第13話 法務委員会のお仕事開始

 認証式がおわり、いよいよ法務委員の仕事が始まる。何を始めれば良いかありすぎて迷ってしまう。とりあえずは、魔界の方に知ってもらうことから始めるとするかと考える。その前に、法務委員の部屋があるとの事だ。どんな部屋か楽しみだ。コウダンのおっさん準備がいいぜ!今、ミサキの着替え待ちだ。

「お待たせしました。待ちましたか?」

「いいえ。ぜんぜん。」

ミサキはキャリアウーマンの格好に戻った。こっちも似合うからよし!まぁ、胸が気になる…

「では、こちらです。まずは、この城を出ます。出た後の近くにあるみたいです。」

オレとミサキは城を出る。城を出で、少し歩いたところにプレハブらしき建物が見える。

「んっ!?」

オレは何だと思う。

「ここ?」

「そうみたいですね…」

ミサキも困った感じで笑っている。

そこは一階建ての広いプレハブ小屋だ。建設現場での職人たちが休憩するあれだ。プレハブ小屋に着くと、プレハブ小屋には似合わないでかい木の板で[法務委員]と達筆な字で看板が掲げられている。オレは内心びっくりしている。いくら何でもプレハブって…他の魔族の委員の方はどうなっているのか気になる。オレはミサキに

「他の委員の方はどこで仕事しているの?」

「はい、たとえば、経済関係を扱う委員の方たちはここから10分ほどの歩くと40階建てのビルがあります。そこのビル全部だったり、教育を扱う委員の方たちは、その隣のレンガ張り20階建ての建物で仕事しているみたいですよ」

「格差社会だ………」

まさに格差社会。日本でも魔界でも一緒か!

「とりあえず入ろうか?」

「そうですね…」

恐る恐るプレハブ小屋を開ける。そこには……………


なんということでしょう。

そこは大理石で敷き詰められて、壁には有名な画家が描いたそうな猫の絵があります。猫の絵は癒やしに使うにはもってこいです。けど、なんで猫?

「すげ~(とくに猫)」オレは感心している。靴を脱ぐと…………


なんということでしょう。

そこには靴を脱いで靴を並べると両サイドには細部にまで彫刻させた扉があり、その扉を開けるとシューケースになっているのではありませんか。

「まぁ」とミサキも関心していて、二人が玄関から廊下へ歩くと…………


なんということでしょう。

床暖房になっているのではありませんか。冬にはもってこい。夏には暖房を止めればいい。


「ついに、私たちがお仕事を始めるお部屋ですね。」ミサキはウキウキしている。

「そうだね。さぞかし、いい部屋に違いないね。」オレもウキウキしている。

そして、部屋を開けると…


高校生たちが使う教室みたいで、長机、パイプ椅子、学校指定の机の上にポットが置いてあり、サイド全体が棚になっています。オレはたまらず…


!!!」



 部屋に入り、パイプ椅子に座る。

「はぁ~」

ため息が出る。コウダンのおっさん、玄関にお金かけすぎだろう。これでは匠もびっくりだ。けど、部屋の周りの棚には法律の書物がいっぱいある。

「お茶入れますね。」

ミサキがポットの所へ行って、お茶を入れる。

「ありがとう。お願い。」

オレは立って、書物を見る。とりあえず、民法の本を取り出す。どんなことが書いてあるのだろう。

ページをめくると、ほとんど日本の民法と一緒のつくりになっている。日本の民法は総則・物権・債権・親族・相続のつくりで、魔界も一緒みたいだ。

 総則の章を見てみると制度まで一緒だ。少しマニアックな物権の条文、永小作権えいこさくけんあるかなと見ると…あったよ。日本の法律を元に作ったと言っているけどまねしていると言ったほうが正しいようだ。

 あっ!そういえば、コウダンのおっさんは、相続をよく読めって言ってたっけ…。今日はとりあえずここを中心に読むとするか…

「お茶、失礼します。」

ミサキがお茶をだす。

「ありがとう…う~ん、ウマイ!」

「どういたしまして。」

ミサキが微笑む。

「隆史さん。今日はどうします?」

「そうだね。ちょっと待ってて。今日中に読んでおきたい本があるから、少し休んでて。」

「わかりました。」

ミサキが椅子に座り、一息を着く。

オレは、相続の章の条文を再確認する。日本と一緒でも、多分違いはあるだろう。そこが重要だな。

読んでいるうちに、すう~すう~と寝息が聞こえる。どうやらミサキは眠っているみたいだ。疲れがたたったのだろう。寝かせてやるか…おそっちゃうぞ!!


