第2話  序章その2

 ここは魔界、キタラナシノ。混沌とした魔世界。いろんな魔族が戦争をおこしていた。そこに現れたのが、キタナラシノ=タカネ=コウダンだ。コウダンは1人で魔族との交渉、時には戦争で圧倒的な強さで魔族の制圧をし、ついには魔界の王となった。コウダンは魔界の法律を作り、自分も魔界の法律を守り、そして様々な法律を作り上げた。コウダンは主に地球の日本の法律を手本としている。日本の法律がこの魔界の世界に一番合っていると判断したからだ。日本の法律が良い点として、弱者を守るための法律が多い。魔界はまさに弱肉強食、これを何とかしたかったのだ。コウダンは魔界の法律を作るため、お忍びで日本へ大学に留学して、日本の法律を、王自ら学び、魔界へ持ってきて、魔界にあった法律を編纂した。

 そして、魔界全体に様々な制度が浸透し、魔族同士の戦争もなくなった。簡単ないざこざはあるが、コウダンが仲裁したり、対立した魔族間で互いに議論し、和解したりと血を見ない形でまとまっている。戦争がなくなったおかげで、魔族の人口は増加し、経済の成長も遂げた。今は魔界の高度経済成長期にある。まさに、バブルはじける前の日本そのものだ。

 魔界の経済が安定したところで、コウダンは魔族の中での絶世の美女、ミノリと結婚をし、長男ノブト、長女ミサキ、次男ヤワタ、次女トキワが生まれ、家族全員仲良く暮らしていた。コウダンは魔界のために尽力をつくしたが無理がたたってしまった。

ある日、コウダンが不治の病に倒れてしまった。


「私はもう長くない。」

「お父様、何をおっしゃるのですか。今、お薬を持ってきますね。」

ミサキが赤い長い髪をなびかせ言った。

「父上、病気など早く治して一緒に魔界をさらに発展させましょうよ。」

ノブトはコウダンを元気づけるように励ました。

トキワ、ヤワタは心配そうしている。


─────────────


 妻ミノリは、夫コウダンの代わりに政治を行っている。本当は夫のつき沿いをしたかったがそういうわけにはいかない。今、ミノリは魔族会に出席してる。魔族会とは、コウダンが考えた魔界の意思統一機関だ。日本のところで言う国会に当たる。この魔族会の意思によって、魔界が動かされている。

 魔族会の議長が号令をかける。そして、様々な魔族の長たちが軽く片手を挙げる。

 『魔界に栄光を…』

これが、魔族会の始まりの合図である。議長が議題を言う。

「今回の議題は魔王コウダン様のご容体である。妻のミノリ氏、発言を許す。」

ミノリは壇上に向かい、魔族会の紋章に向かって、一礼をする。

壇上に立ち、魔族のみんなに発言する。

「はい。発言させて頂きます。夫コウダンの容体ですが、多分、長くはありません。今後のことについて話し合いたいと思います。」

魔神族の長たちは、みんな同様する。ワァ-とざわめきがおきる。


議長が「お静かに!」と叱責をする。

ある魔族の長の1人が議長に発言要求をする。議長はそれを許す。

「この世界はいろんな魔族の集まりで成り立ってます。もし、コウダン様がお亡くなりになれば、また混沌とした世の中に戻るかもしれませんぞ。」

これは、みんな思っていたことだ。もし、コウダンが亡くなれば、今まで培ったものがいとも簡単に崩れ落ちる。コウダンをよく思わない魔族も確かにいる。戦争が起こる可能性も高い。

別の魔族も発言要求をする。同様に議長は発言を許す。

「今、魔族はコウダン様がお亡くなりになった後の次期、魔王の選定が難しいかもしれませんね。妥当なところで、ノブト氏というところですが如何せん、政治手腕がまだですね。」

実際、ノブトはコウダンの後ろにしかついてなく、なにもしてない。他の魔族たちも心配するのはもっともだ。さらに、ヤワタに至っては何をしているかよくわからない。いつも魔界パソコンで何か一人ごとを言っている始末だ。ミサキ、トキワについては、全くと言ってよいほど、政治に関わっていない。


