第3話 口頭試験
相変わらず、何も変哲もなくだらだらと過ごしている私、志津隆史、筆記試験合格で何か目標を失いつつ、大学卒業後、就活するのかなと考え込んでいます。社畜になるぜ~。けど、今日はそんなことは言ってられない。やっと司法書士試験の第二次試験の口頭試験の日だ。法務局のお偉いさんと二対一での面接だ。なんか就活みたいだな。洗面台の鏡の前で自分を見る。…よし、忘れ物もなし。顔良し。(見た目じゃないよ!)体調良し。準備オッケーだ。気合い入ってきた。
「母~さん。行ってくるよ。」
「いってらっしゃい。がんばってね。」
にこやかに、エプロンで手を拭きながら落ち着いた声で言った。母さん美人だから絵になるね~。
階段からドタドタ妹さやかが降りてきた。
「兄ちゃん。いってらっしゃい。まあ、落ちると思うけど、これあげる。」
とお守りを渡してきた。これ、手作りじゃね。
「ありがとう。大事に持つわ。」
さらに気合いが入ってきたー。
妹はにこやかにオレに笑ってる。なんかすげーいい妹じゃね。
「行ってきます。」二人に向かって。
また二人に『お土産買ってきて~。』と
「あれ~~~?」オレこれからがんばるのに、お土産ですか。フフ~ん。受かることがお土産だよな。よし、がんばるぞ!
一応、なんか買って帰ろう…。
渋谷駅に着いた。渋谷はビジネスマン、若者が一杯だ。千葉からそんな遠くない。オレもビジネスマンになるのかと考えながら歩く。レッツ社畜だ。
歩いていると、試験会場についた。なんか人がいっぱいだぞ。こんなに受かっている人がいるのか~。まじめそうな人たくさんだ。あれ?スキンヘッドでサングラスして、いかにもあっちの人ぽい方もいるぞ。この人も受かった人か。世の中広し。
入場して、広い会議室に案内されて椅子に座らされる。なんか緊張してきた…。
そして、担当の公務員の方が来た。
「大変お待たせ致しました。これから司法書士試験の第二次試験、口頭試験を始めます。よろしくお願いいたします。緊張しないでくださいね。」
温和な表情でみんなを見ている。この人、優しそう。癒やされる~。そして、口頭試験の説明がされる。
どうやら、口頭試験は、くじびきで順番を決めて、二対一で試験が行われる。二人から質問され、答えていく形だ。よ~し、オレいっぱい答えちゃうぞ!!オレに心の中はやる気に満ちあふれていた。
他の人たちがくじを引いている。そして、ぼけ~としている内にオレのくじ引きの順番だ。あれ?いつの間にかオレの順番だ。意外と早いな…
「お引きください。」
「はい…引きます。」
頼むから早めの順番になってくれ。早く終わらせて帰りたい。
そう思いながら引いてみるとなんと…
一番最後だった。
なんてこった!マジで時間かかるじゃね~か!
どうするの?ずっと緊張したまんま…。なんか胃が痛くなったぞ。
待っていると、隣に座っている人から声をかけられた。
「災難でしたね。」
「はい。全くです。」
げんなりとした表情でオレは言った。
「ははは。けど、この経験は一度だけですよ。長いからこそ、この経験を楽しめばいいのではないでしょうか?」
隣の人は40代後半位、頭は光っている。さらに心まで光っているではないですか!
「そうしてみます。ご心配ありがとうございます。」
オレも笑顔で答えた。
「その調子ですよ。おっと、そろそろ私の順番ですね。では、行ってきます。がんばってくださいね。」
「がんばってください。応援しています。」
オレはおっさんを激励する。
「ありがとうございます。次会う時を楽しみにしてますよ。」
にこやかに答えてくれた。
この人、人ができてるよ…オレに対して、敬語を使って、しかもこんな対応してくれるなんて…いい人に会ったな。次会うときは受かった後の研修かな…マジでおっさんがんばって!!
みんな終わって帰って行く声が聞こえる。なんか取り残された感が抜群だ。
オレは「ハア~」深いため息ばっかはいてる。そして、ついによばれる。
「○○番から○○番のかたどうぞ」会議室からでる。
「ここからは、私語厳禁ですのでご注意お願いします。」
「はい。」
そして、面接場所の前の椅子に座る。他の人たちの緊張がひしひし感じる。一人一人面接がおわって表情を見ると、やり残した感、表情が暗い感が出てる。おいおい、大丈夫かよ、オレ…
そして、ついにオレの出番だ。
「次の方どうぞ。」
「失礼します。」ノックをする。
「どうぞ、お入りください。」
「失礼します。」部屋に入りお辞儀をする。
「では、お座りください。これから口頭試験始めますね。リラックスして、緊張せず慌てず答えてくださいね。」
50代のおっさんが言う。多分この人、お偉いさんだろうな。
「受験番号、名前、住所を言ってください。」
「受験番号○○番、名前は志津隆史と申します。住所は千葉です。よろしくお願いいたします。」
この試験は二人の面接官で質問された事をオレが答えていく。面接官のあと一人はどんな役割するのかな?