……………………………………


……読んでいるうちに、重要なことに気づく。

「これか!!」思わず声が出る。コウダンのおっさんはこのことを言っていたのか。確かに日本にはこの制度はない。っていうかあり得ない。このことについては魔界の方全員には伏せておこう。もちろん魔王一家にもだ。


「うう~ん」ミサキが起きる。

「起きた?」

「はい。疲れが少しとれました。ありがとうございます。」

「それは、良かった。」オレは本を閉じる。


「今日はミサキ教えておきたいことがあるんだ。」

「なんでしょうか?」

「魔王コウダンがもしもの事があった場合のことだ。」

「はい。」


オレはミサキの前に立つ。

「今日はミサキに相続について教えたいと思う。これは今の魔王一家には重要なことだろうから。」

「そうですね…」ミサキは俯く。


「今、本を読んでいたのは相続についてを読んでいたんだ。基本的には、魔界、日本も一緒だ。そこで、今後の流れを説明するよ。」

「お願いします。」ミサキが姿勢を正す。


「まず、法定相続について説明するね。」

「はい。」

「法定相続というのは、法律が定めた相続分でもし、魔王が亡くなったらどうなると思う。」

「みんなで仲良く半分ずつだと思いますが…」

「実は、法律では、配偶者たるミノリさんが二分の一、残りを子供たちが二分の一ずつをノブトさん、ミサキ、ヤワタ、トキワは分け合うんだ。つまり、六分の一すづが三人となるんだ。」

「では、法定相続分にしない方法ってありますの?」

「あるよ。それが遺産分割なんだ。」

「遺産分割とはなんですか?」

「遺産分割は相続人全員、今回はミノリさん、ノブトさん、ミサキ、ヤワタ、トキワが話し合って誰がどの分を相続するかを話し合うことなんだ。これが結構めんどくさい場合がある。」

「どういうことですか?」

「財産がたくさんある場合が大変と言われてるね。」

頬を軽くかきながらオレは言う。

「なんで財産がたくさんあると大変なんですか?」

「まず、財産をすべて確定しないといけない。これを相続財産と言うんだ。魔王が亡くなった場合は、財産はたくさんあるだろう。この相続財産はいくらの価値があるのか評価することが大変だ。しかも、もっと大変なことがあるんだ。」

ミサキに顔を近づけていく。

「と言いますと…」ミサキは顔を後ろへさげる。(あれ、オレキモい?)

「それが、相続人間の話し合いだ。日本でも多々起きる。ことわざで、金の切れ目が縁の切れ目ということわざがあって、家族であっても、結局はお金で、お金があればあるほど、欲がでてくる。それで、相続人間のいざこざがおきる。そこから、家族の縁が切れていくんだ。」

「私たちは、大丈夫ですね。」ミサキは安堵する。

「大変、失礼なんだけどそういう家族が一番起こりやすいんだ。だから、もしものことがあったらが重要なんだ。」

「そういうものですか?」

ミサキは首をかしげた。

たぶん、ミサキはことの重要性がわかってないみたいだ。確かに起こって身にしみないとわからないものだ。

「では、どうすればこういうことが起こらなくなるものなんでしょうか?」

「まず、話をすこし戻しちゃうけど、相続は相続人の確定が重要なんだ。相続人は、日本では戸籍制度があって、戸籍に相続人が載ってくる。だから、なくなった方の死亡から出生まで遡ってすべての戸籍を取る必要がある。 つまり、亡くなった方の形跡を戸籍で追っていって子供や奥さんがどういう構成なっているかの確認をする。」

「私たち、魔界も家族制度があってどういう構成かの証明書があるんですよ。」

「そうなんだ。だったら相続人の確定は簡単だね。(なんか日本のお隣のお国のようだな)」

「他にはありませんか?」

「次に、遺産分割協議には遺産分割協議書として書面で残すこだね。けど、ここにも問題点があるんだ。」

「もう問題だらけですね…」ミサキは困った表情をしている。

「書面で残すのは間違いなく重要だ。書面で残す際、日本では印鑑を押す。印鑑にも種類があって、印鑑の最高位と考えていいんだけど、実印を捺印してもらうんだ。」

「実印とは、私たちの魔界にはない制度ですね。」

「この実印には、役所にいって手続きするんだけど、そこで、印鑑証明書の発行がされて、捺印された印の跡が、実印と同じだよを証明する書面で、遺産分割協議書に捺印を相続人にしてもらうんだ。この印鑑つまり実印を押してもらうのがまあ大変!!」