 魔族会全体が重い空気になっていく。


「とりあえず、夫コウダンの様態をしばらく見守るという形で様子を見ましょう。夫はそんなたやすく亡くなるお方だとは思いません。皆様もご存じでしょう。」

ミノリは言った。他の魔族たちも考え込んでうなずいた。


ミノリが魔族会から戻ってきて、コウダンのいる寝室に行った。そこには、ミサキ、トキワ、ノブト、ヤワタもいた。



「お帰りなさい。大丈夫だった?」

トキワが心配そうに言った。

「ええ、大丈夫よ。ところでお父さん大丈夫?」

「全然、良くならないですわ。むしろ悪くなる一方ですわ。」

ミサキが俯いている。

「そうですか…三人とも部屋に戻りなさい。」

とミノリが言ったところに、コウダンが起き上がった。

「みんなに話したい事がある。」

「起き上がってだめです。」ミサキが止めに入った。

「いいや、話させてくれ。私はもう長くない。だから、ちゃんと聞いてくれ。」

コウダンはさらに話す。

「この世界は地球の日本の法律を元にした法治国家としている。まだ、不安な所はたくさんある。決して法律だけがすべてではないが、私がもし、いなくなったとしても誰か日本の法律を学んでほしい。弱者だけが負け組にはしたくはない。魔族会の者たちは法律自体あまり知らない。私が作った法律をなすがままだ。ただ、守ろうとする意思はある…」コウダンは一呼吸置いて、

「家族全員には詳しく教えてないが、法律とはみんなが考えたルールに従って、みんなが守る事だ。これを犯すものは罰していったりしたりする。さらに、地球という世界では、ほとんどの国が法律に従って物事が進んでいる。日本へ行って法律を学んで実践すれば、この魔界も長く統一された世界になるだろう。正直、法律を勉強するのは大変だ。しかし、この魔界をみんなが仲良くするためのルールをさらには考える力を身につければ自分のためにもなるし、そしてこの世界のためにもなる。よろしく頼むぞ。疲れたよ…私は少し一眠りするよ。」

そしてコウダンは眠りについた。



コウダンの寝室から出た四人は話し合った。

「困りましたね…どうしましょう…」

ミノリが困っている。

「とりあえず地球の世界に行きましょう。」

ミサキが考えながら言った。

「誰が行くかが問題だな…」

ノブトも考え込んでいる。

「そもそも、そんな余裕がないよね…」

トキワがノブト、トキワに割って入った。


そこにヤワタが言う。


「日本人、拉致っちゃったほうが早くね。」


「そうよ。拉致した方がはやいね。ヤワタ兄さん頭いい~。」

トキワが言う。

「しかし、拉致した場合、私たちが処罰されるのでは?」

ノブトが心配そうにみんなを見る。

「そんなことより、その日本人の人生ってものがあるでしょ。」

ミサキが驚いている。

「よく考えてみてよ。魔界の法律が日本人を誘拐してはダメって書かれている?」

ヤワタが頭をかいている。

「確かに書いていないと思う。そもそも、魔界の法律を日本に適用すること自体がありえない。」

ノブトも腕を組みながら考え込んでいる。ミサキが慌てて言う。

「それではいけないわよ。ちゃんと日本で法律を学びに行きましょう。」

「学ぶ時間なんてないんじゃない?そんな暇なくね?」

ヤワタがあくびしながら言った。

「お母様の考えはどうでしょうか?」

ミサキが助け船をほしそうに語りかけた。

「確かに時間はありません。悠長なことは言ってられません。日本人を拉致したとしても手厚い保護をすればいいでしょう。事情を話せばわかってもらうでしょう。」

「もし、わかってもらわなければどうします。」

ミサキがあきらめムードになってる。


「そのときは、…そのときよ。」

にこやかな表情で答えた。やはり、魔族の考え方だ。いざとなったら…あれをすればいいと思っている。あれって?コンクリート詰めにして流す事ですよ…


ミサキ以外全員が口をそろえて


『拉致りましょう!!』片腕を握りしめて言った。


「はあ~~。」

ミサキは心配そうに半ばあきらめた表情で三人を見つめている。

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