専門的な質問がくる。あれ…答えられないぞ。どしよう--どうしよう--。
そしたら、もう一人の面接官が助け船を出してくれる。おかげで無難に答えていける。
この口頭試験は助け船を出してくれるのは本当なんだ。よかった…安堵です。
面接が終盤になり面接官が
「これで、私たちも最後ですので、簡単な質問をさせていただきます。」
「はい。どうぞ。」オレもはにかみながら言った。
「新聞、読んでますか?」
「……はい、読んでます。(やべ~嘘ついちゃった。どうしよう??)」
「どんな新聞ですか?」
「え~と…(この質問くるの?!どうしよう--今日、コンビニでたまたま読んだ新聞を言おう!)」
オレは面接官の質問に答えた。
「東スポです。」
「東スポ?」面接官が首をかしげる。
(東スポ知らないのかよ。天下の東スポ様ですぞ。)
「東●スポーツ新聞です。」
「すいません。その新聞知りません。今日はどんな内容が書いてありましたか?」
「はい…内容は…(それくるの!!マジでマズいぞ。今日は東スポのお得意ネタたぞ。どうするオレ、正直に言うか…けど頭にはこれしか思い出さないぞ…やばい、やばいよ…う~~~ん。正直に答えるしかないな。よし言うぞ!)」
「宇宙人が長野県の山中に出現しました。。。」
「はい?もう一度言って頂けますか?」
「宇宙人が長野県の山中に出現しました。(二度も言わせんじゃね~よ!)」
「宇宙人とは未確認生物のことを言っているのですか?」
段々雲行きが怪しくなる。
「そのとおりです。長野県の山中に現れたそうです。(いちいち宇宙人の内容確認するなよ…)」
「長野県の山中にですか?」
「肯定であります!(やべ!何言ってんの!オレ。)」
「宇宙人がですか…」
「はい、新聞には、専門家矢尾板氏が解説していて、一般的なグレイタイプだそうです。日本に興味があって来たのではないかとの事です。(やべ~~。雲行きどころか二人の面接官怒り気味の表情だぞ!)」
「そんな、新聞があるんですね…結構です。どうもありがとうございました。」
さっきまでとは、対応が違い淡泊な感じになる。
「こちらこそ、どうもありがとうございました………」
一礼して、面接室がらでる。
………落ちた…間違いなく落ちた。
なんだよ!東スポ!よりによって宇宙人ネタを新聞にだすなよ!
日付しかあってないくせに !矢尾板も何言ってんだよ!一般的グレイタイプって何だよ!知らねーよ!宇宙人も長野の山中に来んなよ!しっ!しっ!
はあ~、これ落ちたよ…最後の最後でやっちゃったよ…
(けど、東スポおもしろいから読むけどね!)
オレは気が抜けて、放心状態になりながらよろよろと歩いた。周りが見えない。どこに向かっているのオレ。無意識に歩いて、電車に乗ってる。なぜかわからないが千葉みなと駅に着いた。そこからまた歩く。セブンイレブンを通り過ぎ、郵便局をみる。その近くに千葉地方法務局がみえる。オレが司法書士になったらここに何度も来るだろうな。と思いつつ、さらに無意識に歩く。そして、千葉ポートタワーに着く。そして海の方へ歩いて行った。
オレは、砂浜にしゃがりこむ。
「はぁ~~~~~~~。」
長いため息がでる。あっ、そうだ母さんにメールしなきゃ。とりあえず、おそくなるとだけメールしておこう。メール送信完了っと。
「はぁ~~~~~~~。」
またため息がつく。海を見るとなんか落ち着く。周りにはカップルがいちゃいちゃしている。むかつくんだよ!てめーら!近くにラブホあるだろ。そっち行け。と思いつつ海をみる。だんだん、人がいなくなりオレ一人になった。
「うっ寒い。帰ろ。」といって家に帰ろうとする。起き上がって、海に背を向ける。砂浜をゆっくり歩いていると………………………
”ガバッ”と何か黒い布に頭から包み込まれる。
何だ!何だ!
叫ぼうとしても声がでない。怖い…どうなっての?本当に怖いと声が出ない。
オレは誰かに担がれている。黒っぽい布に包みこまれて─────────────
オレは「ウ~ウ~」とやっと叫ぼうとするがどうやら聞こえてないみたいだ。
そして、思いっきり腹をパンチされた感じがした。何これ!すごく痛い!やばい意識がなくなっていく……
オレ死ぬの…まぁ、いいか、なんか疲れた。寝よう…そしてさようなら。
母さん、さやか今までありがとう。楽しかった。
そして、オレは眠りについた。なんか船に乗ってる感じがする。その後はわからない。
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