「なんで大変なんですか?押してもらうだけでしょ?」

まだ、ことの重要性をわかってもらえないなぁ。これがマジ大変なんだよ…

「もし、相続人の一人が不満で押さないとなったら…?」

「そういうことですか!」ミサキが納得する。

「もし、押してもらわなければ、そこで遺産分割協議は成立しない。そこで試合終了だよ…」

さらにオレは付け足す。

「実印は日本ではとても重要視する。本人の間違いないと言う意思の確認で押してもらうものなので、日本ではいくつかの士業があって、弁護士、税理士、行政書士、司法書士など士業という人がいて、この人たちが相続人に戸籍書類取っていい承諾をもらって、戸籍関係の書類を職務上請求書で取ることができるんだけど、ただ、取れない書面がある。それが印鑑証明書なんだ。」

「ということは、印鑑証明書をもらい、実印を押してもらわないと遺産分割ができないと言うことになるんですね。」

「そういうこと。」

「どうしても押してもらう方法ってあるんですか?」

「あるよ。最終手段と考えていいよ。」

「それは?」

「きたない言い方だけど、お金で解決するんだ。実印を捺印してもらう代わりに、たくさんお金あげるんで、これで解決しましょ。と言うことなんだ。」

「すごく生々しいですね。」

「これが法律の世界だね。」

「でも、私たちの魔界には印鑑制度というものがありません。どうすればいいんですか?」

ミサキが首をかしげる。

「サインで解決だ。」

「私たちのサインですか?」少し驚いた表情で隆史に向ける。

「おっと!!今、有名人が一般の方にわたすサインを考えていたでしょ。それとは違うよ。」

「違うのですか?」

「違う。違う。この魔界の世界にはサイン証明制度が印鑑証明書の代わりになるんだ。魔界の役所でサインつまり自分の名前を書いて、それを証明してもらうみたいだね。」

「だから、遺産分割協議書にサインして、魔界役所でサイン証明書をもらえばいい。」

「そうなんですね。」


「実は、もっと驚く方法があって、法定相続、遺産分割をも覆す方法もあるんだ。」

「そんなこともあるんですか?それにした方がいいのではないのですか?」

もっともだ。その方法が一番手っ取り早い。しかも楽だし、相続人全員も文句は絶対に言えない。

けど、これには亡くなる方の意思が絶対に必要だ。

「ああ、ミサキの言うとおりだよ。けど、それには亡くなる方の意思が必要なんだ。それがだ。遺言には、亡くなる方が誰に相続させるかなど自由に書ける。死者の最後の意思として尊重される制度がこの魔界にもある。つまり、魔王が遺言書を書いているかどうかなんだ。」

「私、確認してみますが…」

「だめだよ。遺言は最後の亡くなる方の意思、その方次第だ。もし、ミサキが遺言を魔王に無理矢理書かせたとなったら、遺言自体が意味なくなる、つまり無効になる可能性だったある。」

「だったら、どうすれば…」

「そこは、魔王次第だよ。オレたちがどうこう言う問題じゃあない。」

さらにオレは付け足す。

「けど、遺言にも、日本ではたくさん要件があって、たとえば自筆証書遺言があって、ちゃんと自分で書け、日にちも書け、印鑑も押せなど細かいんだ。もし、その要件が書けたら遺言が意味なくなる。」

「もし、要件が満たさない場合はどうなるんですか?」

「たぶんだけど、法定相続になる可能性は高いね。」オレは考え込みながら答えた。

「法律って大変ですね。頭がくらくらしてきます。」ミサキが頭を揺らしている。

「確かに大変だ。誰だって最初は法律と言うだけで取っ付きにくい。オレだってそうだ。けど、将来必ず自分のためになる。自分のためにもしものことがあったらと思いながら勉強し続けた。そして、今の自分がある。今、ミサキのためにもなった。これが以外とうれしいものと話ながら気づいたよ。ありがとう。」オレはミサキにお辞儀をする。

「いえいえ。こちらこそ、私のためにもなりましたし、知っているか、知らないかでこんなにも他の方と差が広がっているんだと知りました。これから、たくさん教えてくださいね。」笑顔でミサキはオレにお礼をした。

「こちらこそ、よろしく!」


「だんだん、日が暮れてきたね。そろそろ帰ろうか。」

「そうですね。帰る支度しますね。」


プレハブから出るオレたち。意外と冷えるな。オレが手を”はあ~”と暖めると、ミサキが

「手が冷たいですね。こうすれば暖かいですよ…」

オレの両手をにぎる。暖かいって言うか恥ずかしくて暖かい。けど、なんか心地いい。これがずっと続けばいいのに…


そして、魔界の城に着く。

ミサキが「ただいま。」と言ったとたんトキワが急いでミサキに言った。


「お姉様。お父様の容体が…容体が…」


「えっ!!!」

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