今後、私ががんばります…」
「ヤワタ…おまえの行動はおもしろい。これからもみんなを楽しませてくれ…」
「わかってるよ。」ヤワタがすすりながら答える。
「トキワ…おまえが先頭を切ることがある。大変だががんばってくれ…」
「はい。お父様…」
「ミサキ…みんなをまとめてくれ…」
「はい。お父様。わたしがんばります。」
「最後にミノリ…またな…」
「ええ…また、どこかで会いましょう。」
そして、魔王は息をひきとった…………
魔王の遺体は魔王一家の家に運ばれた。みんなに知られると大変なことがあるのでトキワが丁重にこっそりと運んだ。魔王一家の家は日本の家と変わりない感じだ。純和風の家で日本にあこがれを抱いているのがうかがえる。庭も、京都の庭園みたいに手入れされてる。家自体そんなに大きくない。一般の日本の家庭より少し大きい家と考えていいくらいだ。魔王の遺体は10帖くらいの和室におかれた。
「とりあえず、今日は休みましょう。」
みのりが重い腰をあげた。
「そうだね。明日、話し合いをしよう。」
ノブトがみんなに向けて、、、
─────────────
話し合いが始まった…これがいざこざの始まりでもある…
話し合いは、魔王の家の広い和室で行われるみたいだ。ミノリ、ノブト、ミサキ、トキワが喪に服した和装をしている。本当、この一家コスプレ好き?と思いたくなるほどだ。それよりも、この和室から見る庭園はすばらしい。心が癒やされる…。
和室に四人が入ってきて各々、正座をしてヤワタが来るのを待つ。
トキワが第一声をだす。
「ミサキ姉さん。ヤワタ兄さんは?」
「まだ、準備しているみたい。」
「準備?」
「ええ…」
準備?何で準備をするのだろう…和装すればいいだけではないのか?オレなって普通の黒いスーツなのに。
しばらくして、足音が聞こえる。やっときたか。遅かったなぁ~。襖をヤワタが開けるなんと…
あの犬●家の一族、大有名人ス●キヨの姿で入ってきやがった。服装、しかもあのマスクまで忠実に再現している…どこにこいつは本気を出してるの?あろう事か上座に座ったよ…。
オレがつっこもうとしたらミサキが止めに入る。
「話してはいけません…」
「だって、あれはつっこみをいれ……」
「話したら負けだと思ってくざさい。」
ミサキがオレの口を止めに入る。
スケ●ヨにふんしたヤワタが正座して待つ。そして、何かを思いついたかのように雑誌を読み始めた。その雑誌は誰が見てもいかがわしい雑誌だ。
「ミノリさん…」
オレはミノリに伺いを立てる。
「ダメです。無視してください。」
おい…何言っての?お宅の息子さんがス●キヨ姿でエロ本読んでるんだよ!
ス●キヨヤワタがエロ本を読み終わった後、また何かを思い出したかのように立って、庭園へ行き、池の近くに何かをセッティングし始めた。ガチャガチャうっさいな!
セットが終わり上座に座る●ケキヨヤワタ。オレは庭を見た。”ブッー”と笑いそうになった。池にはドザ●モンがセットされていたのだ。これはダメだよ。笑うし…もうつっこもう!そうしたらトキワが…
「ヤワタ兄さん。もうダメ…。何やってんのよ!!」
トキワがつっこみを入れた。その途端、ミサキが
「こら!トキワ!ヤワタの思うつぼでしょ!」
「だって、なに、あのおかしな仮面。笑うんですけど…」
まだ、ヤワタが黙っている。
「隆史。あれ何?」トキワがオレに質問をする。
「あれは、日本で有名な映画で、犬●家の一族でその中で一番のインパクトがある登場人物をまねたんだと思う。」
「あの、池にある脚だけ出たものは何?」
「あれも同じ映画のワンシーン。」
「ヤワタ兄さん。もっと私たちにもわかる物にしてよ…」
あの映画は、まさにこんな感じで、相続の争いなんだよなぁー。これは黙っておこう。ミノリ、ミサキがマジで黙っていないだろうから…
まだ、ヤワタは黙っている。ついに、ヤワタは仮面をじらすように脱いでいく…。わかっているんだけど、みんな興味津々で見ている…。このシーンはやっぱり気になるんだよな。ヤワタが一気に仮面を脱いだ。みんなが『わぁ!』とざわめいた!
…………また、同じ仮面をつけていました…………
ついにオレはつっこんだ!
「ま~た同じ仮面だよ!!」
ヤワタのひと悶着が終わって、ヤワタが喪服の和装に着直して、普通に座った。オレがヤワタを見ていると
「おもしろかった?」
「ヤワキン……おもしろい。」
「さすがシヅッチ。このネタわかったんだね。」
ああ、わかってるよ。不謹慎だよ。と言いたかったよ。
「ミサキ姉さん。おもしろかった?トキワはおもしろかったよね?」
「よくわからなかった。」
トキワは顔を斜めにしてわからない様子だ。
「そっか~。トキワはお子ちゃまだからしょうがないよね……」
トキワのキックが飛んできた。何とかよけるヤワタ。
「ちっ。よけやがったか…」
「あぶないな~トキワ。」
「そういえば、ミサキ姉さんは?」
ミサキは正座をして目をつむったままだ。ヤワタがミサキの所へ歩く。
「ミサキ姉さん。無視しないで…どうだった?」
「………………………。」
「ミサキ姉さんもわからなかったか~。当然だよね。シヅッチにしか興味無いからね…」
急に回し蹴りが飛んできた。ヤワタは避けようとしたが、今度は右フックが飛んできた。
それが、ヤワタにあたり、ノックダウンする。
「今度、こんな事をしたらわかってるわね?」ニコニコと微笑んでいる。
「は・・・い・・・すみませんでした…」
オレは思った。ミサキを怒らせるとトキワ嬢より怖いことを…
「もういいだろ。始めるぞ!」
ノブトが場をまとめる。
「では、始めますか…皆さん、これより今後の話し合いを始めますね。」
ミノリがみんなに話しかける。
みんなが姿勢を正す。
ついに、いざこざがはじまった…
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